良品計画の自動運転バス「GACHA」が、フィンランドからやってきた

  • 文・写真:細谷正人

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千葉市の花見川団地で実証走行する自動運転バス「GACHA」

「無印良品」を手掛ける良品計画は、自動運転技術の研究開発を行うSensible 4とともに自動運転バスの「GACHA(ガチャ)」をフィンランドで車体デザインしています。エスポー市で自動運転バスを実用試験運行を開始し、その「GACHA」が、遂に日本にやってきました。

2022年6月、良品計画は千葉市とUR都市機構と連携協定を締結して、団地を拠点とした地域モビリティとしての活用を視野に、千葉県千葉市の花見川団地で日本初となる自動運転バス「GACHA」の実証走行を行いました。

早速、僕も実証走行を体験してきました。自動運転は初体験です。乗車前は少しだけドキドキしつつも、一旦乗車してしまうとその乗り心地はふだんのバスにのっている感覚とほとんど変わらないという印象でした。

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無印良品の生みの親でグラフィックデザイナー田中一光さんの言葉に、商いを通じて社会貢献し、暮らしに役立つ「生活美学」をつくるというものが無印良品の姿勢として記されています。“美”という概念は、文化が違えば人もそれぞれでその定義はとても難しいものです。しかしながら、その「生活美学」とは何かを問い続けながら、世界中で展開しているのも無印良品の凄さです。

実際に、無印良品は「感じ良いくらし」という提供価値を実現するため、自信に満ちた“これでいい”というものづくりを行なっています。基本的なものづくりへの姿勢として、1. 素材を見直し適材適所に、2. 製造工程を見極めて無駄を省く、3. 包材を簡略化する、という3つの視点があります。これらは、ものづくりのための大切なプリンシプルになっているそうです。

しかしながら、これからの時代に向けて、ものづくりだけでは「生活美学」や「感じ良いくらし」を伝えることは難しくなり、生活者に無印良品の思想が伝わりづらくなってきているとも言えます。現実的に国内で言えば店舗のほとんどが都市やその近郊にあり、過疎地には展開していません。

そのような背景がある中で、良品計画は2018年2月にソーシャルグッド事業部を発足しています。「感じ良いくらし」の“グランドデザイン”を描くという発想で、次々とソーシャルプロジェクトを展開しています。自動運転バスの「GACHA」だけでなく、地域のそれぞれの課題に対し、無印良品は地道なアプローチで社会貢献活動を行っています。具体的には千葉県鴨川市の棚田再生支援や南房総市の白浜での廃校の活用、シャッター商店街に見られる地域の中心部の活性化などです。

こうした社会課題の解消としては、地方創生の手法として市街地のスケールをできるだけ小さく保ち、歩いて行ける範囲を生活圏と捉えたコンパクトシティーという発想があります。そしてコロナによって、リモートワークが日常化し、働くことと暮らすことが一体化しています。鉄道のローカル線廃業問題などもあるようにユニバーサルサービスの限界も生まれてきています。さらに地球温暖化への対応も喫緊の課題です。今後、地方創生だけでなく、都市部の在り方も見直され、グローバルでもコンパクトシティー構想は発展し、スマートモビリティはスピードを加速しながら進化しています。まさに「GACHA」は多層化している課題を解決に導く方法論の1つの提案だと言えます。

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一般的に自動運転の話になると、技術革新や規制の問題ばかりが注目されがちです。しかし「GACHA」のプロモーションムービーには、バスが図書館や無印良品の店舗などを移動していく様子があります。その映像を見ると、昔は家の近くまで夕方になるときていた豆腐屋さんのような、情緒性のある温かい心地よさを感じます。しかも、ネーミングは「GACHA(ガチャ)」。
幼い頃に遊んだ、あのコロコロ感のあるカプセルトイの“ガチャガチャ”がデザインコンセプトです。丸々としたかわいい感じやワクワク感が街の中に幸福感を与えています。ネーミングそのものが、唯一無二の「GACHA」のパーソナリティーイメージをつくっています。

高齢化が進んでいる千葉市の花見川団地での実証走行を体験したときに感じたのは「GACHA」のチャーミングなデザインが団地全体に、やさしい温かみを与えていました。他社の自動運転モビリティのコンセプトとの違いは明確です。「GACHA」は未来都市を創造するという感覚ではなく、決してヒューマニティーを忘れない感性価値、まさしく「生活美学」「感じ良い暮らし」が「GACHA」のコンセプトから強く感じます。

テクノロジーに人間が適合するのではなく、まさに人間のほうに向かって適合してくれている「GACHA」。自動運転バス「GACHA」が、僕たちの暮らしをもっと前向きにしてくれる日がそう遠くないことを感じた嬉しい体験でした。

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細谷正人

バニスター株式会社 代表取締役/ディレクター

NTT、米国系ブランドコンサルティング会社を経て、2008年にバニスター(株)を設立。P&Gや大塚製薬、オムロンなど国内外50社を超える企業や商品のブランド戦略とデザイン、社内啓発まで包括的なブランド構築を行う。著書には『ブランドストーリーは原風景からつくる』『Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方』(日経BP)。一般社団法人パイ文化財団代表理事。法政大学大学院デザイン工学研究科兼任講師。

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細谷正人

バニスター株式会社 代表取締役/ディレクター

NTT、米国系ブランドコンサルティング会社を経て、2008年にバニスター(株)を設立。P&Gや大塚製薬、オムロンなど国内外50社を超える企業や商品のブランド戦略とデザイン、社内啓発まで包括的なブランド構築を行う。著書には『ブランドストーリーは原風景からつくる』『Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方』(日経BP)。一般社団法人パイ文化財団代表理事。法政大学大学院デザイン工学研究科兼任講師。

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