不労所得はズルいお金なのか? お金持ちのイメージが悪い日本人

  • 文:川畑明美

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一般的にお金持ちとは、1億円以上の資産を保有する層を指す。年収が高くても1億円の資産に達しない人には、意外な理由があった。bymuratdeniz-istock

お金持ちとは、いくらくらいの資産を持っている人のことをいうのか? 一般的に富裕層とは1億円以上5億円未満の資産を保有している層をいう。では、なぜ資産1億円なのか? 例えば1億円の資産を3%で運用できるとしたら年間300万円の不労所得が手に入る。


年間300万円というと、今や日本人の平均的な所得と同等といえる。なので資産1億円あれば、日本人の平均収入以上を不労所得で得られると考えられるのだ。そういう意味で資産1億円以上の方を富裕層と呼べるのだ。お金持ちを目指すならば、1億円を目標に頑張るということだ。ところが年収が1000万円以上ある方でもなかなか資産1億円に到達できない。それは心の奥底に、お金持ちに対して良い印象がないからだと感じる。


日本人は「お金儲け=悪い」という良いイメージがあるように感じる。特に投資はギャンブルみたいなものと思っている方も大勢いる。実際、個人投資家のyouTubeなど見ると、リスクを大きく取った内容を見ることもある。そうやって無料で得た情報で実際やってみて損をしてしまったら、投資はギャンブルだというのかもしれない。

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日本人のお金持ちのイメージは?

投資以前にお金儲けが「悪」だと思っていれば、1000万円稼いだとしても、お金をすべて使ってしまう。お金を持っていることが悪だから、使ってしまうのだ。日本人のお金持ちのイメージが悪いのは「拝金主義」を嫌うところからきているのかもしれない。拝金主義とは、金銭を無上のものとしてあがめる考え方だ。お金持ちというと拝金主義を連想してしまうのかもしれない。その傾向は、欧米と日本のヒーローを見てもわかるのだ。


先日、劇場で上映されていた『サンダーバード55/GoGo』。サンダーバードを操縦する国際救助隊は、巨額の富を得た元軍人が私財を投じて作った組織だ。欧米のヒーローは、お金を持った民間人が多い。一方、日本のヒーローのウルトラマンは科学捜査隊という「公務員」なのだ。


欧米でお金持ちのイメージは、「ノブレス・オブリージュ」の意識が強いのだろう。貴族や上流階級に生まれたものは、社会に対して果たす責任が重くなるという道徳観のことだ。ところが、日本だとお金持ちのイメージは、時代劇のこんなシーンではないだろうか? 「お代官様こちらを……」と、つづらを差し出す商人。つづらの中身のお菓子の下には、小判が隠されている。そして、つづらをもらった代官は「おぬしも悪よのう……」と答える。このイメージでは、お金持ち=カッコ悪いとなってしまう。

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子どもはお金持ちをカッコイイと思っていない

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子ども達のお金に対する意識調査では、お金持ちをカッコイイと思う子どは20%未満なのだ。多くの子どもは、お金持ちをカッコイイと思っていない。akasuu-istock

お金持ち=カッコ悪いと、思ってしまうのは、子ども達のお金に対する意識について調べたアンケート調査でもわかる。少し古い資料だが、金融広報中央委員会がまとめた2015年度の「子どものくらしとお金に関する調査」を見ると、子ども達は、「お金持ちはかっこいい」と思っている数が圧倒的に少くないのだ。


「お金持ちはかっこいい」という問いに対して「そう思う」と選択した小学生は10.9%、中学生では13.3%、高校生では17.9%だった。子ども達は、お金を稼ぐことはよくないこと、汚いことという意識を持ってしまっていることが予測できる。お金持ちのイメージは良くないのだ。それは、子どもの頃にお金の話を親としないからかもしれない。


なぜお金が欲しいのか? それを考えてみて欲しい。多くの人は、お金そのものが欲しいのではなく何かを手に入れるためにお金が必要だと考えているだろう。お金があると選択肢が広がる。お金さえあれば、家族が病気になったら看病するために1年くらい仕事を休んでも大丈夫と思えるだろう。欲しいもの、やりたいことを達成するために、お金の知識を身に付けることはとても重要なのだ。

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お金持ちになれる人となれない人

ところが、子どもの頃にお金の話をすると「子どもはお金の話なんかするもんじゃあ、ありません!」などと怒られたりするので、お金を稼ぐことやお金を持つことがよくないことと、思ってしまうのだ。それでは、お金がないことで夢をあきらめなくては、ならなくなってしまう。価値のあるお金の使い方は、自分の自由のために、お金を投じることではないだろうか。


「お金持ち」になれる人となれない人にはどのような違いがあるのか。働くだけでは、資産の格差が縮まらない。年収が1000万円を超える人でも、貯金がゼロという方も少なくない。なのでより多くの収益を得るために、お金を働かせることが大事になるのだ。運用する資本は、まず労働で得た収入を貯めて増やしていく。そして投資や運用を通して収益を生み、さらに資本を増やしていくことが大事なのだ。

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株式投資は社会貢献のひとつ?

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株式投資とは、経済成長の一翼を担う行為だということを忘れないで欲しい。消費とは違う意味で社会にお金を循環させることなのだ。arthon meekodong-istock

「株式投資で増えた利益は不労所得でしょ? 汗水流して働いて得た利益のような、尊いお金と違いますよね」と、言われることもある。本当にそうだろうか。なぜ企業は株式を公開するのか、考えてみて欲しい。株式公開とは、自社の発行する株式を自由に譲渡できるようにすることだ。


企業は、自社の株式を上場させることで得た多額の資金を元手に、事業を一段と飛躍させることが可能になる。個人投資家が長期投資によって企業を支援するということは、経済成長の一翼を担っていることになるのだ。そう考えれば株式投資は、社会貢献のひとつといえる。預貯金をいくら貯め込んでも、経済にお金は回らない。消費とは違った意味で、お金を循環させることが投資なのだ。

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コツコツと複利で増やしていく

そういった一方で、働かずに「不労所得だけ」で生活することに若いうちから憧れる人もいる。だが、投資の利益はよくて10%程度だ。大きな元手がなければ、不労所得だけで働かずに生活することは難しい。冒頭でも話したが1億円の資産が必要になる。


もし毎月40万円の生活費ならば年間480万円の利益が必要で、10%で運用できるとしても4,800万円の元手が必要になる。ところがコンスタントに10%の利益を必ず生み出すのは、難しいのだ。まずは、労働収入から貯蓄できる金額を増やし、元手を徐々に大きくしていくしかない。早期リタイアするには、その間の支出を絞るということだから、簡単にはいかない。


「老後のために資産形成をする」というイメージを持つといいだろう。投資は、魔法ではない。無尽蔵にお金が湧いて出てくるものでもないのだ。預貯金よりも利回りは良いが、失敗しないためには長期でコツコツと複利で増やしていくことだ。そう考えると、労働で得た「尊いお金」と変わらないのではないか。預貯金の金利がゼロの現在、投資をするのは必須なのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/