無理なく「1000万円を貯める」、王道の方法とは?

  • 文:川畑明美

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1000万円を貯めるのは、決して無理なことではない。ただし貯蓄が苦手な方は、ウォーミングアップが必要だ。手順を間違えないようにしたい。tudiocasper-istock

貯蓄額が少ないご家庭では、1000万円の貯蓄と聞くと「ハードルが高くて絶対にムリ!」と、思ってしまうかもしれない。でも最初からムリとあきらめてしまっては、いつまで経っても1000万円どころか100万円すら貯めることはできない。実は誰でも1000万円の貯蓄はできるのだ。


ただし「お金を貯めよう!」と、思っても貯蓄グセがついていないのにいきなり節約生活に走り、毎月10万円を貯蓄に回すというのでは長続きしない。それでは、ランニングの練習もしないでいきなり42.195kmのフルマラソンに参加するようなものだ。途中で息切れしてしまい、長く走り続けることはできない。お金を貯めるにもウォーミングアップは必要だ。ゼロに100を掛けてもゼロになってしまうように、貯蓄ゼロでは、永遠にゼロだ。まずは、月1万円貯蓄できるように貯蓄グセをつけよう。

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まずは月1万円貯められるようになる

貯蓄をスタートするには、次の順番で進めていくといい。

1)毎月少額でも良いので早くスタートする

2)家計の洗い出しと見直し

3)ボーナスがあれば貯蓄の不足分の足しに

4)貯蓄ペースをつかんだら金額をアップ


この順番で進めていくと、お金が貯まるようになる。なぜこの順番が必要なのか解説しよう。貯蓄するには、本来ならば家計を洗い出し見直しをして無駄な支出を削ることからはじめるのが理想だ。だが家計簿も付けていないし、1円の貯蓄もない人が家計の見直しをするのは少々大変なのだ。貯蓄のモチベーションが下がってしまい続けることができなくなる。無理なくはじめられる毎月1万円を貯めることからスタートしてみよう。


最初に手を付けるのは、貯蓄用の口座を作ることだ。休眠して使っていない口座でも良いし、新しく作ってもかまわない。公共料金などの自動引き落としの口座になっていなければ、既存の口座でも問題ないので「貯蓄用口座」を作ることだ。その貯蓄用口座に毎月1万円貯蓄しよう。最初は、お給料が振り込まれてすぐに貯蓄用の口座にお金を分けておくと良い。


実際に1000万円貯めたことがある方へのアンケート調査を見ると最も多い貯金の保管・管理方法は「貯蓄用口座にわけて貯金」という回答だった。まずはお金を分けることから始めて欲しい。数か月後、口座にお金が貯まっていくのを見るとモチベーションが上がる。

一度の手間で、効果が長続きする節約

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節約のキモは、手をつけるには少し面倒だが、一度やってしまえば、ずっと資金が抑えられる分野から見直すことだ。arthon meekodong-isock

たった1万円でも良いので貯蓄できるようになったら、あらためて家計の洗い出しをしてみよう。家計の洗い出しのポイントは、毎月必ず支払っているものから見直すことだ。まずスマホを見直してみよう。楽天モバイルやUQモバイル、YモバイルなどCMもしている格安SIM事業者への乗り換えだ。ほぼ利便性を損なわずに毎月の料金を最大5000円以上節約できる。


次に手をつけたいのは、電力会社の変更だ。現在契約している電力会社に解約の届けをする必要もなく、乗り換え先の電力会社にネットで申し込むだけだ。我が家では、年間2万円ほど安くなった。年間たった2万円と思わないで欲しい。毎日使う電気だから10年続ければ、20万円も節約できるのだ。また、不要な保険を見直すのも効果絶大だ。


一度の手間でずっと削減効果を得られるスマホ代、電気代、保険から見直してみよう。そして管理が必要なのは、現金での支出だ。毎月必ずかかる公共料金などの固定費は、通帳に記録されるので現金の出費のみ管理しておけば大丈夫だ。手帳に使った金額をメモするだけでも出費が増えると気付くので「来週は抑えよう」など予算管理に活かせる。

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ボーナスは貯蓄の不足分の足しに

ボーナスで貯蓄するという方は多いが、支給額は会社の業績に左右され変動してしまう。ボーナスを貯蓄計画に組み込んでしまうと予想が外れたときに挽回ができない。ボーナスは、毎月の目標貯蓄額が足りなかった時の補填にするといい。もちろん予想以上にボーナスが出た場合は貯蓄に回すというのは問題ない。


ただ基本は、日頃我慢していることへのご褒美などに使うといいだろう。旅行や美味しいものを食べたりと楽しみのために使うのも大切なことだ。

毎月1万円貯められるようになり、貯蓄ペースをつかんだら金額をアップしてみよう。増額できていれば貯蓄体質へと改善が進んでいる証拠だ。無理のないペースがつかめてきたらさらなる貯蓄体質へと改善しよう。筆者は、月2万円からはじめて1年くらいで毎月5万円、3年目に6万円まで貯蓄額をアップすることができた。


毎月6万円の貯蓄ができれば年間で72万円だ。昇給があったら、その分貯蓄に回すなどもっと貯蓄のペースをパワーアップしよう。半年に1回程度は、まだ手をつけていない家計の支出の見直しを考えると良い。ここまでできれば、お金を貯める自信がついてくる。

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1000万円貯めるための王道は?

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1000万円を貯蓄するのに、特別な方法はない。収入から貯蓄できる資金を多くすることを実践し、コツコツ貯めることだ。kazuma seki-istock

100万円貯めるのも、1000万円を貯めるのも特別な違いはない。100万円や1000万円がいきなり貯まることはなく、コツコツと毎月の貯蓄を積み上げることに変わりはないからだ。ただしこの「貯金1,000万円以上保有者への調査」を見て少し意外に思った。このアンケートで貯金の方法は「毎月余った金を貯金」が最も多かったのだ。おそらく1000万円以上の貯金を持っている方が対象なので、すでに体感覚的に家計管理ができている方なのかもしれない。


自分自身のことを考えると、貯金の習慣ができるまでは「先取り貯金」をしていたが、家計管理ができるようになると毎月予算内で生活できるようになり、さらに予算まで使い切らずに貯められるようになっていったのだ。


もちろん毎月投資信託の積立をしているので、この部分は先取り貯蓄となるが、生活口座にそのままお金が貯まっているように変わったのだ。ある程度まとまったところで、別口座に移して運用もしている。家計の切り盛りが上手になると生活口座でもお金が貯まるようになってくる。まだそこまで管理ができない方は、貯蓄用の口座に「先取り貯蓄」が最も有効だ。

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資金が増えたらより有利な金融商品へ

他にも給料天引きで利用できる社内貯蓄制度があれば、利用しよう。毎月、お給料から自動的に積立ていくので確実に貯蓄できる。財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は合わせて550万円まで利息が非課税になる。NISA制度やiDeCoなどの非課税制度も併用して活用したい。


iDeCoは毎月決まった額を掛金として銀行口座から引き落とされる。積立する投資信託は、ご自身で選べる。NISAも証券会社によっては指定の銀行口座から自動引き落としが可能だ。まずは利益が非課税になる制度を活用して「先取り貯蓄」しよう。生活防衛費は現役世代ならば生活費の6ヶ月分の預貯金があれば十分だ。


100万円ほど貯まったら、より有利な運用にシフトしよう。普通預金に入れっぱなしはよくない。定期預金でも100万円以上ならば一般の定期預金の金利よりも高くなる銀行もある。国債なども有利だ。毎月の貯蓄から、100万円程度貯まったらより有利な金融商品に預け替えすることで早く1000万円を貯めることができる。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/