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【Mr.Children特集】odol・ミゾベリョウが影響を受けた、ミスチルの歌詞の凄さとは?

  • 写真:興村憲彦
  • 文:小林祥晴
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近年勢いに乗る新世代ロックバンド・odol(オドル)のボーカル・ミゾベリョウさんは、ミスチルに影響を受けてきたミスチル・チルドレンのひとり。そんな彼にミスチルへの思いを訊いた。

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繊細かつ構築的なサウンドと、ポップで親しみやすいメロディーで人気を博しているodol(オドル)。近年はJR東海や森永乳業のCMソングを手がけるなど、いま勢いに乗るバンドだ。そんなodolのフロントマンであるミゾベリョウさんは、ミスター・チルドレンの大ファン。初めてその音楽に触れたのは2000年代なかば、彼が小学4年生のときだった。

「自宅で『Sign』が入っているMDを見つけたんです。母がシングルを借りてきて入れたんだと思います。あんなふうに駆け上がっていくメロディーは聴いたことがなかったので、電流が流れるような衝撃を受けました」

ミゾベさんがプロの音楽家を目指すきっかけを与えてくれたのも、ミスター・チルドレンだった。

「小学6年生になって、学芸会で『Sign』を歌ったんです。それで褒められたからバンドをやりたいと思い、親にお願いしてアコギを買ってもらいました。あれが音楽の道を志す原体験でした」

 ミゾベさんにとって、ミスター・チルドレンは「無意識のうちに自分の基準になっている」というくらい大きな存在。では、プロとしての視点も加わるようになったいま、ミスター・チルドレンの魅力はどこにあるとミゾベさんは捉えているのだろうか。

「一番影響を受けたのは、メロディに対する歌詞の乗せ方。ミスチルっぽいと言われる、洋楽的な言葉の詰め込みです。僕が歌詞を書くときはメロディーと言葉のイントネーションが合っているかを気にしますが、ミスチルはそこもうまい。ミスチルは基本的には合っているんですが、曲のフックとなる部分であえて合わさなかったりする。そういう技はすごいです」

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メジャーバンドでありながら常にオルタナティブな曲をつくる、そんな精神性に惹かれる

odolの作詞を手がけるミゾベさんが、歌詞を書く上で大切にしているのは「リスナーに映像を見せる」こと。たとえば、単に「せつない」と歌ってもリスナーの想像力は刺激できない。いかに言葉と音楽のバランスでリスナーの想像力を膨らませ、感情移入させられるかが重要だ。そう考えるミゾベさんは、「新曲が出るたびにやられたなと思う」ほど、桜井和寿が書く歌詞は技術的に高度だと話す。ミゾベさんがその一例として挙げるのは、「こんなふうにひどく蒸し暑い日」。シングル『Sign』のカップリングとして04年にリリースされた曲だ。ミゾベさんいわく、視点の引きと寄りのバランス、全体の構成、言葉と演奏とのリンクが完璧で、「全部入りだな」とうならされる曲である。

「まずAメロの『映画館に逃げ込んで卑猥な映画見た』というフレーズで、これがセクシャルな曲だと定義しています。続いて部屋に帰ってきた自分たちを引きの視点で描写した歌詞に移りますが、Bメロに入ると『流れ出したモノでシーツが濡れてしまって』と具体的な描写を入れ込んでグッと視点を対象に寄せる。サビ前の『君はゴミでも捨てるように洗濯機に入れた』のところは演奏のキメがあるので、『入れる』という動作と音がリンクするような躍動感があります。そしてサビでは再び視点が引きに切り替わる。と同時に、実はBメロまでの話が過去の思い出だとわかるようになっていて、時間も切り替わるんです。ミスチルの歌詞には、そういう小技や大技が各所にちりばめられています。リスナーが感情移入しやすいのもそれが理由でしょうね」

ミスター・チルドレンの曲にしっかりと耳を傾ければ、誰もが驚かされるような実験的なアイデアと、世におもねらない反骨心が宿っているのがわかる。だからこそミゾベさんは、ミスター・チルドレンの魅力とは「常にオルタナティブであろうとする精神性」だと定義する。

「ミスチルの曲には『これってアリなの?』と思わせるようなコード進行や言葉の乗せ方が多い。オルタナティブな精神性をもちつつ、セールスでも大きな結果を出すというのは、odolも目指すところです。影響を受けたアーティストという意味で、ミュージシャンには自分にとって『神』みたいな存在がひとりはいると思いますが、ミスチルは僕にとってそれにあたる存在ですね」

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ミゾべリョウが選ぶ Best 10 Songs

「NOT FOUND」
「Sign」
「渇いたkiss」
「UFO」
「口笛」
「こんな風にひどく蒸し暑い日」
「深海」
「クラスメイト」
「君が好き」
「1999年、夏、沖縄」

「これはあくまでいまの気分で選んだ10曲。また別の機会に選んだら全然違うセレクトかもしれない」と前置きしてミゾベさんが選んでくれたのは、彼が小学生の時に初めて聴いた2000年代の曲が中心。「音楽の素晴らしいところはそれを聴いていた当時の感情を呼び起こすこと。この年代の曲はそういう意味で自分にとって特別です」

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シングル「Sign」と、カップリングとして収録された「こんな風にひどく蒸し暑い日」
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「君が好き」

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シングル「NOT FOUND」と、カップリングとして収録された「1999年、夏、沖縄」

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ミゾベリョウ●odolボーカル。福岡県生まれ。中学時代からの同級生である森山公稀らと結成したバンド、odolのボーカル兼ギターとして2015年にデビュー。これまでに3枚のEP、4枚のアルバムをリリースしている。radiko、森永乳業、JR東海など、近年タイアップ曲も数多く手がけている。

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