SUBARUとトヨタ共同開発の電気自動車、乗って楽しいのが一番は本当だった

  • 文:小川フミオ
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走らせて楽しいという電気自動車の特性を活かしたという

SUBARUとトヨタ自動車が共同開発したBEV(バッテリー駆動のピュアEV)が、2022年5月に発売された。このところ、各社からのBEVが増えているなかで、明確なキャラクターが勝機につながる。「スバル・ソルテラ」はそこがわかっている。

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手前がトヨタbZ4Xで奥がスバル・ソルテラ(グリルがかなり異なる)

スバル・ソルテラとトヨタbZ4X(ビージーフォーエックス)という姉妹車。SUBARUはこのプロジェクト以前からBEVの研究開発を進めており、トヨタの参画を得て、ついに量産化までこぎつけた。

この2台、全長4690ミリ、全高1650ミリのボディサイズと、2650ミリのホイールベースは同一。SUVという基本車型は同じであるものの、フロントグリルを中心に、デザインが微妙に異なる。

私は、先日この2台(ともに前に80kW、後ろにも80kWのモーター搭載の全輪駆動モデル)をバックトゥバックで乗り替えて、静岡から浜名湖そして豊田市の山岳路を通り名古屋までドライブするチャンスがあった。

はっきりいって、2台はけっこう違う。私は、デザインの微妙な違いぐらいだろうと思っていたけれど、両社とも独自のポリシーでもって、仕上げを変えているのだ。

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ソルテラはフォレスターより全長で50ミリ長く、ホイールベースも180ミリ長い

「SUBARUにはスバリストとも呼ばれる熱心なファンの方々がいらっしゃいます。BEVでも、その方たちの期待に応えるのが大事というのが私たちのポリシーですから、ソルテラも、SUBARUの個性を持つクルマにしようと考えました」

そう語るのは、SUBARU商品企画本部でプロジェクトゼネラルマネージャーを務める小野大輔氏だ。私が参加したドライブの途中で、そう教えてくれた。開発を指揮したひとである。

ソルテラは、bZ4Xより足まわりの設定が硬めで、ステアリングホイール(ハンドル)の操舵感覚も重めだったのが印象的だ。私がそのことを告げると、小野氏はわが意を得たりとうなずいた。

「SUBARUらしい走りの楽しさや安心感をしっかりそなえるように意識していました。操舵感覚が重すぎる、というコメントもいただいたことがありますが、スバルに乗っていらっしゃった方から、ほかのモデルと共通したフィーリングと、むしろ違和感がないのではないかと思います」

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車重の差でbZ4Xの航続距離のほうがわずかに上回る

ソルテラとbZ4Xは、操舵感の設定や、足まわりの動きを規制して乗り心地に影響を与えるサスペンションのダンパーが異なる。これだけでも、先述したとおり、私にはだいぶ印象がちがって感じられた。

じつは、両社が協力して車両を完成させたあと、トヨタは、トヨタ車オーナーにすんなり受け入れてもらえる専用の味付けをほどこしたそうだ。ソルテラより、全体に”やわらかい”印象の乗り味である。

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ソルテラに「アイサイト」は装備されない

2車はドライブモードの設定も違うし、ソルテラが、ステアリングホイールの背後にパドル式の回生ブレーキの強さのコントローラーをもつのに対して、bZ4Xはあえてそなえない。

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bZ4Xのダッシュボード

高速道路など低負荷な領域だとbZ4Xは2WDになる。ソルテラはAWDにこだわりを持つSUBARUゆえ、つねに4つの車輪を駆動。同じ4WDモデルでは、bZ4Xのタイヤが18インチであるのに対して、ソルテラは20インチと大径になる。

ソルテラで、浜名湖から愛知・豊田市へと向かう途中、同県新城市の本宮山スカイラインなるワインディングロードを走ったところ、なるほど、開発者の小野氏の言わんとするところがわかった気がした。

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ワインディングロードが楽しい

最初は、操舵感の重さゆえ、ちょっと扱いにくいかなと思ったものの、それにはすぐ慣れる。それどころか、路面の状況をていねいに手に伝えてくれるうえ、車体の反応もよい。

パドルシフトを使って、カーブの手前で減速し、出口が見えたらアクセルペダルを踏み込で加速。アクセルペダルを踏み込んだとき、リアのモーターがタイヤに大きな駆動力を与え、どんっというばかりの力強い押し出し感だ。

一連の動きのスムーズさたるや、「BEVを手がけた第一の目的は運転の楽しさにあります。乗るならAWDモデルがいいと思います」という小野氏のねらいどおりだと思った。

車型はSUVで、サイズも余裕があり、車重はバッテリーのせいで2トンを超えるものの、運転していると、まるで小型のスポーティなハッチバックを操っているよう。

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上級グレードET-HSはAWDのみに設定でレザーシートをそなえる

ファミリーカーとして使える室内の広さも、エンジンや燃料タンクを持たず、バッテリーを床下に収納できるBEVの強み。カーブなどを曲がるときに車体を安定させる重心高を低くできるなどもメリットだ。

ただし、衝突安全規格があって、それをクリアしなくてはならないし、バッテリーの保護も必要だしで、いたずらにコンパクト化がはかれるものでもない。車体設計はかなり大変だそう。

ドライバーズシートは、あえてダッシュボードを高めにするなど、乗員の囲まれ感を追求している。ウォークスルー化を重視したヒョンデ・アイオニック5などと正反対のデザインだ。シフターや、ドライブモードセレクターなど、走行に大事な機能は物理的スイッチで行う。

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後席のヘッドルームもレッグルームもおとな2人にじゅうぶんなスペース

ソルテラには8チャネル9スピーカーからなるハーマンカードン(bZ4Xには8チャネル11スピーカーのJBL)のオーディオシステムがそなわる。室内の静粛性はとても高いので、音楽を聴くのも楽しめた。

今回、上記両ブランドを傘下に置くハーマンインターナショナルでは、私たちのために、CDよりはるかに高音質のハイレゾ音源をUSBに入れて用意しておいてくれた。

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bZ4Xには写真のホーンツイーターをはじめJBLのシステムが用意される

iPhoneの音源をブルートゥースを使って聴いていて、でも音にちょっと不満を感じているひとには、ハイレゾ音源を有線接続するのがいいですよ、と担当者が教えてくれた。

ソルテラの航続可能距離は542キロ(前輪駆動車では567キロ)。でもエアコンを使うと、いわゆる電費はみるみる悪化する。さいわい試乗したときは平日だったので、高速道路の充電施設はどこも空いていたので、1回だけ充電した。でも浜名湖から名古屋駅前までなら、ワインディングロードをとばしても、それでだいじょうぶ。ほっとしたのだった。

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エモーショナルレッド2の車体(暖色系はこの色のみ)

Specifications
Subaru Solterra (AWD)
全長×全幅×全高 4690x1860x1650mm
電気モーターx2 全輪駆動
最高出力 フロント80kW、リア80kW
最大トルク フロント169Nm、リア169Nm
バッテリー容量 71.4kWh
価格638万円〜