【着る/知る】Vol.119 MA-1ジャケットが再び人気に!ショート丈復活の決め手となるか!?

  • 構成・文:高橋一史 
  • 写真:青木和也
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ビンテージと見間違う貫禄と、モダンなファッション性を兼ね備えた2021年モデルのMA-1。左右ともに¥81,400(税込)/ともにマーカ(パーキング TEL03-6412-8217)

今年の秋冬、ファッションの流れが大きく変わってきた。着丈が長いルーズな服の重ね着から、身体に沿うショート丈をシャープに着る方向性へ。まだ男性の変化は目立たないものの、エッジーな若い女性の動きが顕著だ。秋口にはお腹を肌見せするショートトップ姿の人が街中を闊歩。冬用アウターはウエストより上の位置のものが店頭を賑わせている。ボトムは腰周りがフィットして裾がフレアなパンツ、またはミニスカート。ビッグなワイドパンツはだいぶ減ってきた。この様子だとハイウエストからローライズへの移り変わりもありそうだ。

服装のジェンダーレス化が進む今、女性と男性の傾向はより密接にリンクしている。メンズでもショート丈が注目のなかで急浮上してきたのが、アメリカ軍パイロットのユニフォーム、MA-1である。古くは1980年代に流行がはじまり、90年代にビンテージを忠実に再現するレプリカが日本で生まれてこだわり派を魅了。その後人気が陰ったものの、2013年頃にストリートシーンで再ブレイク。ビッグサイズのダボダボMA-1が海外モードブランドからもリリースされ女性に大ヒット。肩を抜く(背中にずらす)着方がポピュラーになった。その後ブームは静まったが、また表舞台に返り咲きそうな勢いである。

ミリタリーウエアへの関心は、アウトドアブームとも関係がありそうだ。屋外の空気を吸い込んで生活したい今の気分には、冒険心のあるタフな服がちょうどいい。今回の「着る/知る」では、大人に合うデザイン性のある3タイプのMA-1を掲載。進化した定番を皆で楽しもう。

ビンテージの再現とモダンな感性が融合した、マーカの定番シリーズ

記事冒頭写真のセージグリーン、ブラックのMA-1は、日本ブランドのマーカのもの。初期型50年代MA-1の再現度の高さは海外ブランドでは真似できないクオリティだ。マーカはマーカウエアのカジュアルラインで、長年研究されたミリタリーウエアづくりの技が凝縮されている。胸についた縦のタブは、戦闘機パイロットが酸素マスクのコードをクリップ留めしたディテール。2段階編みの袖口と裾のウールリブは、あえてざっくりとした糸で古着のように仕上げた洒落心のあるパーツである。

一方でフロントファスナーをダブル仕様にして着る自由度を高め、シルエットに適度なゆとりを持たせたのはマーカならではのファッションセンス。中綿には人工羽毛の「プリマロフト」が仕込まれ、市販のMA-1より防寒性が格上。ビンテージの味わいと現代の感性の両方を満たすMA-1がほしいなら、他に選択肢がないほどの良作だ。

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表裏で別の服に変身する、サイの実験的デザイン

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合わせる服装や気分で2着分の着方ができるリバーシブルジャケット。¥110,000(税込)/サイ(マスターピースショールーム TEL03-5414-3531)

黒面を表にして着るとMA-1に、裏をひっくり返してオレンジ面を着るとライナージャケットにトランスフォーム。どちらも完璧に成立する、完成度の高いリバーシブルジャケットである。上質な大人服のベテランブランド、サイによる遊び心溢れる一着だ。

黒面の素材は頑丈なナイロンツイルで、オレンジ面はキルティング加工のポリエステルタフタ。着丈は通常のMA-1より長く、黒面を着るとコーチジャケットのようにシックな表情になる。裏側が鮮やかなレスキューオレンジと呼ばれる色なのは、軍モノのルーツに基づく発想。60年代の後期型MA-1のライナーがこの色で、遭難したパイロットが裏返して着て救助を待った命を守る色である。さりげなく歴史を忍ばせる、本物志向のデザインだ。

本家アルファ インダストリーズが復刻させた1968年モデル

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歴代MA-1のうちもっともシンプルなディテールを持つビンテージの復刻版。リバーシブル対応の黒メタルファスナーもスタイリッシュ。¥35,750(税込)/アルファ インダストリーズ(エドウイン TEL:0120-008-503)

50~70年代までアメリカ軍が採用したMA-1は、時代により様々な変遷がある。ファッション通の間でも好みがわかれるところだが、誰もが支持する66ナイロンの本格的な生地、レザータブ、重厚なファスナー、2段階編みの袖のウールリブといった要素を完備して、もっともミニマルに仕上げられたのがこの一着である。中期〜後期モデルの68年型を復刻したものだ。

手掛けたのは本物のMA-1の中心的な製造・納入業者だったアルファ インダストリーズ(以下、アルファ)。ポケットはフラップがつく以前の初期型と同じ仕様。胸の酸素マスク留めタブは省略され、裏地はMA-1らしさを物語るレスキューオレンジ(初期型はオレンジではない)。中綿もクラシカルなシート状のものだ。愛好家には一目置かれ、そうでない人には余計な自己主張をしないこのモデル。大人が日常で着るのにふさわしい一着である。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。