ボルボ日本法人の新社長インタビュー「ボルボC40は新しい時代の始まり」

  • 文:小川フミオ

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スウェーデンのボルボが、「C40リチャージ」なる新型車をお披露目。同時にもうひとつのニュースとして、このモデルは、オンラインでのみ販売すると発表した。日本法人のボルボカージャパンも、2021年11月18日に日本で同車を発表。やはりオンライン販売をするという。

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日本語も上手なボルカージャパンのパーソン社長

C40リチャージのあたらしさは、ボルボにとって初のピュアEVであること。日本に持ちこまれたのは「ツイン」という仕様で、名称のとおり電気モーターを前後に搭載した全輪駆動。

スタイリングは、クーペライクともいうべき、ちょっとキャビンを小ぶりに見せた、クロスオーバーだ。現在のボルボ車に通じるデザイン要素が多いが、独特のエレガンスを感じる。

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ボルボ初のピュアEVとして発表された C40リチャージ

「ツイン」は78キロワット時という比較的大きなバッテリーによって、航続距離は485キロだそう。日本の急速充電器「CHAdeMO」による充電は150kW まで対応(つまり充電時間が短い)など、使い勝手もよさそう。

「C40リチャージから、ボルボはあたらしいフェーズに入ります」。ジャーナリスト向けの記者会見が開かれた「ボルボスタジオ青山」で会った、ボルボカージャパンのマーティン・パーソン社長は、C40リチャージの導入について、そう語った。

パーソン社長は、ボルボカージャパンの社長に2020年10月1日付で赴任したスウェーデン人。その前は、ロシアと中国でカスタマーサービスを担当。2019年夏にはボルボ・カー・ロシアの社長を務めた。

それ以前は、1999年にボルボジャパン(当時)に入社し、2008年まで在籍したというだけあって、知日家でもある。日本では、2015年の「XC90」の導入にはじまった、ボルボのラインナップ刷新が第1フェーズ。ボルボのセールスが高まってきたのも、海外からよく見ていたようだ。

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既発のSUV、XC40などとプラットフォームを共用するC40リチャージ

日本におけるボルボの新しいフェーズとはなにか。「デジタライゼーションとオンライン販売です」とパーソン社長は言う。C40リチャージと、このあと登場するであろうピュアEVは、オンラインのみのセールスに。納車は購入者が望む販売店から行われる。買ったあとのサービスは従来とおなじ。

デジタライゼーションは、ボルボカージャパンが21年9月1日から導入したGoogleのアプリとサービス。Googleアシスタントを使っての音声操作、連動して動くGoogleマップによるナビゲーション、さらにGoogle Playストア経由でアプリをダウンロードできる、といったぐあい。

どう動くかというと、「オーケイ、グーグル」と声に出すと、音声と、ダッシュボード中央の画面上のメッセージで「How can I help?」と応えてくれる。日本語対応は2022年初頭からといい、私が試したときは英語。

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試乗した11月の時点では英語しか使えなかったが、聞き取りはかなり上手

そのあとたとえば「Take me to Tokyo station」と言えば、東京駅までの道案内がGoogleマップを使って行われる。「Play the Beatles」と言えば、このシステムとつなげた自分のGoogleアカウントを通してSpotifyとかYou Tube Musicから音源を探し出してくる。直感的に使えるのがなによりメリットと説明される。ようするに、自分が日頃使っているスマートフォンとおなじなのだ。

Googleアシスタントを使うと、音声による操作で、エアコンによる温度調節、メッセージの送信、Googleアシスタント対応デバイスの操作まで行える。21年11月現在では「XC60」「S90」「V90」「V90 クロスカントリー」に搭載されていて、「C40リチャージ」でもとうぜん使える。

ゆくゆくは、スマートフォンとの連携をさらに強めて、端末からクルマのインフォテイメントやドアロックなどの操作も出来るようになる。スマートホーム機器を車内から音声操作することで、帰宅前に自宅のエアコンや照明を作動させることも可能に。「走るスマホ」というボルボカージャパンの技術担当者の言葉がまさに的を射ているようだ。

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C40リチャージは本革を使わずリサイクル素材をシート表皮に用いる

もうひとつが、冒頭のオンライン販売だ。

「購入にあたって販売店に出かけていくことを心理的負担と考えているひとがいます。そこで、複雑なオプション設定はやめて、オンラインで簡単にクルマを注文できるようにすると、購入のハードルが下がる場合もあるのです」

パーソン社長の経験では、ロシアではひと足先にオンライン販売を導入して、うまくいっているのだそうだ。とりわけ「30代と40代の比較的若い層に評価されると思います」とのこと。

「C40リチャージは、若めのユーザー層にアピールをはかる最適な車種です。パワフルでかつ航続距離が長く、アクセルペダルひとつで加速もブレーキングに近い減速も出来るあたらしい感覚のドライブ性能、クーペライクなスポーティなクロスオーバーデザイン、それに高級車のトレンドになりつつあるレザーフリー(革の不使用)の内装といった特長に加えて、オンライン販売と、もうひとつ、サブスクリプションを推していきたいのです」

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ハッチバックとSUVとクーペをうまくバランスさせたようなスタイリングが印象的

サブスクリプション、通称サブスクとは、C40 リチャージを月額11万円で”所有”できるサービス。購入時の頭金は不要で、各種税金、自賠責保険、リサイクル料金、登録諸費用、任意保険料、サービスプログラム、付帯補償料などが月額料金に含まれる。

C40リチャージは、2021年11月にサブスクリプションキャンペーン(100台限定)の抽選受付が開始された。さらに、2022年1月に開設予定の公式サイトを通じて、オンライン販売を開始する予定だそう。

719万円と価格は比較的高めであるものの、タイミングをうまくつかまえれば、国や自治体によるいくつかの補助金が得られるはず。2030年までにピュアEVのブランドになることを謳うボルボは、今回のオンライン販売のように、おもしろい試みをこれからもいろいろ見せてくれるような気がする。