ランナーが教える、箱根駅伝を「最大限楽しむ方法」

  • 文:今泉愛子

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箱根駅伝で力走する駒澤大学3年時の中谷圭佑(現ランニングコーチ)。沿道にもたくさんのファンが押しかけていた箱根駅伝だが、コロナ禍のため前回大会から沿道での観戦は自粛要請が出ている。

1月2日、3日朝8時から連日5時間以上にわたって東京―箱根間を往復してタスキをつなぐ箱根駅伝。年々人気が広がる中で、ファンの楽しみといえば、順位予想だ。12月にTwitterやYouTubeで箱根駅伝ファンの予想が飛び交うのはもはや風物詩となっている。

箱根駅伝の順位予想が、ほかのスポーツの勝敗予想と大きく異なるのは、ほぼ当たらないということ。優勝チームは当てられても2位、3位まで当てるのはかなり難しい。それほど箱根駅伝の勝敗は予測がつかないのだ。当日の気象条件や選手のコンディションなどから、毎回必ず予想外の展開になる。だからこそ楽しい。箱根駅伝観戦歴30年以上のマニアでも予想を語る口ぶりはじつに謙虚だ。

前回、優勝した駒澤大学がトップに立ったのは、往復217.1km中、最終10区ラスト2.1km地点。優勝候補と前評判は高かったが、最後の最後までトップに立てず優勝は絶望的と思えたところでの逆転劇だった。

今回はさらに各大学の力が拮抗し、例年にない大混戦が予想されている。2強の駒澤大学と青山学院大学、強豪の順天堂大学や早稲田大学、明治大学、東洋大学、中央大学、新興勢力の國學院大学や東京国際大学、創価大学と有力大学がしのぎを削る。

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ますます難しくなる順位予想

駒澤大学出身で、箱根駅伝で活躍した中谷圭佑は「勝負どころは7区、8区、9区」と明言。「1日目の往路では2分くらいの間に5、6チームがなだれこんでくると予想します。それほどどこの大学も戦力が充実しているんです」

これまで各大学は往路に有力選手を投入してきた。駅伝において出遅れは致命的だからだ。とくに選手が一斉にスタートする1区、後半の上り坂が厳しく距離が長い2区はエース級の選手が走る。

「今回も有力選手は往路を走ると思います。だから勝負を決めるのはエースではなく復路を走る中堅選手ではないでしょうか。あるいは復路にエース級の選手を配する大学もあるかもしれません」

だとすると、順位予想はますます難しくなる。

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元選手で現役コーチによる予想は?

中谷に、順位を予想してもらった。

「僕は、1位青山学院、2位國學院、3位駒澤、4位順天堂、5位東京国際、6位明治と予想します」

なんと母校の駒澤大学を3位だ。

「実力は間違いなくトップ。春シーズンに好調だった選手が調子を落としていることが心配です」

対する青山学院は「5000mや10000mの選手の平均タイムがいいことからもわかる通り、選手層の厚さが飛び抜けています」

それでも不安材料がないわけではない。

「これはほかの大学にも当てはまることですが、大切なのはレギュラーをどれだけ多くつくれるかなんです」

箱根駅伝でレース当日に4名まではエントリー選手を変更することができる。そこが野球やサッカーのようなポジションのある競技と大きく異なる点だ。

「直前に出走が決まっても選手は準備が十分にできません。だから実力を発揮できないことが多いんです」

層の厚さが選手選考の厳しさにつながり、レース当日までに当落線上にいる中堅選手が疲弊してしまうこともあるのだ。

「その点、國學院大学は事前に選手を絞り込めているでしょうから調整の不安が少ない。かなり不気味な存在です」

果たして、1月3日東京・大手町に一番に帰ってくるのは、どこの大学か。きっと今回も箱根駅伝の順位予想は当たらない。だからこそ楽しいのだ。

【取材協力】中谷圭佑

ランニングコーチ。1995年、兵庫県生まれ。西脇工業高校時代は、都道府県対抗駅伝1区で2年連続区間賞。駒澤大学では4年連続箱根駅伝に出場し、1年時は4区で、2年時は3区で区間賞を獲得。学生時代に9回出走した駅伝で4回区間賞、3回区間2位と駅伝で抜群の強さを誇った。アジアジュニア陸上競技選手権大会5000m3位(2012年)、ユニバーシアード10000m3位(2015年)。

【執筆者】今泉愛子

ライター。ランナーとしてもマスターズ陸上に出場。世界室内マスターズ陸上競技選手権W50 1500m8位(2019年)、800m W55日本記録保持者。現役時代は、日本陸上競技選選手権大会800m3位(1979年)、全日本中学陸上競技選手権1位(1980年)、あかぎ国体1500m4位(1983年)、都道府県対抗駅伝8区区間賞(1987年)などの成績をもつ。