電気モーターを使いこなした日産エクストレイルは、ほんとうに運転がうまくなったと感じられるのか

  • 文:小川フミオ

Share:

SUVもどんどん”進化”している。さいきん乗ってキモチよかったのが、日産の新型「エクストレイル」。2022年7月25日に発売されたモデルで、9月にようやく「e-4ORECE(イーフォース)」なる全輪駆動版をドライブできた。これまでなかった感覚のSUVだ。

IMG_7186.jpeg
クリーンな印象のスタイリングはエクストレイルの伝統ともいえるもの

日産エクストレイルは今回で4代目。メーカーによると、モデルのDNAともいえるベーシックコンセプトは「タフギア」なんだそう。今回はそこに「上質さ」も加えたという。私にとっては「楽しさ」がとりわけ印象的だった。

ボディデザインは、たしかにエレガンスというより、タフさが感じられる。ボリュウム感のあるボディは”頼りがい”を感じさせ、どんな道でも乗員を守ってくれるような雰囲気をもつ。それでいて、鈍重でなく、躍動感がしっかりあると思う。

エクステリアデザインにおいて、もっとも特徴的なのは、フロントマスクの造型だ。「2階建ての構造」と日産では説明。ヘッドランプとポジションランプを明確に分けて、上下に配したデザインだ。

---fadeinPager---

IMG_7157.jpeg
リアクォーターピラーの造型で個性を強調しつつリアバンパーしたのアンダーガードふう加飾などでタフさを表現

私がドライブして感じたのは、このクルマの動きのよさ。電気モーター駆動なので、アクセルペダルへの反応がかなりよい。ちょっと踏むと、ちょっと動く。ぱっと多めに踏み込むと、すかさずというかんじで加速。まさにドライバーの意思のとおりに走ってくれる。

シリーズハイブリッドといって、エンジンは駆動用バッテリーに給電するためだけに積む。それでも、新型エクストレイルはエンジンにも凝っている。1.5リッター3気筒ターボをわざわざ用意したのだ。

「VCターボ」と名づけられた、可変圧縮比エンジン。アクセルペダルの踏みこみぐあいに応じて適切なパワーを出す。負荷が少ない、つまりアクセルペダルの踏みこみが少なければ、それに見合っただけのパワー。そのため燃料消費量が抑えられる。

---fadeinPager---

IMG_7189.jpeg
ドライブモードセレクターがそなわる

アクセルペダルを深く踏み込むと、エンジンはパワーを出して、駆動用バッテリーにしっかり充電してくれる。給電量が多いためハイパワーモーターを使えるのが、VCターボ採用の背景。燃費と性能がうまく両立しているのだ。

「欧州で時速180キロでも無理なく巡航できることを念頭に採用しました」とは、日産のエンジン開発担当者の言。たしかに高速巡航における加速の”頭打ち”感がないと思う。

---fadeinPager---

IMG_7193.jpeg
ギアセレクターは日産のe-Power車に共通の意匠

しかも、回転が上がっていったときの回転音もなかなかの快音だし、いやな振動もかんじられない。上記のエンジン担当者によると、「ピストンの押し下げをするコンロッドという部品にマルチリンク機構を組み込んだため」と、ややムズカシイ説明をされた。

通常のエンジンではコンロッドはいってみればまっすぐな肉厚の板。燃焼室で燃料が爆発してピストンが下がる(これがギアを介して車輪の駆動へとつながる)際に、円筒状のピストンの下部(ピストンスカートなどという)が微妙に揺れて燃焼室内の壁にぶつかる。それが振動や音の原因になる。

今回のVCターボエンジンでは、コンロッドにリンクを入れたため、まっすぐコンロッドが下にさがる。そのためピストンスカートも揺れない。結果、振動も騒音もなくなるという。はたしてたしかに、エクストレインのエンジンが回っているときの音はなかなかヨイ。

エンジンは給電にしか使わないのに、「音がいいんですよ」なんて技術者が嬉しそうに話してくれる。クルマ好きのひとたちが開発したクルマ、という印象だ。

---fadeinPager---

IMG_7101.jpeg
写真のナッパレザーシートはオプション

「e-Power(イーパワー)」と日産が呼ぶハイブリッドシステム搭載のエクストレイルでは、電気モーターを使う強みを駆動系に活かしている。これが、もうひとつの特徴である。

電気モーターの制御と、ブレーキによって、走行や路面の状況に左右されず、安定した走りの実現をめざす。その技術が「e-4ORCE」。

4つのタイヤの駆動力を個別に制御。滑りやすい路面での安定性を高めるのが、このシステムの目的のひとつ。もうひとつは、コーナリングといってカーブを曲がるときの安定性を高めることだ。

---fadeinPager---

IMG_7161.jpeg
「タン」とよばれるベージュ系の内装色

カーブを曲がるとき、速度が高めだと、前輪を駆動している車両では、カーブの外側へと前輪が車体をひっぱり出そうとする。それを専門用語でアンダーステアという。

「e-4ORCE」は、車両が外側へとふくらもうとするのを感知すると作動、駆動力を制御し、外側の車輪の駆動力をやや強めにする。同時に、内側の車輪にブレーキをかける。それで積極的に車両が外側にふくらまないようにする。

じっさい、私がドライブしたとき、きついカーブが連続する山道も走ったが、SUVとは思えないほど、キモチよく、ステアリングホイールの動きに合わせてクルマが動いてくれるのに感心した。

「運転がうまくなったと思えるのではないでしょうか」。開発を担当した日産自動車の寺本広樹さんの言葉どおりの動きだと思った。すくなくとも、安心した気持ちでドライブできる。そのメリットは大きいと感じられた。

---fadeinPager---

IMG_7041.jpeg
後席は空間的に脚部も頭部も余裕がかんじられる

乗り心地も快適だ。とりわけ私がびっくりしたのは、段差ごえのとき。車道から試乗会場の敷地内に入るとき、突き上げを感じさせることなく、段差を乗り越えてしまった。これをネコ脚といったりする。エクストレイルの身のこなしはまさにその言葉どおり。サスペンションシステムのチューニングがうまい。

全長4660ミリ、全高1720ミリの車体に、2705ミリのホイールベースの組合せ。室内は空間的余裕があって、後席は広々としている。3列シートの7人乗りも用意されている。

---fadeinPager---

IMG_6953.jpeg
8スピーカーのBOSEプレミアムサウンドシステムはスライディングルーフなどとのセットオプション

オプションで「BOSEプレミアムサウンドシステム」も選べる。ロバート・グラスパーのブルーノートオールスターズ、韓国のセイスーミー、はたまた濱口祐自まで聴いてみた。メリハリが効いているうえに、音量をしぼっても、バランスが崩れないと感じた。私が買うなら、これを選ぶかな。

4WD(e-4ORCE)モデルの価格は347万9300円から449万9000円。遅れて登場する前輪駆動モデルは319万8800円から429万8800円。開発者は、ここで触れてきたように、操縦をうまく補助してくれるようなe-4ORCE搭載の4WD推しとのこと。

---fadeinPager---

IMG_7011.jpeg
内外装の一部やタイヤなどが専用装備となる「オーテック」の4WDは446万7100円〜

Specifications
全長×全幅×全高 4660x1840x1720mm
パラレルハイブリッド 電気モーター2基 4輪駆動
最高出力 前150kW 後100kW
最大トルク 前330Nm  後195Nm
エンジン 1497cc直列3気筒ターボ
燃費 18.4km/L(WLTC)
価格 449万9000円