映画『明け方の若者たち』が描く、夢のような恋とこんなはずじゃなかった現実

  • 文:上村真徹

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© カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

洋画・邦画ともに注目作品の多い12月。人気WEBライター・カツセマサヒコのベストセラー青春恋愛小説を映像化した『明け方の若者たち』の見どころやあらすじを紹介する。

【あらすじ】沼のような5年間…ショートメッセージから始まった“僕”と“彼女”の恋

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退屈な飲み会で出会った“僕”(右)と“彼女”(左)。二人の距離は自然と近づき、いつしか惹かれ合っていく。© カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

Twitterフォロワー14万人以上を誇る人気ライター、カツセマサヒコが小説家デビューを飾った青春恋愛小説『明け方の若者たち』。若者の等身大でリアルな青春と恋愛模様を綴った本作は、2020年6月に刊行されるや絶大な支持を集めてベストセラーとなった。その圧倒的な反響から、発売後わずか1年で実写化された映画『明け方の若者たち』が、12月31日から劇場公開される。

2012年4月。東京・明大前駅近くの飲み屋で内定を勝ち取った就活生たちが盛り上がる中、バカ騒ぎする学生たちになじめず疎外感を抱いていた“僕”。⼀人だけ雰囲気が違う“彼女”に惹かれてアプローチしたところ、「私と飲んだ方が、楽しいかもよ?笑」というショートメッセージが届く。くじら公園(玉川上水公園)で合流しハイボールを飲みながらお互いについて語り合い、“僕”は別れ際に勇気を出して「俺といたら、きっと楽しいよ」と想いを伝える。それから“彼女”とデートを重ねて想いを深め合うが、就職直後に早々と“社会人の壁”にぶつかってしまい「こんなはずじゃなかった」と打ちひしがれる。

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【キャスト&スタッフ】本人のイメージを重視してキャスティングされた“僕”北村匠海と“彼女”黒島結菜

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新入社員の“僕”は総務部に配属され、まったく興味を見出せない仕事に嫌気がさす。© カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

本作の監督を務めたのは、LINE NEWS 内の動画プロジェクト「VISION」で配信中の『#love_delusion』でもカツセマサヒコと組んでいる松本花奈。刊行後すぐに小説を読んだ松本監督は、「感情移入できるところが多く、不思議な魅力を感じましたね。読んでいくうちに映像や描写がどんどん頭の中に浮かんできました」と映画化を熱望するようになり、自らプロデューサーに作品を推薦。『新聞記者』『全裸監督 シーズン2』の脚本家・小寺和久と組み、リアリティのある若者像を膨らませた。

松本監督によると、主人公の“僕”は「何者かになろうとしているけど、結局何者にもなれない。何者になりたいかが分からない。段々とそれが分かってきて、諦観し出す」という若者。そんなつかみどころのないキャラクター像を表現できる適任者として、『東京リベンジャーズ』など話題作への出演が相次ぐ北村匠海をキャスティング。北村自身も「色をあまり出さない」よう努め、自然体で演じたという。

一方、“彼女”は「“僕”にとって憧れの存在で、周りに流されず、物事の判断基準の軸が自分の中にちゃんとある人。そして好きを仕事にできている人」。そうした知的で芯がある女性にハマる女優として、2022年のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』のヒロイン・黒島結菜を起用。黒島は松本監督と「“彼女”の多面性をどう見せるか」について話し合い、現場で芝居を合わせながら人物像を調整していった。

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【見どころ】誰もが青春時代に体験する、忘れられない“人生のマジックアワー”

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会社の同期・尚人(左)も交え、“僕”と“彼女”は夢を語り合う。© カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

本作は、主人公と同じ時代を生きている若者たちはもちろん、青春時代から遠ざかりつつある世代をも惹きつけてやまない。その最大の魅力は、かけがえのない恋人や友達と夜中まで時間を忘れるほど無邪気に過ごす、いつかは終わるけどその瞬間が永遠に続くように感じられるひと時を、その温度と空気感も含めて瑞々しくリアルに映し出していることにある。それはノスタルジックでありながら同時代的でもあり、見る者にとって“自分たちの物語”として愛おしくも切ない気持ちにさせる。

一方で本作は、誰もが体験しうる夢と現実の“落差”を、2つの転換点で浮き彫りにしているところも特徴的。まず1つは、学生時代と社会人時代という年代による転換。そしてもう1つが、“彼女”との幸せな恋模様が、"ある衝撃の事実"が明かされることで急変するという転換だ。無限の可能性を秘めた将来を夢見ていた若者が、社会に出て夢見た景色とは全然違うところに立ち「こんなはずじゃなかった」と葛藤する落差。仕草も声も全部好きな“彼女”との夢のような日々から一転、ある事実に打ちのめされてしまう落差。いずれもその瞬間は立ち直れないほど絶望するが、それでも前を向いて進もうとする──。現実的でどこか冷めているけど、かけがえのない人とのつながりが欲しくてたまらない。そんな現代の若者の肌感覚を反映した青春模様に自分を重ねながら、絶望の先にきっとあるはずの希望へと手を伸ばしたくなる。

もう二度と帰ってこないけど、いつまでも忘れられないほどの輝きを放つ“人生のマジックアワー”を焼きつけた、新たなる青春映画のバイブルがここにある。

『明け方の若者たち』

監督/松本花奈
出演/北村匠海、黒島結菜ほか 2021年 日本映画
12月31日より全国の劇場にて公開。

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映画『明け方の若者たち』が描く、夢のような恋とこんなはずじゃなかった現実

  • 文:上村真徹

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