「結婚はお金の面で損か得か?」 究極の質問の答えとは

  • 文:川畑明美
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独身時代は、自分が生活できていればよかったけれど、結婚すれば守る家族が増えるのでそうもいかない。結婚とお金について考えてみた。istock

結婚生活で大事なのは「お金」か「愛情」か? 究極の問題だ。この究極の問題について保険マンモス株式会社が男女500人にアンケート調査している結果を参考にしてみよう。気になる結果は、男女の差もほとんどなく、どちらも半々だった。男性の回答した結果は、お金が47%、愛情が53%。女性の回答は、お金が48%で、愛情が52%。男女差は、ほとんどない。この調査結果のまとめで興味深いのは、司法統計の「なぜ離婚するのか」という理由も掲載しているところだ。


司法統計での離婚の理由は「性格が合わない」ことがトップ。性格が合わないということは、一緒にいられないということなのだろう。ちなみに、男性の2位の離婚の理由は「その他」、3位は「精神的に虐待する」だった。女性の2位は「生活費を渡さない」、3位は「精神的に虐待する」だ。お金よりも愛情や価値観の方が大切なのかもしれない。


この調査は10代から61歳以上と年齢の幅が広いので年代によって事情は変わってくるだろう。20代と60代では、お金の価値観も違ってくるからだ。アンケート調査では、「お金」「愛情」それぞれ大切だと思う理由を年代別にまとめている。

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情があるからお金を稼げる?


年代別の理由を見ていて、「お金が大事」と回答した41~50歳の方の理由の中で「はっ!」と目がとまるものがあった。「家計を支えるというのは大変なことで、しっかりできる人は家族に対する愛情がある」。筆者もこのように感じることがある。


筆者は、職場でパワハラに遭い会社を辞めたのだが、独立起業して十分なお金を稼げるようになるまでには、それなりに苦労はした。しかし私立中学に進学したいという子どもの夢のため、どんなに大変でも「お金を稼げる」ように頑張れたのだ。子ども達への愛情が根底にあったのだと自覚している。


そういうこともあって、筆者の究極の回答は「愛情」だ。ただし上記の回答の方は、お金と答えている。この辺りは解釈の違いだが、愛情があるからこそお金を稼ぐことに努力できるのだと思う。筆者の場合は、そもそも私立中学に進学しないのであれば、会社を辞めて専業主婦になっても良かったのだ。

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家事の無償労働は、愛情の搾取なのか?

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家事労働や育児などの無償労働は、夫婦で話し合って分担することが大切だ。「愛情の搾取」となってしまう。istock

結婚すると「お金」のことは、切り離せない。自分1人が生きていければよいのではなく、家族を支えなければならないからだ。それには、お金の管理も必要だ。結婚は、損なのか? これは難しい問題だが、確実に言えるのに家事や育児に対して「金銭的評価」があまりされていないという現実だ。筆者は『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマを見ていなかったのだが、病院に入院した際に一晩で一気に視聴した。このドラマでは、家事の無償労働を「愛情の搾取」といっている。そこが興味深く、本当はいけないのだけれども消灯をすぎても、全話を一晩で見てしまった。


女性が結婚で「損する」と考えるのは、この家事や育児の無償労働に対するパートナーの態度ではないだろうか。家事や育児を外注すると、かなりの高額になる。それなのに多くは妻が1人で担っていることが多いのでこのようなドラマになるのだと思う。「妻がやって当たり前」になっていると共働きの場合は、とても大変だ。特に子どもが未就学児の頃は、自分の朝の準備と子どもの準備で、会社に行くまでがまるで戦争のようだ。仕事が終わって、お迎えに行っても子どもと触れ合うどころか食事やお風呂と慌ただしい時間となってしまう。

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結婚して得するお金の制度は?

結婚をすることで得するお金の制度は、いくつかある。「配偶者控除」で納める税金を少なくできたり、会社員ならば「社会保険の被扶養者制度」で妻の健康保険料がかからない、または、妻が専業主婦でも基礎年金が受給できるなどの年金面の優遇もある。ただし、これらのお金の制度は、夫が働くことが前提で、妻の労働は扶養の範囲内のみのケースだ。


しかし、これらの「お金のメリット」は、それほど魅力的なものではない。「収入が少ないから結婚できない」と特に男性から悲観的な意見を聞くことがあるが、収入が少ない人ほど結婚した方がいい。例えば、ご自身の年収が200万円で、パートナーも200万円の年収ならば結婚することで世帯年収は400万円と収入は2倍になる。2人で暮らしても生活費はひとり暮らしの2倍にはならない。ひとりよりも2人の方がお金が貯まることになる。


食事も、ひとり分よりも2人分をまとめて作った方がロスが少なくなる。ひとりでは作るのが面倒で外食やコンビニになったとしても、2人で一緒に料理をしたら、それはひとつの娯楽にもなるのだ。

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結婚することで家計にお金が貯まる

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結婚して1馬力だったのは過去のこと。2馬力ならば家計も安定するしお金に働いてもらう3馬力ならば、お金のメリットはさらに大きくなる。istock

仮に自分がリストラされて職を失ってもパートナーがいれば、なんとか耐えられる。1馬力から2馬力にかわると家計は安定するし、資産運用をしてお金にも働いてもらい3馬力になればもっと安心だ。年収が少ない人ほど、結婚して家計の支出を減らし、資産も運用することで家計は安定するのだ。制度上のお金のメリットは微々たるものだ。それよりも結婚して共働きすることで家計面では、大きなメリットになる。


また長寿化に伴い、定年後の夫婦生活は、一般的に20年以上になることが予想できる。独身者は、ひとりで過ごすセカンドライフも長期化するのだ。65歳まで再雇用で働いたとしても、人生100年時代ならば35年もの長い期間ひとりで過ごすことになるのだ。会社を退職してしまうと孤独になってしまう人もいるだろう。


今後は変わっていくと思われるが、現時点では病院に入院するのに「身元保証人」が必要になる。パートナーや子どもがいない方は、この点でとても苦労する。介護状態になって、身内がひとりもいない不安は、かなりのものになってしまう。

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夫妻共に初婚年齢が若くなった?


2020年の国勢調査の結果によると夫妻の平均初婚年齢は、夫で31.0歳、妻で29.4歳となっている。令和元年と比較すると夫妻共に初婚の年齢が若くなった。男女共に平均年齢は30歳前後だが、平均ということは半数が20代で結婚をしているということだ。


生まれてからずっと不景気の若い世代ほど堅実なのかもしれない。心配なのは、30代で親と同居している男性だ。実家暮らしから、すぐに結婚生活となると嫌がる女性も多い。なぜなら家事経験がないからだ。昭和の男性のようにはいかないので、男性も家事ができないと、ますます婚期が遅れてしまう。また、就職したものの給料が少ないので実家暮らしというのもあまりお勧めできない。少ない給料の中から、ヤリクリする方法を学べる絶好の機会なのに親が甘やかしていたら、ヤリクリができない人間になってしまう。

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40代男性は20代女性との結婚は厳しい

30代男性が注意して欲しいのは、男女とも同年齢で結婚していることが多いという点だ。婚活をしている40代や50代の男性の多くは、20代の初婚の女性を望むことが多い。ところが、現実的にそれは叶わないのだ。


以前、結婚相談所に勤める女性から聞いたことを紹介しよう。40代の経営者でお金も持っているからすぐにお相手が見つかると思っていた男性がいたそうだ。経営者の男性は、自分よりも年下の女性を望んでいたそうだが、20代からの女性からは、見向きもされなかったそうだ。冒頭のアンケート調査でもわかるが、お金だけで結婚できるわけではないからだ。


男性の年齢が上がると、20代の女性との結婚は厳しくなる。若い女性と結婚したいのなら、ご自身も若い内に婚活をしなければならないということだ。男性ならば、40代から婚活しても間に合うだろうと思っているのは大間違いなのだ。


前述の結婚相談所にお勤めの女性は、こうも言っていた。「男性の登録者は出遅れたという認識が薄いから、大変なのよねぇ」と。結婚は、損なのか・得なのか? を考える前に結婚適齢期を逃さないようにすることが大切なようだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/