建築家永山祐子さんと考える、新型レンジローバーの美しさとは?

  • 写真:谷井 功
  • 文:和田達彦
  • スタイリング:長山智美

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新型レンジローバーと永山祐子さん、そして永山さんがデザインを手がけた「TALIESIN®️ LIGHT」(2019年)。フランク・ロイド・ライトの傑作「TALIESIN®️2」を再解釈したこの照明は、素材を木から金属に変更し、現代の空間にもあうようにより繊細で軽やかな印象をもたせている。「TALIESEN® LIGHT」¥902,000(税込)YAMAGIWA TEL:03-6741-5800 www.yamagiwa.co.jp (写真の車両は日本仕様とは異なります)

「クルマのデザインには、独特なところがあっておもしろい」

「建築とクルマの共通点は、彫刻のようなアート作品とは違って、目的や機能ありきのものであるということでしょうね」と語るのは、2023年に開業予定の東急歌舞伎町タワーの設計を手がけたことで注目を集めている建築家の永山祐子さん。「一方で大きく異なるのは、建築は当然1点もののオーダーメイドが基本なのに対し、クルマはマスプロダクト製品であること。建築のデザインはペルソナのターゲットは想定しますが、土地などのコンテクストほど重要ではありません。しかしクルマは多くの台数を売るためにターゲットを想定し、そこにアピールすることを考える必要があります」。そしてこの機能とデザインの両立において、クルマには独特なところがあっておもしろいのだと言う。「クルマはその時代の最新技術が詰め込まれたものですが、そのテクノロジーを際立たせるのであれば、前モデルのデザインを継承する必要はないと思うんです。でも実際には技術だけじゃなくて、『レンジローバーはこういうものだ』という部分を保ち続けてほしいという想いがユーザーの側にある。そこはファッションのラグジュアリー性に近いものが感じられます。テクノロジーとファッションのラグジュアリー性とがくっついているのがクルマのブランドで、そこがすごく興味深いですね」

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「新しい技術をうまく使っていくことで、オリジナルの精神をキープしつつ、それまでとは違う可能性を提示しています」と永山さん。左から、「TALIESEN® LIGHT」¥902,000 YAMAGIWA TEL:03-6741-5800 www.yamagiwa.co.jp 、「エッグチェア」¥972,000~、「A202テーブル」¥206,800 ともにフリッツ・ハンセン 東京 TEL:03-3400-3107 www.fritzhansen.com 「クラウド」フラワーポッド¥53,900 TOM DIXON SHOP TEL:03-5778-3282 (写真の車両は日本仕様とは異なります)

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テクノロジーを最新のものにアップデートしつつ、デザインなど守るべきところは守っていく。そうした2つの要素を融合することは、永山さんも「TALIESEN® LIGHT」のデザインにおいて経験している。「フランク・ロイド・ライトへのオマージュ企画としてデザインを依頼された際、オリジナルが水平と垂直のライン意識しつつ、光のリズムみたいなものを大事にしていたので、そこを守りつつ、どう現代的にしていくかについて考えました」。そこで素材を木から金属に変更し、白熱電球に換えてLEDを採用した。「金属は強度があるので、木よりも薄く細くつくることができます。またコンパクトなLEDにすることで、上から見えてしまっていた電球を隠すこともできました」。時代に応じた新しい素材、技術を用いることで、より洗練された形が可能になる。それによって今までとは違う効果が現れるので、その部分を際立たせるようにデザインを工夫する。そうしてデザインを行っていったのだと言う。「オリジナルをデザインした人が今生きていたらどうしていたかということを考えたりもします。今の技術が、もし当時にあったらこうしていたんじゃないかと想像しながらリデザインするんです」

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「新型は、街との親和性もより高くなったと思います」

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自分ではクルマのハンドルを握らないという永山さんにとって、個人的にクルマに求めるものは居住性や快適性。「後部座席に座らせてもらいましたが、まるでリムジンカーのよう。高級感ってこういうことなんだなと感じました」(写真の車両は日本仕様とは異なります)

加工技術の進化によって、凹凸を極限まで排したボディを実現した新型レンジローバー。それでいて、ひと目でレンジローバーだとわかる“らしさ”が残されている点がすごいと永山さんは語る。「全体的に丸みを帯びて優しい印象になっていますが、横の水平基調のラインやテイル部分の下がったラインのために、昔からの四角っぽい感じも残っていますね。優しさが加わったことで、女性でも乗りやすくなりましたし、また街との親和性もより高くなったと思います」。街と自然のどちらでも違和感なく使える点が気に入ったと言う。「最近は平日を都会の拠点で過ごし、週末は郊外の拠点へ移動して過ごすという2拠点生活を送る人が増えていますが、このクルマはそんな新しいライフスタイルにぴったりですね。また近年はラグジュアリーの定義にも変化があって、単純な贅沢よりも豊かな体験に重きを置く傾向が見られます。たとえば高級レストランでの食事よりも、星空の下で薪を燃やし、その火で調理した料理を食べることを求めるような。レンジローバーは、従来のラグジュアリーと新しいラグジュアリーのどちらも味わえる、とても贅沢なクルマだと思います」

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シートにもなる、上下分割式のリアゲートが非常に気に入ったという永山さん。「このシートはアウトドアシーンにすごくマッチしますね。私も最近は友人からキャンプなどに誘われる機会が増えているのですが、週末の遊びを補完してくれるこんな機能があったら嬉しいです」(写真の車両は日本仕様とは異なります)

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伝統的なデザインを受け継ぎつつも、モダンに進化

車両構造を始め、すべてが刷新された新型レンジローバー。「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」の採用によってねじり剛性が従来モデルより50%アップし、ハンドリングや乗り心地、静粛性が向上されている。このアーキテクチャーは電動パワートレインの搭載も想定したもので、2年後にはランドローバー初のピュアEVモデルも登場予定。また当然足まわりも新設計で、四輪操舵機構も装備。最小回転半径はスタンダード・ロングホイールともに6.1mと、レンジローバー史上最小の数値を実現している。ちなみにロングホイールベースモデルには3列7人乗りが設定されているが、これは初めての仕様。その他に運転支援システムなども含め、新設計・新採用のメカニズムを潤沢に搭載しつつも、デザインはシンプルなラグジュアリーを追求。ルーフ、ウエスト、シルの特徴的な3つのラインや「クラムシェルボンネット」、「ボートテイル」と呼ばれるリアまわりなど、レンジローバーの伝統的なデザイン要素を受け継ぎつつも、凹凸や装飾を極限まで排したモダンなエクステリアを実現している。

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徹底的に素材にこだわりながら、シンプルなラグジュアリーを追求したインテリア。最新のインフォテインメントシステム「Pivi Pro」を筆頭に、静粛性を高めるアクティブノイズキャンセリング、空気清浄システムプロなどの機能も搭載し「サンクチュアリ(聖域)のような空間」を実現。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

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点灯するまで存在に気づかないリヤランプなど、細部に至るまでシンプルさとモダンさを追求したエクステリア。新導入のこの「SV」グレードでは、テールゲートにセラミックの「SVラウンデル」ロゴがにあしらわれている。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

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1970年に登場した初代レンジローバー(写真手前)と比較すると、無骨さは影を潜め、現代的で洗練されたフォルムに進化。しかし同時にレンジならではのDNAも残されていることもよくわかる。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

新型レンジローバー SV セレニティ P530 LWB

サイズ(全長×全幅×全高):5265x2005x1870㎜
排気量:4394cc
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
最高出力:530PS/5500〜6000rpm
最大トルク:750Nm/1850〜4600rpm
車両価格:¥28,580,000~(税込)
問い合わせ先/ランドローバーコール TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp

※写真の車両は日本仕様とは異なります。寸法はすべて欧州仕様値です。