「18歳成人」に潜む、“お金”面での危険性

  • 文:川畑明美
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お金を管理することは、節約のためだけではない。犯罪を未然に防ぐ役割もあるのだ。成人年齢が引き下げられた現在、子どもに正しいお金の知識を伝えることは重要だ。istock

お金の管理は、犯罪を防ぐためにも必要なことをご存じだろうか。お金の流れを把握していないと恐ろしい事態になることもあるのだ。もしも、あなたが会社を経営していて社員が架空請求をしていて5000万円を横領していたら?


実は、このような犯罪は、税務調査で発覚することがある。税務署は、お金の流れをしっかり見るので社員が横領・着服している事実が税務調査で見つかるのだ。社員に横領されたお金は売上計上漏れとなってしまい、法人税の他に重加算税までも加算されてしまうのだ! 横領されたお金は、損金になると思われるかもしれないが、会社は横領した社員に損害賠償請求権があるため、損金とはならず売上の計上漏れとなってしまう。

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家計でもお金の管理は犯罪を防ぐ


それは会社の経営のことで、自分には関係ないと思わないで欲しい。家庭の場合、子どもが親の財布からお金を抜くのと同じことだ。もしくは、パートナーがお財布からお金を抜く場合も同様だ。社員も子どももパートナーも「他人」ではないので、不正に気付かない自分の責任となってしまうのだ。


未熟な子どもならばまだ理解できるが、成人である社員やパートナーであっても、盗られた自分の責任になってしまう。事業の場合は、前述した通り税務署から指摘を受けて発覚するケースはとても多い。税務調査と同じようにお金の流れを把握していれば、そんなことには、ならない。


家計簿をつけなくても銀行通帳の記帳をこまめにして使ったお金よりも減っていれば、気付くはずだ。事業を経営している方も同じだ。資金繰り表を毎月チェックしていれば不正に気付くはずだ。お金の流れを知ることは、とても大事なことなのだ。

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大学生が投資詐欺に巻き込まれる理由

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大学生の多くは奨学金を借りているのでお金の不安から投資詐欺に巻き込まれるケースも意外に多い。istock

お金の知識がないと、損することが多いとはうすうす気付いている方もいるだろう。だが、損だけではなく、お金の知識がないばかりに犯罪に巻き込まれることもある。少し前に、大学生の間でこんな事件があったこと、覚えているだろうか? 「USBメモリを媒体とする投資関連学習教材」の事件だ。投資関連の教材が入ったUSB1本が49万円で売られていたのだ。


投資で確実にもうかるシステムが入っているという投資詐欺の事件だ。高校時代の友人や大学の先輩が、自分だけ特別に儲け話を教えてくれると錯覚して投資詐欺に手を出してしまう大学生が続出したのだ。成人になった大学生は、学生ローンを借りることができる。投資詐欺は上手く考えられていて、学生ローンでギリギリ購入できる49万円になっている。そして、その後も有料セミナーなどでお金を絞り取られていくとういう事件だった。


今の大学生の2人に1人は、奨学金を借りて大学進学している。お金の不安は意外にも大きく、事件に巻き込まれる大学生が後を絶たなかった。このような犯罪に巻き込まれないためにも、あなたがお金の知識を身に付け、そして家族にも伝えて欲しい。

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成人と未成年で大きく違う「契約」とは


今年の4月に約140年ぶりに成年の定義が見直された。そのことで何が変わるのか、私たちの暮らしにどのような影響がもたらされるのか、知らないとかなり危険だ。成年に達すると、未成年のときと何が変わるのか。民法が定めている成人年齢は「1人で契約をすることができる年齢」という意味と「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味がある。


成人になると親の同意を得なくても自分の意思で様々な契約ができるようになる。では、未成年の場合の契約は、どうなのか。未成年の場合は民法で「未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる」と決められている。


未成年者は、成年者と比べて取引の知識や経験が不足し、判断能力も未熟だ。そこで、未成年者がおこなう契約によって不利益をこうむらないように、法律で保護されているのだ。18歳成人なので、高校生3年生から保護の対象外となってしまう。

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お金の管理は、あなたを自由にしてくれる

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お金の知識つけたりやお金の管理ができたりすることで、自由になることができる。istock

以前のように18歳がまだ未成年ならば、法定代理人=親の同意を得ないでした法律行為=契約は、取り消すことができたのだ。それが、18歳成人となり高校3年生から、契約の取消ができなくなる。子どもにお金の知識を伝えなければ、高校生3年生までもが詐欺の対象となってしまう可能性がある。「お金がないから」と、断るのも危険だ。クレジットカードを作らされて買わされてしまう。


お金に縁のない人は、お金を上手く管理できないか、お金にいっさい関わらないような行動をしてしまう。理由を聞くと「管理するほどお金を持っていないしお金に縛られて生きるのはイヤだ」という。

それが間違いだと気付いて欲しい。お金の管理はお金に縛られるどころか反対に、あなたをもっと自由にしてくれるのだ。65歳定年制や定年70歳努力義務など、会社員にとって60歳を過ぎても働くことが普通になりつつある。お金をきちんと管理したら老後に働かなくてもいいほどのお金を手にできる可能性もあるし、公的年金だけで生活できれば、何歳まで生きても家計は安泰だ。公的年金だけで生活できるようになるには、お金の管理こそ重要なのだ。お金の管理ができるということこそ、「本当の自由」ということではないだろうか。

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子どもや家族を守るために


投資詐欺だけではない。ボランティアの募集詐欺の案件も報告されている。海外でのボランティアを募るページをFacebookで見て、興味を持った大学生に旅費を先に振り込ませる。出国の直前に連絡がつかなくなり相手方の住所をたずねたところ事務所が存在していないというケースだ。こちらもローンが組めるので多額の旅費をクレジットローンで申し込んでしまったケースだ。


お金の話を子どもにしないご家庭が多いが被害にあってからでは遅いのだ。もし、自分の子どもが被害にあったと思うと、想像しただけで心底悲しい。そうならないためには、親が教えるしかない。2022年から高校の家庭科で資産運用についての学習が始まるが、まだまだお金の知識の一部に過ぎない。


お金オンチを楯にしてお金の知識を学ばないでいると、あなたの大事な子どもや家族を守ることができなくなる。自転車保険の加入義務になったキッカケの事件をご存じだろうか。当時、小学校5年生だった少年が乗った自転車と歩行者との衝突事故をめぐる損害賠償訴訟で、少年の母親(40歳)に約9500万円という高額賠償が命じられたのがキッカケだった。


他にも、子どもが親のクレジットカードを抜き取りスマホゲームに課金していたトラブルもある。小学校低学年だと、クレジットカードの仕組みを理解しておらず、「数字を入力すれば買い物ができる便利なカード」くらいの認識で使ってしまうのだ。お金の話を子どもにしないのは、かなり危険なことだと意識して欲しい。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/