新時代に向けてマセラティの疾走をバックアップする、新しいスポーツカーとSUVに乗った

  • 文:小川フミオ

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MMXX。この暗号のような4つのアルファベットから、マセラティの新時代が始まった。ローマ数字でMは1000、Xは10。つまりアラビア数字にすると2020年。

2020年にマセラティは、F1マシンと同様の技術を注ぎ込んだV6をもつミドシップのスポーツモデル、MC20を送り出したのだった。続いて22年3月に、新型SUV「グレカーレ」を発表。

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マセラティ本社で行われたお披露目の記者会見におけるダビデ・グラッソCEO(左)

さらに、同年6月初旬には、電動でトップが開閉するMC20チェロ(cieloは空を意味するイタリア語)がお披露目された。スポーツカーにオープンボディを求める北米で、絶大な人気を獲得しそうなモデルだ。

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ウインドシールド上端からリアにいたるまで、弧を描くようなスムーズなラインを心がけたというだけあってスタイリングは美しい

「イノベーションとユーザーエクスペリエンスとデザインでもって、マセラティというスポーツブランドの栄光を追求します。モデナやトリノやミラノなど、イタリアには工業的に進んだ街がたくさんあります。その存在価値を改めて知らしめたい」

そう語ったのは、マセラティのダビデ・グラッソCEOだ。MMXXというスローガンをうち立てた際、同時に掲載したコピーは「Time To Be Audacious」。大胆に打って出るときが来た、というかんじだろうか。

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トップを格納するためのリッドには大きく「トライデント」のデカールが貼られているので、開閉時は周囲の交通や通行人に見せつける効果をもつとか

マセラティの意気込みがよくわかるのはデザイン。MC20は、低く長いノーズとともに、張り出したフェンダーという抑揚の効いたボディで、走りのための機能をかたちに表現している。同時にものすごくエモーショナルだ。ドアは上の写真のように、上にはねあがるかたちで開く。

マセラティの工場の一部を使っての記者会見の席上で私が目撃したMC20チェロ。グラッソCEOの操縦で、心が奮い立つようなV6の音を響かせながら登場した。実車は、ものすごく存在感がある。

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フルアというカロッツェリア(車体特装業者)が手がけたボディを持つ1950年のA6Gスパイダー

戦前はレースで名を馳せたマセラティ。戦後は豪華なGTを作り、北米を中心に世界中の富裕層に愛されてきた。マセラティと発音するだけで、うっとりする気分になる、と言う欧州人にも私は会ったことがある。よくわかります。

「一時期、クオリティの問題などでやや低迷していたこともあります。これから、かつてと同様のマセラティのブランド価値を取り戻していきたい」。グラッソCEOは言う。

上記の言葉を踏まえつつ、”いままでもマセラティのブランド価値はじゅうぶん高いと思うんだけれど”と、私がコメントすると、インタビューの席上で、マセラティのデザインを統括するヘッドオブデザインのクラウス・ブッセ氏は「たしかに、ヘリティッジを大切にしているのはその証明です」と説明してくれた。

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マセラティのモデナ工場を使った特設の会場でのお披露目の場におけるヘッドオブデザインのクラウス・ブッセ氏

ブッセ氏は、持参したスケッチブックにペンをすらすらと走らせる。上面図だ。樽型の胴体をまず描き、つぎに前後フェンダーを加える。すると、50年代のクラシック・マセラティのようでいて、ちゃんと最新モデルが紙上に姿を現す。過去から現在までつながることの証明だ。

細部にヘリティッジへのこだわりが見られる。たとえば、ギブリやレバンテでおなじみの3つの孔。1947年の「A6-1500」でも見られるディテールだ。これは最新のMC20やグレカーレにも引き継がれている。

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マセラティ車の伝統ともいえる3つのエアベントのモチーフはグレカーレでも見られる

フロントグリルをみると、マセラティ車は伝統的にトライデントの上に、逆三角形のモチーフを用いてきた。「ウゴラ(口蓋垂)」とマセラティが呼ぶもので、最新モデルでは、ロードホイールでもその逆三角形を見つけることができる。

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MC20でも、低い位置のグリルに「トライデント」と「ウゴラ」というおなじみカッコよさ

MMXX以降のマセラティの姿勢は、デザインにも色濃く反映されていますとブッセ氏。たとえば、MC20とグレカーレには、共通したデザインテーマが採用されているのだ。

できるだけ低い位置に配したグリルと中央の”トライデント”エンブレム、それにボディの外側に置いたティアドロップ型のヘッドランプ、といったぐあい。グレカーレではグリルとヘッドランプの高さを意図的にズラすことで、相対的にグリルを低めに見せている。

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グレカーレはSUVでなくGTなのです、と語るブッセ氏がデザインモチーフを説明してくれる

筋肉のようにふくらんだ前後フェンダーも、「スポーツカーがブランドの核」(グラッソCEO)とするマセラティの製品に共通する重要なテーマといえるだろう。

このところマセラティ車は、ギブリやクワトロポルテやレバンテなど、既存のモデルも、走りが目に見えてよくなってきた。それだけでは足りないのか。乗ると、MC20(クーペ)もグレカーレも、さらに上のレベルにジャンプしたような、クオリティの高いモデルに仕上がっている。

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ホイールの存在感とエンジンをおさめたリアセクションのボリュウムが強調されたMC20クーペ

MC20クーペは、F1マシンではおなじみのプリチャンバーイグニションという高効率の燃焼技術を採用した「ネットゥーノ」なる3リッターV6エンジンを、乗員が乗るキャビン背後に搭載したミドシップの後輪駆動。

すばらしくよく回り、463 kW(630ps)の最高出力と730Nmの大トルクで、カーボンファイバーの活用で車重を1500キロに抑えたボディをぐいぐいと押しだしていく。ハンドリングは軽快で、軽めの操舵力をもったステアリングホイールを操ると、カーブを曲がるのがじつに楽しい。

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新世代のSUVとして開発されたグレカーレ(写真はGT)

グレカーレのばあい、基本的にはおなじ3リッターV6「ネットゥーノ」エンジンを載せ、390kWと620Nmの「トロフェオ」なるモデルが頂点。下にマイルドハイブリッド化された2リッター4気筒エンジン(チューンちがい)の「モデナ」(242kW、450Nm)と、「GT」(221kW、450Nm)がある。

私がモデナ近郊の山岳路やアウトストラーダ(高速道路)を走りまわったのは、GTで。はっきりいって、これで充分。グレカーレは従来のレバンテに対して、全長は約160ミリ短い4846ミリ。全高は20ミリほど低い1670ミリ。

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グレカーレGTのロードホイールにも三叉の鉾(ほこ)を意味する「トライデント」のモチーフ採用

車体の動きは抑制が効いていて、カーブでもハイウェイでも、フラット感の強い走りが堪能できる。レバンテにも独特の乗り味があって、捨てがたい魅力があるが、グレカーレはまったく別のキャラクターをもったモデル。スポーティな走りが好きなひとは、グレカーレのほうが好みかもしれない。

レバンテにはややソフトな足回りを持つモデルもあるが、グレカーレは、よりしっかりした足まわりと、ダイレクトな感覚の強いステアリングが特徴のようだ。操縦性は期待いじょうにスポーティだ

マイルドハイブリッド化のメリットは、CO2の削減。とくに、発進時などはモーターを使うことで、燃費の悪化(つまりは走行キロあたりのCO2排出量の増加)を回避する技術だ。

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インフォテイメントシステム用のモニターなど視界をさまたげそうなものはすべて低い位置に置かれたグレカーレのダッシュボード

室内は「視線をじゃましそうな要素は極力下に配置した」と前出ブッセ氏がいうとおり、視界はひろびろとしている。いっぽうでデジタル化が進んでいて、あたらしさも感じられる。私がおどろいたのは、ギアセレクターまで液晶モニターで行うことだ。

このさき、MC20にもグレカーレにも電動車が加わるといい、さらにマセラティ、あたらしい時代へ向かって疾走する気だろう。

価格はMC20クーペが2664万円。MC20チェロが3385万円。いっぽう、グレカーレGTは862万円、同 モデナが1046万円、同 トロフェオが1395万円。MC20チェロのデリバリー開始は2023年春、グレカーレは初頭というから、こちらのほうが少し早そう。