ミシュラン三つ星出身シェフが振るう繊細な技を見よ! 薪火レストラン「SMOKE DOOR」

  • 文:Pen編集部
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「熾火料理」の舞台である“薪場”を臨むオープンキッチンのダイニング。

横浜駅徒歩4分にある「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」1Fに、食通たちをざわつかせる薪火レストランが扉を開けた。

2022年4月にオープンした「SMOKE DOOR(スモークドア)」だ。店名を聞けば、ピンとくる人がいるかもしれない。キッチンには薪火料理のジャンルで全米初のミシュラン三つ星を獲得したサンフランシスコの薪火レストラン「Saison(セゾン)」でエグゼクティブスーシェフを務めたTyler Burges(タイラー・バージズ)氏が立つ。

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Tyler Burges (タイラー・バージズ)●1988年4月生まれ。料理界のハーバードと呼ばれる世界一の料理学校CIA(Culinary institute of America)を卒業後、米国のミシュラン二つ星「Coi」等のレストランを経てSaison Hospitalityに入社。2009年にサンフランシスコにて熾火調理を主とした料理スタイルでミシュラン三つ星を獲得し、世界のベストレストラン50にもランクインしたレストラン「Saison」でエグゼクティブスーシェフに従事。2019年、石川県輪島市で行われた野外レストランイベント「DINING OUT」の料理人として来日した際、日本の食材や文化に魅了され日本移住を決意。2022年「SMOKE DOOR」エグゼクティブシェフに就任。

バージズ氏は2019年に石川県輪島市で開催された、世界のトップシェフたちが集まる野外イベント「DINING OUT」をきっかけに日本を訪れ、日本の食材や文化に惚れ込み移住を決意した。このようなバックグラウンドを持つシェフが今、国境を超えて生み出す薪火料理は、一体どのようなものだろうか。

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ダイニングへと続くエントランス。温かいホスピタリティで迎えられる「SMOKE DOOR」の体験はここから始まる。

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通りに面したオープンテラスが開放的。心地よい風を感じながら食事を楽しめる。

「SMOKE DOOR」は、カジュアルスタイルのオールデイダイニング。「横浜から半径50km圏内の食材を可能な限り使用し、手間と時間を惜しみなく使うことで食材のSweet Spot(スイートスポット=調理法、技術、調理時間を駆使して食材が最も花開く瞬間)を生み出したい」とシェフはいう。

人類最古の調理法とも言われる「薪火料理」は、原始的でありながら、その取り扱いには高度な技術が求められる。薪火は、炭火やオーブンのように火力が安定しておらず、約200〜1,200℃の温度帯からそれぞれの食材に適したポイントを見つける必要がある。食材の種類や状態を見極め、火加減を細かく調整しながら焼き方に強弱をつける技術は職人の腕が試される。見方を変えれば、食材一つひとつに合わせて細かく火力を調整できる「薪火料理」は、技術を身に付けていれば、食材の魅力を最大限に引き出すことができる調理法とも言える。

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「SMOKE DOOR」のハース(Hearth=薪場)。カウンターの下には薪火に使う桜の木が敷き詰められている。

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「SMOKE DOOR」では、直火ではなく薪を燃やして作られた“熾火”を使って調理を行う。

「SMOKE DOOR」の薪火料理は豪快ではなく繊細。グリル料理のように直火で焼き上げる調理法はほんのわずかで、オープンキッチンに配置されたHearth(ハース=薪場)では、薪火料理の中でも“熾火”にフォーカスした調理法が取り入れられている。“熾火”とは、薪に着火した炎が収まり、芯の部分が真っ赤になっている状態のことで、遠赤外線の力でムラなく食材に火を通すことができる。火入れの途中、食材の脂や水分が熾火に落ちることで煙が上がり、薫香がプラスされることも美味しさのひとつだそう。

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「Saison」時代から愛用するうちわで火力をコントロール。繊細な熾火には日本のうちわが最適だとシェフはいう。

キッチンを覗けば、シェフのこだわりが一目でわかる。“薪場”には、肉や野菜が至る所に吊り下げられていたり、網の上で焼かれていたり、様々な場所に様々な食材が散りばめられている。例えば、カリフラワー、ビーツ、人参は遠火(とおび)で数日間かけてゆっくり火入れが行われていたり、ナスは直接熾火の中で焼かれていたり、舞茸は、消えかかる熾火で8時間かけて焼かれていたりもする。また横のキッチンでは、翌年使用するビネガーを作っていたり、3週間かけてバターを発酵させていたり、2週間後の料理に使うソースを作っているというから、想像していた “カジュアルレストラン”の概念を遥かに超えてくる。

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肉や野菜が至る所に散りばめられた薪場は、まるでラボのようだ。
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4日間調理を施し、弱火の熾火でゆっくり火入れした舞茸。素材の水分は残しつつ、傘の部分はサクッとした食感に仕上がっている。
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遠火で2日間吊るし、その後24時間炙って焼き上げるカリフラワー。カリフラワーのみずみずしさとコリコリ食感を同時に楽しめる。

「Saison時代から日本の食材や調味料をたくさん取り入れてきましたが、日本が持っている食材のパワーやポテンシャルは素晴らしいものです。日本ではまだ規格内のものを好む傾向が強いようですが、私は規格にはまらない野菜や食材にこそ多くの魅力を感じます。同時にこれらを積極的に使用することで地域や生産者に貢献していきたい」と思いを語るシェフ。余ったバナナの皮で作ったバターでワッフルを焼いたり、デザートに使ったキウイの皮でジュースを作ったり、シェフの手にかかれば全ての食材が余すことなく使われる。

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自家製のEmber oil(薪火オイル)を塗って一晩スモークし、パリッと香ばしく仕上げられた「ケールチップ(アミューズとして提供)」。食べた瞬間からオークの芳醇な香りが口いっぱいに広がる。
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シグネチャーディッシュ。焦がしバターと溜まり醤油を厚切りのトーストに染み込ませ、表面をカリッと仕上げたトーストに、スモークしたアボカドをトッピングした「アボカドトースト(748円)」。

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“畑のキャビア”と呼ばれるとんぶりをシェフ秘伝の特製旨味ソース(通称「SD ソース」)で 48 時間マリネした「畑のキャビア じゃがいものガレットとパンケーキ(1,738 円)」。周りには、熾火で焚いた自家製のドライわかめを散らして磯の香りも表現。

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「4日間かけて作る ビーツのロースト(1,738円)」。ビーツを加圧して身とジュースを分け、ジュースはスモーク、身は約 3 日間遠火で火入れした後にジュースを身に戻し、熾火で焼き上げる。この複雑な工程により身をぎゅっと凝縮させ、しっとり濃厚な新食感を楽しめる。

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SMOKE DOOR 名物、薪で焼き上げる焼きたてパン「パーカーハウスロール(748円)」

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シェフ自らドライエイジングを施し、熾火でグリルした「横浜牛の薪焼き 100g(5,280円)」。表面はパリッと香ばしく、中はジューシーな仕上がり。*入荷状況により産地は変更の可能性あり。

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皮はパリッと、身はしっとりジューシーに仕上げた「48時間調理したチキンの薪焼き(2,508円)」。焼く前に皮の部分を乾かすことでよりパリッとした食感を実現。

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コース(8,000円)の最後に提供される「SMOKE DOOR サンデー」。マシュマロを加えたふわふわ食感のスモークアイスクリームに、薪で温めたキャラメルソースをかけていただく。

料理はゲストの手元に届いた瞬間が一番美味しい状態になるよう計算し尽くされ、サービススタッフとの連携で、お皿の温度から素材の焼き加減、ソースの温度や状態から提供するタイミングまで秒単位で設計した上で提供されていることにも驚きだ。

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エントランスには、バーも併設。バージズ氏が考案するオリジナルレシピのカクテルやスナックを楽しめる。

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お食事との相性を考えて提案するFOOD FRIENDYカクテル。自家製のキューリのコーディアルシロップで作る「キュウリとライムのジントニック(¥935)」

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薪焼きベーコンを漬けたウォッカの「スモークベーコンのブラッディ―メアリー (¥1,210)」

シェフの技術とアイデアで生み出される料理とシームレスなホスピタリティを兼ね備えた「SMOKE DOOR」。ディナーメニューはアラカルトが中心だが、8,000円(税別)のコースも用意されている。アラカルトメニューから構成されるこちらのコースは、単品で頼むよりも価格が高く設定されている。その背景に、売上の8%を地域の子供達への食育や食の支援活動、近隣の方々へのコミュニティーワークに寄付する取り組みがある。そこには、「世界中からゲストが訪れるホテル内にオープンしたレストランとして、地域への貢献も使命と考えている」という「SMOKE DOOR」の決意をも感じられる。

「SMOKE DOOR」は、「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」のメインダイニングとしても開かれ、モーニングやランチ、カフェ、バーなど幅広く利用できる。

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ランチはバーガーやサンドイッチ、パスタなどのカジュアルメニューや平日限定のおランチコースを楽しめる(土日はディナーと同様メニュー)。

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食は、「SMOKE DOOR」名物の薪で焼き上げる「PARKER HOUSE ROLL(パーカーハウスロール)」や相模原「井上養鶏場」のケージフリーエッグを使った卵料理などのアメリカンブレックファーストを堪能できる。

カジュアルレストランでありながら、徹底的に手間をかけて生み出される「SMOKE DOOR」の食体験は、世界中から訪れるゲストを魅了し続けるだろう。

SMOKE DOOR

神奈川県横浜市西区南幸2-16-28(HOTEL THE KNOT YOKOHAMA 1F)
TEL:045-534-8172
営業時間:7:00~23:00
席数: 134席(レストラン88席、テラス8席、バー38席)

https://hotel-the-knot.jp/yokohama/smoke-door/