箱根駅伝にハマる人が増えている「3つの理由」

  • 文:今泉愛子

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第92回箱根駅伝(2016年)で3区を快走した駒澤大学3年の中谷圭佑。6位でタスキを受け取り、順位を4位に押し上げた。その後、駒澤大学は手堅い走りを見せ総合3位に。この時、総合優勝は青山学院大学。

毎年1月2日、3日に開催される箱根駅伝の人気がさらに高まっている。

2020年は、関東地区で平均視聴率が2日31.0%、3日33.7%と、1987年に開始したテレビ中継の歴代1位を記録した。「駅女」と呼ばれる女性ファンも増える一方だ。大学名入りのタスキをかけた21チームの学生ランナーが、東京―箱根間往復217.1kmを10区間に分けて走り継ぐ箱根駅伝のどこがそれほど魅力なのか。

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個人競技×チームスポーツの魅力

1つ目の魅力は、個人競技×チームスポーツである点だ。誰かひとりでも、任された区間を走り切れない選手がいれば失格になる。チームのエースも10番目の選手も自分の区間を走っている時は、まさに主役だ。箱根駅伝は1区間が20km以上あり、区間トップの選手と最下位の選手のタイム差が5分以上開くこともあるなど、個人成績がはっきり出るのは陸上競技ならでは。

そこにチームとしての連帯感が加わる。監督のために、仲間のためにといつも以上の力を発揮して予想外の走りをする選手も多い。

駒澤大学出身で箱根駅伝に4年連続出場し、区間賞を2回獲得した中谷圭佑は「僕にとって駅伝は完全にチームスポーツです。エースとして、つねにチームの成績につながる走りをしたいと考えていました。個人のレースでもいい成績を出すと、チームの評価につながることがうれしかったんです」と語る。

選手たちのそんな一途な想いは、テレビの画面越しにも伝わってくる。

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大学の対抗戦ならではの面白さ

2つ目は、大学の対抗戦であること。

箱根駅伝は関東地区の大会なので出場している大学は関東の大学に限られるが、ひとつのレースで20大学(出場している21チームのうち1チームは連合チーム)が同時に戦うことができるのは、駅伝ならでは。

観戦していると各大学のチームカラーが伝わってくる。たとえば、フレッシュグリーンのユニフォームの青山学院大学は、2004年に原晋監督の就任以降にメキメキと力をつけたチーム。原監督も陽気な性格で選手たちが自由にのびのびと走っている印象を持つ。大八木弘明監督が走っている選手にかける「男だろ!」という檄で知られる駒澤大学は、選手全員が短髪だ。自身の出身校とは関係なく、推しのチームをもつ人も多い。

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深堀りしがいがある

そして3つ目は、深堀りしがいがあること。

大学や選手を手がかりにどんどん興味が広がる。監督の個性、チームカラー、さらに選手の出身高校や5000m、10000mのタイムなど当日の走りの背景には、たくさんのデータや個人の物語がある。高校時代から日本のトップ選手として活躍していた選手もいれば4年生になってようやく初出場がかなう選手もいるのだ。

今回、注目選手の筆頭は、3000m障害で東京オリンピックに出場し、日本人初の7位入賞を果たした順天堂大学2年の三浦龍司選手だろう。前回は1区を走り区間10位と力を出しきれずに終わったが、今回はどんな走りを見せてくれるのか。

中学時代に1500m、3000m、5000mで中学記録を樹立し、高校時代にも5000mで高校記録を樹立したスーパールーキーの東洋大学1年石田洸介選手の箱根デビューや来年オレゴンで開催される世界陸上の10000m参加標準記録を日本で唯一突破している駒澤大学3年田澤廉選手にも注目だ。

こうして背景を追いかけられるいっぽうで毎年、1学年分の選手が入れ替わるところも絶妙だ。選手の成長を追いかける楽しみと、新加入した選手のチェックが見事に両立できる。

ただ観戦するだけでも楽しいが、背景がわかってくるとさらに楽しくなるのが箱根駅伝。ハマると、これから何年にもわたって、正月にはテレビの前から動けなくなりそうだ。

【執筆者】今泉愛子

ライター。ランナーとしてもマスターズ陸上に出場。世界室内マスターズ陸上競技選手権W50 1500m8位(2019年)、800m W55日本記録保持者。現役時代は、日本陸上競技選選手権大会800m3位(1979年)、全日本中学陸上競技選手権1位(1980年)、あかぎ国体1500m4位(1983年)、都道府県対抗駅伝8区区間賞(1987年)などの成績をもつ。

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