地下駐車場に佇む8席しかない期間限定の短編映画館。「Sony Park Mini」にて3日から開催。

  • 文:Pen編集部
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銀座のスクランブル交差点・数寄屋橋交差点のほぼ真下、西銀座駐車場のB1フロアに佇む「Sony Park Mini」をご存じだろうか。2022年3月23日にローンチし、約2週間の周期で気鋭なアーティストによるユニークなプログラムが実施されている。

Sony Park Miniは誰もが気軽に立ち寄り参加できる自由なスポットとなっている。ピアノを1台置き誰もが演奏・録音できるスタジオ空間や、120本のLED蛍光灯を用いて光に照らされるものにフォーカスしたインスタレーションなど、参加者とともに楽しむインタラクティブなプログラムを展開している(過去のプログラムはこちら)。

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Sony Park Mini第一弾プログラム「Ayatake Ezaki presents None Session」 アーティスト:江﨑文武(音楽家)。

そして、次なるプログラムが5月3日(火)より始まる。それが、『GINZAZA(ギンザザ)』だ。同プログラムでは、わずか8席の「短編映画の遊び場」として気軽に短編映画に触れられる場が提供される。

第1回目の開催となる今回は、「GINZAZA Edition 1:短編映画の可能性 The Possibilities of Short Films」と題し、異なるテーマの短編映画10作品が14日間にわたって上映される。キュレーターを務めるのは、監督作がロカルノ国際映画祭等の映画祭で紹介されたほか、フランスの映画批評誌カイエ・デュ・シネマでもピックアップされた映画監督の空音央氏と、MoMAをはじめとするNYの各劇場で映画キュレ―ターとして活躍するほか、アカデミー賞で濱口竜介監督の通訳を担当した増渕愛子氏の二人。

上映作品ラインナップは以下のようになっている(邦題五十音順、上映スケジュールはこちら)。
※全作品字幕対応

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ゾーナ(ZONA)』(監督/マサミ・カワイ 2021年 アメリカ映画)
上映時間:15分
干ばつが悪化し、給水が遮断された近未来のロサンゼルス。東京からの移民である老人女性は一人で自らの生活を凌ぎながら、足の悪い隣人にもなんとか水を分けられないかと奮闘する。最小限の台詞とドラマチックな音楽で、現実と隣り合わせのSFを見事に描き切ったのは、ロサンゼルス生まれのマサミ・カワイ。

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ティー(T)』(監督/キーシャ・レイ・ウィザースプーン 2019年 アメリカ映画)
上映時間:14分
自作の衣装を身にまとって死者を弔う毎年恒例の祭り「Tボール」の準備をする3人の様子を、カメラクルーが追う。ジャマイカ系アメリカ人の監督、キーシャ・ラエ・ウィザースプーンが、生と死とアート、それらのあいだを行き交うエネルギーを力強く描写した同作は、2020年の『ベルリン国際映画祭』短編部門で金熊賞を受賞した。

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透明な私(Transparent, I am.)』(監督/村岡由梨 2020年 日本映画)
上映時間:11分
映像作家 / 詩人の村岡由梨による、コロナ禍のセルフポートレート。まともがわからない日常の中で混乱・錯乱しながらも、雲間に差す微かな光を意地でも見逃さんとする切実な意志が胸に迫る。なお、劇中で読み上げられるのは村岡による同名詩。ウェブサイト「浜風文庫」で全文を読む事が出来る。

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バズキル(Buzzkill)』(監督/キャティー・ミトラーニ 2020年 アメリカ映画)
上映時間:11分
南フロリダの夏。強い日差しの下で、十代の残酷さが露わになる。身勝手なヒエラルキーを察知しながらも、なんとか仲間に馴染もうと果敢にプールに飛び込んだ少女は、永遠のように長い一日を体験する事に。タイトルの「Buzzkill」は「楽しい事柄を台無しにする人」といった意味。
R13+:13歳未満の方への鑑賞は推奨しておりません。

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ハッピーヴァリー(Happy Valley)』(監督/サイモン・リュー 2020年 香港映画)
上映時間:13分
アナログフィルムでの映画制作にこだわり続け、 その可能性を広げてきたニューヨークの映像作家サイモン・リュー。遊園地の空中ブランコから道に捨てられたペットボトルまで、香港の街を隅々まで映した同作は、個人の記憶の集積でありながら、歴史や政治とも必然的に響き合っている。16ミリの映像詩を、あなたはどう捉える?

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フィリピニャーナ(Filipiñana)』(監督/ラファエル・マヌエル 2020年 フィリピン、イギリス映画)
上映時間:24分
豪華絢爛なゴルフ場。新人スタッフのイザベルは「ルールを守れ」と叱られ、厳しい監視下に置かれながらも、やがて職場での抜け道を探っていく。『ベルリン国際映画祭』短編部門で銀熊賞を受賞するなど、各国の賞を総なめにしてきた話題作。ロンドン・アムステルダム・マニラを拠点に活動するフィリピン人監督が、土地の湿度までをも見事に映し出す。

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フレックス(FLEX)』(監督/ベイビーベイビー 2020年 スウェーデン映画)
上映時間:4分
「自分は本当に美しいのか?」筋肉を鍛えながら自問自答するボディビルダーのシュールなポートレート。デイヴィッド・ストリンドバーグとジョセフィン・マルメンによる監督デュオ・ベイビーベイビーは「とにかく見た事がないものをつくりたい」と考え同作を制作したのだとか。16ミリフィルムとCGを駆使して撮影された異色作。

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見えない川(Giòng Sông Không Nhìn Thấy / The Unseen River)』(監督/ファム・ノック・ラン 2020年 ラオス、ベトナム映画)
上映時間:23分
メコン川沿いで交差する二つのラブストーリー。30年ぶりに再会した元恋人たちと、不眠症で悩む若いカップルが川の流れに身を任せ、治癒されていく。元建築家の監督によるブルータルな建築物の切り取り方にも注目。同作は、アノーチャ・スウィチャーゴーンポンら5 作家が参加したオムニバス映画『メコン2030』の一部としても上映された。

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目を覚まし、備えろ(Hãy Tỉnh Thức Và Sẵn Sàng / Stay Awake, Be Ready)』(監督/ファム・ティエン・アン 2019年 ベトナム映画)
上映時間:14分
バイクが行き交うベトナムの夜を、なめらかに移動する13分ワンショットの長回しで撮影した作品。何の変哲もない街角で起こる「ありとあらゆる事」をじっと見つめるのは、透明人間か幽霊か、それとも――?映像に合わせて耳元で心地よく溶ける音響も要チェック。

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ヨルーガ(Yoruga)』(監督/フェデリコ・トラド・トボン 2021年 アメリカ、コロンビア映画)
上映時間:6分
孤独な老人は一人、地球最後の亀・ヨルーガに会いに行く。しかし、面会時間はわずか1 分。限られた時間の中で男が伝えたかった事とは?コロンビア人監督フェデリコ・トラド・トボンが、独特なブラックユーモアと共に、くすりと笑えるファンタジーの世界を描く。

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GINZAZAの開催に先駆け、映画「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー賞を受賞したことも記憶に新しく、2021年には3つの短編からなるオムニバス映画「偶然と想像」でベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した濱口竜介監督と、GINZAZAの企画者・キュレーターである空氏・増渕氏の3人が、それぞれの視点で、ラインナップ10本の作品を1本ずつ掘り下げていくスペシャル・トーク映像を、GINZAZAのウェブサイトおよびYouTubeにて公開中。

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会場では、フリーマガジン「ZineZaZa」の配布や、チケット購入者にはGINZAZAオリジナルステッカーがプレゼントされるほか、上映作品のチケットを全て集めるとGINZAZAオリジナルのピンバッジが贈られる。さらに、Sony Park Mini内にある西銀座駐車場コーヒーでは、限定メニューの販売など映画を楽しむ仕掛けも充実している。

ゴールデンウィークは、Sony Park Miniで短編映画の可能性を感じてみてはいかがだろうか。

「GINZAZA Edition 1:短編映画の可能性 The Possibilities of Short Films」

開催期間:2022年5月3日(火)~ 5月31日(火)
開催時間:   
月曜日~金曜日(祝日を含む):8:30~19:00
土曜日、日曜日:10:30~19:00
開催場所:Sony Park Mini
東京都中央区銀座5丁目3番1号地先 西銀座駐車場地下1階
料金(1作品):¥100
http://ginzazafilms.com/(公式サイト)