エスパス ルイ・ヴィトン東京で、緑豊かな立体作品に出合う

  • 写真&文:中島良平

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本展は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンが所蔵する選りすぐりのコレクションを世界的に紹介する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの枠組みの中で企画された。会期中には季節の移ろいとともに植物も育ち、展示風景も変化する。

ルイ・ヴィトン表参道ビルの7階に上がると、自然光の降り注ぐ空間に、豊かな緑が目に飛び込んでくる。アフリカ系アメリカ人アーティスト、ラシード・ジョンソンのインスタレーション作品『プラトー』。フランスの哲学者であるジル・ドゥルーズと精神科医のフェリックス・ガタリの共著『千のプラトー 資本主義と分裂症』に描写された「リゾーム」の概念にインスパイアされた作品だ。

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ラシード・ジョンソン●1977年、シカゴ生まれ。長編映画『Native Son』(2019)や2021年にメトロポリタン・オペラで発表したモザイク壁画など、多様なメディアで制作を続ける。

リゾームが意味するのは、地下茎。さまざまな思想や事物は、中心もヒエラルキーもなく張り巡らされた根っこで結ばれ、影響を与え合っている。そして、人間中心主義の視点を拒み、あらゆる要素が有機的につながっていると、この書籍は伝えている。

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グリッドの構造体にさまざまな要素が配置され、それぞれが異種混交する。知性にも自然にもヒエラルキーはなく、人間中心ではない世界のあり方を感じさせる。

世界の自然にも、人間の知性にも、テクノロジーにも優劣はなく、あらゆる要素が結びついて人は形成されていると考えるジョンソンは、自身の背景にちなんだ要素をグリッド状の構造体に並べ、上下関係を見せることも影響関係を示唆することもなく、鑑賞者が自由に自らを投影できるプラットフォームに仕上げた。

この作品は何度も味わってほしい。時間帯によっても、気分によっても、天候によってもその印象は変化するはずだから。

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アフリカ産シアバターを用いたオブジェ。

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2019年に作家自身が映画化を手がけたリチャード・ライト作の小説『Native Son』。

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無線が趣味だった父親の想い出への言及を成すアマチュア無線機器。

「RASHID JOHNSON-PLATEAUS」展

開催期間:4/27~9/25
開催場所:エスパス ルイ・ヴィトン東京
TEL:0120-00-1854
開催時間:11時~19時
休館日はルイ・ヴィトン 表参道店に準じます
料金:無料
※事前の来館予約をお薦めします