原価4000万円超の培養肉ハンバーガー、コストダウンの鍵を握るのはタバコ?

  • 文:佐藤まきこ

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実験室でつくられる培養肉。環境への負荷が高い従来の畜産に代わり、新しい食材として世界中で研究が進められている。そんな培養肉のコストダウンを目指すひとつの手段として鍵を握るのが、“タバコ”の存在だ。

2013年に初めて造られた培養肉ハンバーガーは原価が4000万円以上と高額のコストがかかっていたが、今ではイスラエルの企業によってコストの大幅削減に一歩前進したという。

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写真はイメージ(studiocasper - iStock)

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培養肉が食糧問題を解決する?

従来の畜産業は広大な土地や水などの資源を必要とし、二酸化炭素を多く排出することから、環境への負荷が高い。そこで期待を寄せられているのが、実験室で培養される肉(=培養肉)の存在だ。

牛肉や豚肉は出荷までに1年以上の時間がかかるが、培養肉ならもっと短期間で生産できることが可能だ。将来、世界が直面する食糧不足を解決するひとつの手段になり得ると考えられている。

培養肉開発の歴史の中で、マイルストーンのひとつとなったのが、2013年にオランダのモサミート(Mosa Meat)が世界初となる培養肉のハンバーガーを発表したことだ。培養肉が現実のものとなるポテンシャルを世界に大きく印象づける出来事となった。

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コストダウンにタバコを利用

世界で初めて培養肉ハンバーガーが生まれてから、およそ9年。培養肉を一般に普及するためにはコストの問題がある。モサミートが2013年に発表した世界初の培養肉ハンバーガーのコストは、なんと32万5000ドル(約4600万円)。現在では、原料の価格が安くなり、生産規模が大きくなったことなどから、ハンバーガー1個のコストは9.8ドル(約1400円)にまで下がったというが、培養肉を広く普及させるためには、原価を抑えることは避けて通れない課題と言える。

そんな原価の問題解決に向けて寄与したのが、イスラエルのバイオベター(BioBetter)だ。同社では、培養肉に使用される成長因子に着目。成長因子とは細胞の成長や増殖を促すもので、化粧品などに利用されるほか、実験室で肉を効率的に培養させていくためには欠かせない。しかし、成長因子を多く含むものは牛の胎児の血清など、貴重な原料が多い。例えば「線維芽細胞増殖因子(FGF)」と呼ばれる成長因子の価格は1gあたり5万ドル(約720万円)から、高額のものなら50万ドル(約7200万円)もかかるという。

だが同社では、このような動物由来の成長因子ではなく、植物のタバコから成長因子を抽出。これを培養肉の培養に利用する方法を開発した。タバコ由来の成長因子なら、1gあたりおよそ1ドル(約140円)という安価な提供も見込まれているそうだ。しかも今後、環境問題への配慮などから畜産業の成長は期待できないことを考えると、動物由来でない成長因子である点も大きなアドバンテージとなるだろう。

近年、喫煙率が低下していることから、使われずにいるタバコ畑が多く、経済的に苦戦しているタバコ農家の支援にもつながる。バイオベターでは、2024年までにタバコ由来の成長因子を利用した商品化を目指しているという。

現在、シンガポールではレストランでの培養肉の使用について当局の認可がおり、実際のレストランで培養肉のメニューが提供されている。各国の企業努力のおかげで、培養肉が当たり前の選択肢となる日が、着実に近づいているようだ。

【出典】
https://vegnews.com/2022/9/Biobetter-tobacco-plants-cultivated-meat
https://biobetter.bio/the-technology/
https://www.nhg-seisan4.jp/faq/
https://www.forbes.com/sites/lanabandoim/2022/03/08/making-meat-affordable-progress-since-the-330000-lab-grown-burger/?sh=3aafe55e4667
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/22/06/23/00397/

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培養肉の作り方/Mosa Meat - Instagram

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培養肉の作り方/Mosa Meat - Instagram