
「昔は良かったなぁ」という上司は多いのではないだろうか? 筆者も会社員時代は、よく言われていた。お金の面で言うと「昔は定期預金の金利が高くて良かった」とか「昔は入った保険の金利が高くてお宝保険で良かった」などがよく言われる。
もちろん昔の方が金利は高かったのは事実だ。しかし金利が高いということは、モノの値段も高かったのだ。バブル期の定期預金の金利は高かったのかもしれないが、住宅ローンの金利も変動金利で8.5%くらいだった。預ける金利も高ければ、借りる金利も高くなる。
バブル時代は、モノも高かった。筆者はバブル期は学生だったが、洋服はとても高かった。スーツも10万円以上で、コートもノーブランドでも10万円くらいだった。筆者の成人式はスーツで出席したが、バイト代を貯めてもスーツしか購入できずコートは友人に借りて式に向かった。今はスーツも高品質で安いものがたくさんある。
また、学生のバイトの時給も低かったのだ。当時はワインはまだ高級で3万円のワインをドンドン空けている人達に給仕する人の賃金は、時給600円前後だった。バブル期の方が貧富の差は激しかったのだ。必ずしも「昔が良かった」とは言えない。今の金利は低いが、モノの値段は安い。しかも高品質で安いものばかりで昔よりも暮らしやすいといえるだろう。
---fadeinPager---
過度な悲観論はお金を遠ざける
人は、将来について「良くなる」と考える人と「悪くなる」と考える人に二分できる。将来は悪くなると考える方のほうが「昔は良かった」と考える傾向が高いのだ。もちろん1点だけに注目したら「昔は良かった」のかもしれないのは、前述した通りだ。
「昔は良かった」と考えてしまうと、当然のことだが思い切った行動がとれなくなる。お金持ちほど「未来志向」の方が多い。先見性があるともいえる。将来について楽観的にとらえているから、チャンスに巡り合う頻度も高くなるのだ。もちろん楽観的過ぎるのも良くはないが、過度な悲観論では、お金を遠ざけてしまう。
ちなみに「昔は良かった」という言葉が頻繁にでてくると老化のサインらしい。考えることや判断をするのは脳の前頭前野だが、前頭前野が衰えると新しいものや自分と違うものが受け入れにくくなるそうだ。
---fadeinPager---
日本が良くなると考えられない18歳

豊かで、安全で教育水準も高い日本なのに、なぜか若者は希望を持てない……。そんな事実が、日本財団が世界9カ国で9000人の若者を対象に実施した「18歳意識調査」で明らかになった。日本の18歳は「将来、国が良くなる」と考えている人が1割以下なのだ。国の将来については、アメリカ・イギリス・ドイツも「良くなる」と答える人は少なくないので先進国には共通の傾向があるが、日本は突出して低いのだ。
親が「昔は良かった」なんてことを話していたら、尚更この傾向が高くなってしまう。昔よりも確実に進学率は増えているし、便利で豊かになっている。例えば大学への進学率は1984年頃は25%程度だった。女性に限定したら13%程度とかなり低い。ところが現在は男女共に50%を超えている。1980年代は、インターネットも携帯電話もなかった。バブル期よりも確実に生活は豊かになっているのだ。
---fadeinPager---
日常生活で考える力を身につける
高い教育を受けて豊かな時代を生きる若い世代が、なぜ日本という国が良くなると考えられないのか。それは「敷かれているレール」がなくなっていったことにあるのかもしれない。昔は良い大学を出て良い会社に就職したら、一生安泰みたいなレールは存在した。ところがインターネットやAIの普及で、このようなレールはなくなっていく方向にある。
現在求められているのは「自分で考える力」だ。考える力というと、難しい問題を解かなければいけないと考えるかもしれない。それも必要だろうが、筆者は日常生活でも「考える力」は、身に付くと思っている。例えばペットボトルの水を買うのにも、自動販売機で買うか、スーパーで買うか、ネットでまとめ買いをするかで金額は変わる。この中でどの消費方法を選ぶのか考える必要がある。
安ければいいというわけでもない。自分にとって利便性が一番ならば、高くても価値はある。お金を上手に使うことは、考える力が十分に育つのだ。
---fadeinPager---
「考える力」が弱まる習慣とは?
まずは、考える力が弱まる習慣について考えてみた。
・いつも受け身で情報をうのみにしてしまう
・常識やルールにこだわり過ぎる
・成長意欲や向上心が乏しい
・何にでも消極的
・同じミスや失敗を繰り返してしまう
このような習慣があると考える力が弱まってしまうので意識して改善していきたい。まずやって欲しいのは、何かを購入する時には必ず「疑問を持つ」ことだ。「なぜ、この商品が必要なのか?」「なぜ、このサービスが必要なのか?」購入する前に考えてみて欲しい。そして、さらに「思い込みや先入観」を捨てる努力をしよう。思い込みや先入観とは、自分の「思考のクセ」なのだ。そこに気付くことが大事だ。
---fadeinPager---
クリティカルシンキングを活用する
思い込みや先入観は、思考停止に近い状態を引き起こし思考の幅を狭くしてしまう。クリティカルシンキングを活用しよう。物事を客観的に判断する思考方法のことだ。以前「収入が限られていますが、マンションを購入するか子どもを持つか、どちらがいいですか? 」と相談されたことがある。結論からいえば、どちらも可能なのだ。うまくヤリクリをしたり子どもが生まれても働き続けたりと方法はある。
二者択一ではなく、何か別の方法はないのか考えるクセをつけるということだ。つねに疑問を持って多角的な視点から考えることで、凝り固まった思考を柔らかくして新しい選択肢を模索して欲しい。クリティカルシンキングするには、まず「ゴールを決めること」だ。子どもの大学費用やマイホームの頭金、老後資金など一括では支払えない大きな金額のゴールを設定してみよう。そのゴールに向けて、「毎月いくら貯蓄するのか?」「何年かかるのか?」などを考えてみよう。使えるお金には限りがある。だから「考えて使う」しかないのだ。この考える力が付けば、仕事にも役立つので収入も上がり豊かになっていくのだ。
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/