わたしは食べることが大好きです。唯一、食べることよりも大好きなことといえば、料理です。食べることも寝ることも忘れて、没頭できることは料理です。空腹時であっても、料理モードに入ると空腹を忘れ、つくる世界に没頭します。非常にお腹が空いているのに、いい香りをかぎながら料理に没頭できることは我ながら超クレイジーだと思っています。
わたしの日常はレシピ開発です。年間4〜5冊のペースで本を書いているので、常にインプットとアウトプットを繰り返して生活しています。自分が本能のままに食べたい食事を食べることは少なく、常に書籍で読んだ新しい料理(インプット)もしくは自分で書いたレシピ(アウトプット)をつくり、食べています。むしろ、自分の食べたい食事=つくって解明したいこと+知りたい味、という思考になっている気がします。
早朝布団の中でまどろんでいる時から夜眠りに落ちる時まで、ずっと新しい料理のことを考えていて、「明日はなにをつくろうか」「あれはこうしたらもっとおいしくなるのではないか」「どうしてあの味になったのだろう……」と無限に考え続けることができます。
ここでひとつ注意しておきたいのが、この思考と試作と試食を繰り返していることは、私にとっては一切苦ではなくずっと楽しいと思ってやっているということ。新しい味や組み合わせを知った時の喜びや、自分のレシピの精度が高くなっていく感じは大好きです。基本的にひとりの世界なのですが孤独を感じたこともありません。
ただ、唯一昨年から今年にかけて大変だったことがありました。それは“お菓子”のレシピ開発です。
スパイスお菓子のレシピを書くことが目標だったですが、まず基本的なお菓子づくりをマスターするために集中して他の料理家さんのレシピを試作することから始めました。数多のレシピを買ってかたっぱしからつくっていきます。たくさんの経験を経ることでお菓子のルールや合理性を体感します。半年くらいつくり続けると、「この分量比だと、だいたいあんな感じになる」みたいなのがわかってくるので、そこから自分のレシピを書いていきます。レシピを書いてからは、さらにおいしかったものをよりおいしく、簡単につくるために、さらには再現性が高いレシピになるように実験を繰り返します。
この作業はいつも通りのことなので全く苦ではなかったのですが、レシピの仕上げにかかった最後の3ケ月はかなり集中して試作をしてしまい、ふとある日、銭湯にあった体重計に乗ってみると、ナチュラルに4kg増えていました(!)。
集中すると試作と試食に没頭するので、食事を忘れてチョコレートケーキしか食べなかった日もありますし、朝昼晩の食事がプリンだった日もあります。チーズケーキをつくりすぎて1日で合計250g分のクリームチーズを摂取したこともありました。
当たり前と言えば当たり前なのですが、太った事実を数字で見てしまった瞬間はとてもショックでした。確かに最近出演したTV放送後に「丸くなった?」と言われたことがあったのを思い出し(正直傷ついてます!)ここから大反省会の始まりです。
ただ、レシピ開発というのはわたしの一番好きな仕事であり、わたしの純粋な趣味でもあるため仕方ないと言えば仕方ないのです。
では増えた体重を、どうするか。
レシピ開発で、次に書きたい本のテーマで痩せてみようと思います。
つまり、ダイエットレシピです。私がお菓子レシピで4kgナチュラルに太ったように、ナチュラルに4kg痩せるスパイスダイエットレシピを研究してみようと思います。
本当においしくて、続けられる、痩せられるレシピだけを掻き集めて4kg痩せてみせようと思います。なにがよくてなにが悪いのかも、掻き集めてやります。
私の人体実験的レシピの開発が始まります。