大失敗しないために、 投資をはじめる前に「考えたいこと」3選

  • 文:川畑明美
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考えることができるのが人間の偉大さだ。弱い部分をたくさん持っている人間が成功するには「考える」ことが大事なのだ。tdub303-istock

「人間は、考える葦である」と言ったのは科学者・哲学者のパスカルだ。葦とは、水辺に群生するススキに似た植物で弱々しいものの代表とされている。人間は、弱い面もたくさん持っているが「考える」という働きがあるから、偉大だということだ。投資をするには「考える」という作業が付きまとう。ここを、すっ飛ばして「お勧めを教えてください」とか聞かれることが多いのだが、お勧めを教えたからと言って、投資で必ず儲かるとはいえない。それは、考えないからだ。


考えないというと、少し語弊があるかもしれない。「将来性を考える」と言った方が良いかもしれない。いくら良い銘柄を教えて貰ったとしても、その銘柄について新たな情報によっては、お勧め銘柄でなくなる可能性も秘めているのだ。「お勧め」とは、現時点でのお勧めでその後の情報、つまり政治や経済、企業の業績や景気などによって変化してしまうからだ。


お勧め銘柄といっても、新しい情報・事象によって変化していくものだ。考えるのを止めて、答えだけを教えて貰っても上手くいかない。答えの「過程」の方が重要なこともあるからだ。そして、さらに言うと答えだけ教えてもらって始めても「売却」のタイミングをはかるのは、購入するよりもずっと難しい。投資をはじめる前に考えたい3つのことについて解説しよう。

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投資を始める前に考えるべきことその1 
→流動性を考える

投資をはじめるにあたって、大切なことは「何のために投資をするのか?」「投資して増やしたお金の使い道は何か?」と、いうことだ。預貯金と投資の違いを考えてみて欲しい。預貯金は、大きく増えることはないが、すぐに使うことができ、自由に引き出せることもできる。


一方、投資に振り向けた資金は、中長期的な目線で増やすためのお金となる。すなわち、幼い子どもの教育資金や老後資産など今すぐ必要にならなくても将来のために増やしていきたい資金となる。そのようなお金は、株式や投資信託などを利用した「投資」の形で時間をかけて増やしていくといい。


また、この「投資」の形でお金を持っていると、お金を引き出して使うためには一定の手順を踏む必要がある。投資した資産を売却し、現金に換えるのに時間がかかるので預貯金のようにお金を使うことができない。このようなことを流動性が低いという。預金のように、すぐに使えるわけではないことも考慮して欲しい。

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投資を始める前に考えるべきことその2
→マイナスになった時のことを想定する

投資を始めたばかりで、マイナスになってしまうと怖くなって積立で購入している投資信託の買付をストップしてしまったり、マイナスが気になり見ているのも嫌で売却をしてしまったりすると投資は失敗に終わってしまう。ところが「お金を使う目的」が10年以上先に使うお金と明確になっていれば、その途中でマイナスになるのは逆にチャンスだとも捉えられる。マイナスということは、その資産が安くなっているということだ。長い投資期間に安く購入できるチャンスが回ってきたとも考えられるのだ。「マイナス=損した」と思って誤った行動をしてしまうのが問題なのだ。


私達の脳は「損」に対するストレスが高いので、値動きの違う資産に分散することも大事なことだ。資産運用に関する有名な格言に「卵を1つのかごに盛るな」という言葉がある。これは、「卵を1つのかごに入れていた場合、かごを落としてしまうとすべての卵が割れるが、複数のかごに分けておけば一部の卵が割れるだけで済む」という意味だ。


投資にあてはめると、「1種類の資産・銘柄にだけ投資するのではなく、さまざまな資産・銘柄に分散投資しておけば、いくつかが値下がりしても他のものでカバーされるため、全体としてはリスクが低減される」ということになる。

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投資を始める前に考えるべきことその2
→複利の効果を考える

投資信託や株を保有していると分配金や配当金が支払われることもある。これを再び投資に回すと「複利の効果」でお金はさらに増えていく。複利効果は20世紀最大の物理学者とも言われるアインシュタインが「人類最大の発明」というほどのものなのだ。


複利とは、元本だけでなく利子が利子を生む仕組みだ。よく借金は雪だるま式に増えるというが、それが複利の効果なのだ。お金を借りる方ばかりを複利で増やすのではなく、お金を増やす方に複利を利用して欲しい。雪だるま式にお金が増えれば、とてもワクワクするだろう。


さらに長期間、投資を続けることで収益も安定してくる。長く運用すればするほど、マイナスになりにくくなるのだ。運用成績の悪い時期と良い時期がならされて、一年あたりの平均的な収益率は、安定する傾向があるからだ。なので資産を分散して10年20年と投資を続けることが大事になってくる。さらに複利効果が得られることでリターンが高くなるのだ。

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長期投資×分散投資には3つの効果がある

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リスクを回避し運用の効率性を高めるためにも長期×分散投資は必須だ。そしてその効果は3つもあるのだ。

いままで紹介してきた「考え」をまとめると、長期×分散投資には、次の3つの効果があることがわかる。


1)短期保有に比べて値動きの振れ幅が小さくなり収益が安定する。

2)複利効果が期待できる

3)失敗を防げる

「失敗を防げる」効果とは、時間の分散と資産の分散をすることで可能になる。長期投資をしたからといって必ずしも成功するとは限らない。どの資産や銘柄が急落するのか、わからないのだから、資産や銘柄を分散して長期間投資することで失敗を妨げる効果が得られる。


また、「安値で買って高値で売る」ことはとても難しい。株式投資の格言に次のようなものがある。“「もう」は「まだ」なり、「まだ」は「もう」なり”という格言だ。もう底値だろうと思って買ったらまだ下がる、反対にまだ下がるだろうと買い控えていたら、もう上がり始めていた、といったことがよくある例えだ。相場の高値安値は、後になってみないと分からない。運用計画を考える時は、長期投資の3つの効果を考えて収益性だけでなく、安全性と換金性も考慮して資産を組み合わせて計画を立てることが大事なのだ。

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人間は考える葦なのだから、AIやロボットに任せきりにしない

「AIに任せた投資は、どう思いますか?」と、ときどき聞かれることがある。そもそもAIとは何なのか、考えたことがあるだろうか。 AIは大きく分けると2つの種類がある。1つはコンピュータによる新しい知能を作るという考え方、もうひとつは、人間がやっていることをAIに代行させるというものだ。


投資で活用されているのは、後者の人間のやっていることをAIに代行させることだ。実は、投資の世界には、すでに自動売買やロボット運用は広く浸透しているのだ。FXのシステムトレードなど、聞いたことはないだろうか。 最初に一定の条件を設定しておけば後は、自動的に小刻みに売買を繰り返してくれる仕組みだ。


AIが自分の代わりにポートフォリオを考えてくれるロボアドバイザーとは、AIに自分の年齢や収入、資産残高、リスク容認度に応じた運用を任せることになる。リスク容認度は、ご自身で入れるため高リターンを狙ってしまい実際のリスク容認度と違ってしまうこともある。


AIが運用するといっても基本的には長期投資での運用だから途中の成績でマイナスになることもある。そもそも「投資とはなにか?」を理解できていないとマイナスになったところで損を確定して失敗してしまうケースも考えられる。結局は、最低限の資産運用の考え方や方法を学ばないと、ロボアドバイザーでも失敗してしまうのだ。人間は考える葦なのだから、自分で考えることを放棄しては、いけない。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/