投資の成功は「急がば回れ」 お金を呼び込む考え方とは?

  • 文:川畑明美
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生まれて初めて手にした大金の退職金で投資して、お金をとかしてしまう方は少なくない。短期間でお金を増やすのはとても難しいことだ。 Seiya Tabuchi-istock

退職金の大きな落とし穴をご存じだろうか。特に60歳になるまで、100万円くらいしか貯金できなかった人に多い落とし穴だ。一時金で退職金を受け取ると、預金通帳にたくさんのゼロが並んだお金が入金される。1000万円ならば「¥10,000,000」。こんなにゼロがついた数字を見たことがない方は、舞い上がってしまう。そして、これを増やそうと投資に大きなリターンを期待することが多いのだ。


直観的に、大きなリターンを求めることがお金持ちになる一番の近道に思えてしまうのだろう。ところが投資とは、リターンが高ければリスクも高くなるのだ。もちろん初心者が、たまたま大きなリターンを得ることもある。しかし大きなリターンは大抵一度限りのもので2度続くことは、あまりない。さらに言うと大きなリターンは必ず手に入るものとは限らない。株式投資で大きなリターンを得ることは可能だが、100発100中とはいかないのだ。

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投資の成功は「急がば回れ」

金融商品の選び方を教えていると、手数料が高くてもリターンが高い銘柄に飛びつく方が多い。特にまったくの初心者ほどリターン至上主義だったりする。リターンが高い投資ということは、株価が下がる景気後退期には、もっともマイナスが深くなる可能性が高い。運悪く投資を開始してすぐに、景気後退期に入ってしまったらリターン至上主義で選んだ金融商品は長く塩漬けになってしまうこともあり得るのだ。


初めて手にした退職金1000万円を投資して、お金をとかしてしまったら? もう、労働でお金を稼げる期間が少ないのだから悲惨な老後という未来しか残らなくなってしまう。労働できる期間がないから「早く増やしたい」と考える気持ちは理解できるが、「急がば回れ」を思い出して欲しい。急ぐときに近道や危険な方法を選ばずに、むしろ回り道で確実で安全な道を通った方が結局は早く着けるものなのだ。そこに気付いて欲しいと切に願う。


そもそも筆者の投資方針は、長期投資で安全性も考えつつ確実に増やす方法だ。募集する時から、それをうたっているのにどうして、投資の勉強をはじめるとリターン至上主義になってしまうのか……。人間の欲は怖い。

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お金を呼び込む考え方をしよう

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お財布にお金があったら「何を買おうかな?」と考えてしまうようでは、お金は貯まらない。istock

お金が貯まらないと言う方と雑談していて気付いたことがある。「臨時収入があった時、何を買おうかといつも考えていたのですが、先生の講座を受講してこれは貯蓄に回そうと思いました」という。口にはしなかったが、「だからお金が貯まらなかったのか」と思ったのだ。「何を買おうかといつも考えていた」という思考がマズイのだ。


「お金が貯まらない」または「お金の心配がある」という方はお財布にお金が入っていたら「あ、500円あるから帰りにコンビニに寄って何かを買おう」と考える人だ。お金が貯まる、お金の心配がないという人は、お財布にお金があってもお金を使わない。お金の使い道をコントロールできるからだ。筆者はそもそも目的なくコンビニに入ることはないし、お腹が空いてコンビニで何か買おうと思っても何も買わずにでてくることが多い。原価を考えると割高で、買う気が起こらないからだ。

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お財布に入っているお金は経費じゃない


コンビニのおにぎりを買うのならば、家に帰って冷凍してあるご飯を温めたら十分だ。「お金があるから使っちゃおう!」と考える人ほど、お金の心配がなくならないのだ。特にバブルを経験した世代の方は、そのような傾向があるようだ。『「バブル時代は良かった」というのは、本当なのか? 』という記事を書いたところ、記事へのコメント中にバブル世代の方の傾向を語ったものがあった。


『湯水のように会社の経費を使おうとするところ。「今期のうちに全部使わないと、来期に経費削減されるから、どんどん使おうぜ」だって。自分ら世代には考えつかない発想だ』このコメントを残してくれた方は、お金の心配が少ない方なのかもしれない。あなたのお財布に入っているお金は、経費ではないことをよく理解できている。


お金の心配がなくならない人ほど、経費のようにお金を扱ってしまう。あなたのお財布に入っているのは労働の対価としての賃金だ。何時間も労働して得た対価を考えずに会社の経費のように使っていてはお金は貯まらないし、お金の心配も尽きない。会社の経費ではないのだから「使わなくちゃいけない!」なんてことは、ない。

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労働をしなくても入ってくるお金が「資産」

なぜか多くの人は、年収が高い人のことを「お金持ち」とイメージする。年収1000万円あったら、お金持ちと感じる方は多いのではないか? ところが本当のお金持ちというのは、「資産を持っている人」なのだ。資産とは保有しているだけで、お金が増える資産のことだ。投資信託、ETF、株などの金融商品や土地や不動産だ。収入が高くても、資産を持っていなければ、お金持ちとはいえない。


年収1000万円以上であっても、手取りだと700万円程度だ。月収ならば60万円くらいだから、少し贅沢をしたらお金は残らない。所得税は「累進課税制度」なので年収が多くなるほど税率が高くなり引かれる所得税も増えていってしまう。課税所得が1000万円の方の所得税率は33%だ。

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年収1000万円以上でも貧困に

一方株式投資の利益については、20.315%の税率だ。これは10万円の利益であっても100万円の利益であっても変わらない。年収が高い人より資産が多い人の方が手取り額が大きくなるのだ。ちなみに上場企業の社長の多くは、自社株を保有している。配当金があれば、配当金の収入の税率も20.315%だから自社株を持っているだけでもかなりの収入になるのだ。


少し話がそれたが、高所得者だから、お金持ちということではない。何もしなくてもお金が入ってくる「資産」を持っていなければお金持ちとはいえない。収入1000万円と高くなっても年収400万円だった頃と同じ生活をして、増えた収入分のお金で資産を増やさなかったら、お金持ちにはなれない。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/