エンジンはまだまだおもしろい、と見せてつけてくれたアストンマーティンDBX707のド迫力

  • 文:小川フミオ
  • 写真提供:Aston Martin Lagonda
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英国のスポーツカーメーカー、アストンマーティンがなんと707馬力という超高性能のSUV「DBX707」を作りあげた。見た目は流麗で、スポーティでありながらエレガントでもある。この新型車に、イタリア・サルディニア島で試乗した。

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4ドアのSUVでありながら、スポーティさを強く感じさせるスタイリング

アストンマーティンは、日本でポルシェとフェラーリに匹敵する知名度のあるスポーツカーだ。もちろん、ジェイムズ・ボンドの映画の貢献が大きいのだが、プロダクトは名前負けしていない。2022年2月に発表されたDBX707は、スポーツカーなみの楽しさを味わわせてくれるモデルなのだ。

アストンマーティンが「DBX」なる同社初のSUVを発表したのは2019年。日本には20年に登場した。4リッターV型8気筒エンジンに全輪駆動システムの組合せで、全長5メートル超、全高1.6メートル超のボディサイズから想像されるより、はるかにスポーツカー的なドライブフィールを特徴としている。

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サルディニア島は場所によって天気が大きく異なり、山の上は雪が降っていた

コロナ禍でしばらく遠ざかっていた海外だが、私は今回、ひさしぶりにサルディニア島を訪れて、日本とは違う環境でのドライブを楽しめた。高速道路は空いているが、道幅はそれほど広くなく、とりわけ追い越し用の車線を飛ばすというときはやや緊張する。

いっぽうで、標高こそ高くはないものの、山岳地帯が広がる土地なので、有名なリゾート地コスタスメラルダを出発して少し走るだけで、ゆるやかなカーブが連続する山岳路に入ることが出来る。カーブが連続する道は、このDBX707の開発陣が”ぜひそこで乗ってもらいたい”と考えているコースのようだ。

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今回からドライブモードセレクターは円筒のロータリー式になった

DBX707は、従来のモデルと共用の4リッターV型8気筒を搭載。ただし、最高出力は405kWから520kW(707ps)に、最大トルクは700Nmから900Nmに。それに9段のツインクラッチ式オートマチック変速機を組み合わせる。

エアサスペンションをそなえていて、ドライブモードを切り替えると、明確にキャラクターが変化する。市街地やハイウェイでは「GT」モードがいいし、山岳路では「スポーツ」にすると、オートマチック変速機が上のほうのエンジン回転域を使うようなプログラムになり、かつ足まわりが締まり、かつステアリングホイールの操舵感がクイックになる。

スポーツの上に「スポーツプラス」モードもあり、わずかなアクセルペダルの踏みこみに敏感に反応してくれるので、これを好むスポーツカーファンもいそうだ。ただし、私にとって、初めて走る道ではせいぜい「スポーツ」、快適性を重視したいときは「GT」がよかった。パワー感もGTで充分堪能できる。

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ステアリングレシオは14.4でけっこうクイックで操りやすい

インテリアも、乗りこんだとたんに”ヤル気”をそそる。基本的には従来のDBX V8と同様。素材感といい、色づかいといい、ダッシュボードやシートの形状といい、まるでスポーツカー。

アストンマーティンは、DB11やDBSと同様、内装にもじつにいい造型センスを発揮してくれている。インフォテイメントシステムを含めて、現代の技術をもれなく搭載しながら、どことなくクラシカルな雰囲気でうまくくるんでいる。

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インフォテイメントシステムもiPhone とミラーリングが出来たりして扱いやすい

シートの形状はサイドサポートが出ていて、しっかり乗員を支えてくれる。スポーツシートの常として、クッションは厚くないものの、長距離(今回は朝10時から18時までランチタイムいがいは乗りっぱなし)乗っていてもどこも痛くならない。よく出来ている。

最高出力は前記のとおり707ps(520kW)。すごい数値だ。(メルセデス)AMGのCEOを務めていたトビアス・ムアーズ氏がアストンマーティンラゴンダ社(正式社名)のCEOに就いたのが2020年8月。この新CEOの肝煎りで開発されたのがDBX707なのだと、サルディニア島で英国本社のスタッフに教えられた。

かつて、就任時のオンラインインタビューにおいて、ムアーズCEOは、当時のラインナップを評価。なかでも、「DBXのシャシーのポテンシャルはすごく高い」と語ってくれたのが、私の印象に残っていた。その発言どおりのプロダクトを実現したわけだ。

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ホイールベースは3060ミリもあり居住性も高い

静止から時速60マイル(約97キロ)までの所要時間はわずか3.1秒。ポルシェ911と比較すると、GTSを含めてあらゆるモデルより速い。911ターボには負けるが、それぐらい速い。しかもローンチコントロールといって、スタート時にロケットのような加速を味わえる機構も搭載された。

コーナリングは低重心ボディの恩恵で、おもしろいようにクルクルと小さなカーブも曲がれる。下りで速度が出ていると、さすがに2トンを超える車体の重量を感じることもあるが、ものすごく強力なカーボンセラミック製ブレーキのおかげで、じつにナチュラルに速度のコントロールが出来る。

速度を上げるときは大トルクゆえ一瞬だし、クルマとの一体感がしっかりある。余裕あるサイズでありながら、ワインディングロードが楽しい。

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22インチの大径ホイールに強力なセラミックブレーキをそなえる

やりすぎか、と一瞬思えるが、全体におとなっぽい。ゆっくり走ればエアサスペンションは路面の凹凸をていねいに吸収し、乗員の姿勢はつねにフラット。かつ純正オーディオ(とくに外部のブランド名は見当たらなかった)の質も高く、広い後席で音楽を聴きながらくつろぐのもいい気分だ。

そもそもDBXで、私は四季を通じて、日本のいろいろな場所を走ってきた。なかには2メートルぐらい周囲に雪が積もった新潟の道もある。つねに安心で、つねに気持ちよく、つねに速い。DBXは好印象のモデルなのだ。そこにもってきて、707はいいところを伸ばし、さらにスペシャル感をどんっと上乗せしている。

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エイペックスグレイというライトグレイの塗色を持つボディ

ハイブリッドのハイパー(超)スポーツカーをまもなく発表する予定のアストンマーティンだが、内燃機関もまだまだポテンシャルが高いのだと、意地(といっていいか自信はないけど)を見せてつけてくれたモデル。それがDBX707なのだ。


Aston Martin DBX707
全長×全幅×全高 5039x2050x1680mm
3982ccV型8気筒 全輪駆動
最高出力520kW@4500rpm
最大トルク900Nm@6000rpm
価格3119万円