世界でいちばん好きな魚の部位といえば

  • 写真&文:印度カリー子

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世界で一番好きな魚の部位といえばマグロの血合いだ。大トロでもなく中トロでもなく血合いがこの上なく好きだ。

マグロの血合いは赤黒く濃厚な香りがして、血が多い分傷みも早く、臭みが出やすいためスーパーでは捨てられる部位として格安で鮮魚コーナー並ぶ。高級スーパーでは売らずに丸ごと捨ててしまうこともある。

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似ているものとしてカジキマグロの血合いが売られていることがあるが、あれはマグロではなくカツオだ。私が好きなのは本マグロの、肉厚でやわらかい血合いだ。

思い返せば小さい頃、塩サバを食べる時もいちばん最後に血合いの部分を残し、チマチマと大切に食べていた。血合いのやわらかい食感と風味、味わいが大好きだった。塩鯖の血合いは小さいが、マグロの血合いはとても大きい。ステーキも容易にできる大きさである。

私はスーパーでマグロの血合いを見かけたら間違いなく買って帰る。大抵1パック800gほど入っていて、まずすぐにスパイスにまぶし、グリルで焼いて食べる。買ってきた初日の楽しみとして、たっぷり200gほど使ってのステーキにする。これが本当に美味しくて、食べるたびに「どんな和牛のステーキよりも美味い」と呟いてしまう。

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残った600gは調理して2〜3日かけて食べる。あまりに好きで、一度買うと朝昼晩と食べてしまうため大抵2日でなくなる。臭みが出やすい血合いは和食に不向きだ。しぐれ煮などにしても美味しいが、醤油や酒などでは消しきれない香りがあるし、調理後も時間が経つとなんとなくその香りが出てくる。

しかし、臭みが強い食材を美味しく仕上げるために存在すると言っても過言ではない調味料こそがスパイスだ。スパイスと血合いは相性が抜群なのである。スパイスとまぶして焼いたり、スパイスのスープで煮たり、オイル煮にしたり、マグロの血合い愛好歴が長い私には、血合いのスパイスレシピが数多ある。血合いを調理するたびに、スパイス料理研究家でよかったと思うくらいだ。この愛が隠しきれず、マグロの血合いを使ったレシピを書いた本もいくつかある。

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最近、品揃えの関係で通うスーパーを変えたのだが、このスーパーでは血合いを扱っていない。良質な本マグロが刺身として置いてあるのに血合いがないということはおかしいと思い、鮮魚コーナーの人に尋ねてみると、すべて捨てているとのことだった。

食べられる部位であるのに! この上なく大好きなマグロの血合いなのに! すべて捨てている事実を知った時はあまりのもったいなさを感じ、衝撃でなにも言えずフラフラとスーパーを後にした。

しかし煮えきれぬ思いから、後日スーパーに電話をかけた。

「捨てていらっしゃると聞いた本マグロの血合いを購入したいので、売ってくださいませんか。1kgでも2kgでも買います。」

翌日電話がかかってきて、冷凍して取れる分を用意してくれることになった。

1週間後、スーパーに行くと、大量のマグロの血合いを用意してくれていた。どれくらい買いますか? と聞かれた私は即答で「全部ください!」と。これを私が買わなかったらまた捨ててしまうだろうし、それは絶対に回避したい。というより、みるからに贅沢な厚切りで美味しそうなのである。

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1パック1kgほどある大きな血合いの冷凍を5パック購入させてもらい、幸せな気分で帰宅した。ちなみに我が家には業務用の冷凍庫があるので、冷凍ならまったく問題ない。

これが本当に上等な味わいだった。国産の本マグロの鮮度のいいものを瞬間冷凍してくれたようで、解凍後も臭みがなく美味しいのである。もうあっという間に2kg食べてしまった。しかし、あと3kgあると思うと幸せでしかない。

血合いは美味しいだけではなく栄養価も高い。鉄分もビタミンも豊富だし、ささみより低カロリーで低脂質。健康を気にしている人には最適だと思うし、至福のダイエット食ともいえる。

私は生涯、本マグロの血合いを愛し続けるだろう。味も香りも食感も、量も価格も栄養も最高な食べ物だ。だからきっといつか、出会った人が「マグロのいちばん好きな部位は血合いかな」と言ったら、その人とは円満な家庭を築ける気がしてしまう。

世界でいちばん好きな魚の部位といえば

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印度カリー子

スパイスカレー研究家

1996年生まれ。スパイス初心者のための専門店、香林館代表取締役。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をする他、レシピ本執筆、大手企業と商品開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。

印度カリー子

スパイスカレー研究家

1996年生まれ。スパイス初心者のための専門店、香林館代表取締役。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をする他、レシピ本執筆、大手企業と商品開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。

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