予約の取れない人気店になる前に訪れておきたい、赤坂の“隠れ家”江戸前鮨店「すし いわお」

  • 文:西田嘉孝
Share:
キャビグロ_2.JPG
炭火で焼き上げた「紅瞳」にたっぷりのキャビアをオン。赤シャリに使われる酒粕とキャビアの塩分が口の中で一体となり、マヨネーズを思わせる不思議な味わいに。

1508年に創建され、18世紀初めにつくられた銅造地蔵菩薩坐像が港区の有形民俗文化財にも指定される浄土寺。赤坂駅から徒歩5分、古くから地元の人々に愛されてきたこの寺の境内で、4月1日にひっそりとオープンした『すし いわお』。

目印は境内の路地から漏れる行灯の光のみ。以前も鮨屋だったという一軒家を改装した店は、これぞ大人の隠れ家といったロケーション。屋号も書かれていない暖簾をくぐると、店主の岡部巌さんと女将がにこやかに迎えてくれる。

「ヒルトン東京」や「フォーシーズンズホテル香港」などの5つ星ホテルや、都内のミシュラン1つ星鮨店「銀座いわ」で料理長を務めた店主が、満を持して開いた自らの店。豊洲はもちろん、全国にいる旧知の漁師から仕入れた最高の素材を使った鮨やつまみを、「通いやすい価格で提供したい」と岡部さんは話す。

一人ひとりのスペースが広く取られたカウンターは8席。つけ場を囲んでL字型に配置されているため、店主の仕事ぶりをそれぞれの席から見て楽しむこともできる。昼のメニューは散らさないちらし寿司の「ちらしらず」(6000円)、そして夜は握りのコース(22000円)のみ。

江戸前の伝統に独自のエッセンスをプラスした口福な逸品たちを、「黒龍 しずく」などの日本酒から焼酎やワイン、ビールは「ROCCO Tokyo WHITE」や大阪「箕面ビール」のピルスナー、そしてジャパニーズウイスキーまで、店主が自ら厳選した酒とともに味わえる。

---fadeinPager---

丁寧な技と粋な完成が冴えるちょっと贅沢な江戸前鮨

チラシラズ_1.JPG
蓋を開くと宝石箱のように詰められた16品のネタがぎっしり。ランチのみ1日16食限定の「ちらしらず」。

シャリは粒の大きい宮城産の「ササニシキ」を“アルデンテ”に炊き上げて使用。長期熟成で旨味が豊富な赤酢を合わせた“赤シャリ”と優しい味わいの“ロゼシャリ”を用意し、マグロなどの脂がのったネタには赤シャリを、淡白な白身にはロゼシャリをといった具合に使い分ける。

素材の美味しさを最大限に引き出す塩のあて方や寝かし方、魚の状態を見極めた丁寧な仕込み。そうした匠の技が詰まった宝石箱のような16食限定の「ちらしらず」もさることながら、やはりこの店の真骨頂は夜のコースだろう。

コハダや季節物の春小鯛、片面を1時間だけ昆布にのせたサワラの昆布風味に、漬けのマグロ、トロタクのおはぎ、サバの棒寿司やトリ貝、そして低温でゆっくりと火を入れた車海老…。さらには、対馬のブランドのどぐろ「紅瞳」を炭火で炙り、無添加・長期熟成のN25キャビアをたっぷりのせた“キャビグロ”や、「ウニ博士」を自称する店主が厳選した北海道浜中町産のウニを、アワビのキモを通常の3倍ほど使ったソースでいただく一品など、その時々の旬に合わせた約20品の鮨とつまみが堪能できる。

「なるべく他と同じことはやりたくないから」と玉子焼きは出さず、代わりに卵黄と葛を使って火を入れずにつくる絶品の自家製プリンをデザートして提供する。仕事は職人肌で頑固だが、とにかく気さくで話し好き。そんな店主の人柄そのままにアットホームな雰囲気の中で、最高に美味い鮨が楽しめる。予約の取れない超人気店になる前に、ぜひ訪れておきたい新店だ。

岡部巌_2.JPG
名だたるホテルの日本料理店や銀座の一つ星鮨店で料理長を務めた岡部さん。店名は店主の名である「巌」から。

すし いわお

東京都港区赤坂4-3-5
TEL:03-5544-9862
営業時間:昼 第一部11:30〜、第二部13:00〜、夜 第一部18:00〜、第二部20:30〜
定休日:土日祝(月曜はディナー営業のみ)