ニセコの宿「坐忘林」を手がけた、ショウヤ・グリッグの新作「シグチ」がオープン

  • 写真:佐々木育弥 文:渡辺芳浩

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会津から移築した150年前の3棟の古民家が並ぶ。2018年にオープンしているギャラリー・レストラン「そもざ」とあわせ、建物が自然の中に溶け込むかのような様子がうかがえる。


2015年、北海道ニセコのリゾート地区・花園に、ホテルや旅館と一線を画す宿泊施設として開業した「坐忘林」。北海道の大自然に囲まれた場所は隔絶した世界ともいえるが、あえてそんな場所に着目したのがクリエイティブ・ディレクターのショウヤ・グリッグ氏。冬には白銀に、夏には深緑に身を委ねる中で、"静座して現世を忘れ、雑念を取り除く"というコンセプトは、唯一無二の非日常だ。
そして2022年5月、坐忘林の隣にショウヤ・グリッグ氏が手がけた宿泊施設「シグチ」がオープンする。コンセプトは“ギャラリーステイ”。山奥にひっそりと佇む3棟の古民家には、ショウヤ・グリッグ氏自身のアート作品の他、工芸品や西洋アンティークが配置されている。
「シグチ」とは建築用語の「仕口」で、材木の接合部分のこと。最終的には隠れて見えなくなるが、材木をつなぎ、まとめる役割に着目したグリッグ氏が、施設名に採用した。

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ショウヤ・グリッグ

イギリス、ヨークシャー生まれ。10代のころに家族でオーストラリアに移住。20代で自分探しの旅として北海道を自転車でめぐる。以来、北海道をベースに、広告制作ディレクターやカメラマンをしながら、ホテルやレストランのリノベーションを手がける。その後、「坐忘林」のクリエイティブ・ディレクターに。「そもざ」「シグチ」はトリロジーの第2章、さらなる展望が期待される。

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古民家A、B、Cという3つの建物があり、古民家Aに「地(CHI)」「水(SUI)」、古民家Cに「風(FU)」「空(KU)」という客室と、古民家Bは1棟貸しという贅沢な宿泊体験を提供するシグチ。広さやレイアウトがすべて異なった個性的な客室は、宿泊人数や用途によってさまざまな利用方法に対応している。たとえば古民家Cの2つの客室それぞれが5人の宿泊が可能で、地下1階・地上2階建てに3ベッドルームがある。

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古民家Cにある2つの客室のひとつ。2階は吹き抜けになっており、1階に茶室風の和室が設けられている。
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2階の和室。床柱や土壁、違い棚など茶室的なしつらえの中に、グリッグ氏の写真作品を配した襖がモダンな要素になっている。
_DSC7309のコピー.jpgメインベッドルームのある地下1階も採光が十分にとれる工夫がなされ、目覚めてすぐにこの景色が目に入る。

古民家AとCの2つの客室はそれぞれの入口があり、いずれの客室も2組以上のカップルやグループで訪れても、複数のベッドルームがありプライベートも確保できる。そして、なんといっても全ての客室に源泉掛け流し温泉の風呂がつく。古民家BとCにはそれぞれに2つ風呂があり別々の入浴も可能だ。また、北海道山間部はまだ肌寒さが残るが、シグチの全室は温泉を利用した床暖房を完備。暖房は薪ストーブを中心としたシンプルさは、寒冷地での快適さを熟知したおもてなしを感じさせる。

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古民家Cにある2つの客室のひとつ。リビングルームからはニセコの大自然を望む広い窓が設けられ、景色はさながら一枚の絵。

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日本家屋の趣を残しながら、独自の趣向を凝らした和室が用意されている。オブジェに見えるのが仕口。

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風呂は全室に完備で、24時間自由に利用することができる。小川のせせらぎと鳥のさえずりを聞きながらのひととき。この他に内風呂もあり。

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古民家Bは1棟貸しで、シグチで最大の広さを誇る客室は8名までの宿泊が可能。3フロアに3ベッドルームで、もちろん源泉掛け流し温泉の内風呂と露天風呂にいつでも入浴できる。

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古民家Bのメインのリビングルームはダイニングとつながる広い空間に。古民家の躯体を残し、自在のレイアウトを生み出すことで確保した広さ。

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リビング・ダイニングには、7〜8人は座れるソファと、6人ほどが掛けられるテーブルが置かれ、大人数の利用が楽しそう。

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2つの客室からなる古民家Aには、メインの入口に壺を配置しアート空間としている。

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ここから左右2つの客室に分かれる。 客室はともに2フロア。

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古民家Aは2ベッドルームを備える。カップル2組で訪れても、ゆるやかにプライベートをキープできる。

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幽玄な雰囲気の2階の和室には天窓が設けられ、開閉が自由。照明だけでなく自然光も好みの明るさにして使用できる。

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ソファから眺めるニセコの風景は、季節を問わず自然のなかに抱かれ日常を忘れてもらうというコンセプトを体感させる。

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2階には寝室とトイレが備えられているので、2組のカップルでもプライベートが保たれる工夫が随所にみられる。

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2018年オープンの「そもざ」で提供される食事は、シェフ・小関達弥による北海道産食材を使った独創的なメニューが続く。

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⿅⾁、菊芋、ホタテ、⼭葡萄など⼭ 海の⾷材を使った前菜ひとつとって も、シェフのこだわりが発揮される。

古民家Aの建物内の地下1階にはグリッグ氏のキュレーションによる国内外のアート作品を展示するスペースと、自ら作品制作を行うアトリエの空間もある。ギャラリーはシグチの宿泊客に公開される。

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グリッグ氏の古い木材とコンクリートによる空間演出は、自然光がたっぷり入りこむ。右側は小上がりになっている。

『シグチ』

住所:北海道虻田郡倶知安町花園78-5
TEL:0136-55-5235
全5室
料金:
古民家A 1泊2食付き ¥70,400〜/ 1名
古民家B 1泊2食付き ¥88,000〜/ 1名
古民家C 1泊2食付き ¥105,600〜/ 1名
※すべて税、サービス料込み、2名1室の料金。すべての客室にキッチン(調理器具、冷蔵庫、食洗器、IHコンロ、コーヒーメーカー、湯沸かしポット、食器)風呂、を完備。
www.shiguchi.com