台湾の人気バンド落日飛車のメンバーが参加!「Taiwan NOW」バーチャル劇場の音はどのように生まれたのか

  • 文:久保寺潤子
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バーチャル劇場《三魂の途》。張洪泰(アレックス・チャン)と、 曾國宏(クォホーン・ツェン)のふたりが楽曲を協働した作品。
バーチャル劇場《三魂の途》トレーラー映像。

海底で繰り広げられる夢幻の映像と、眠っていた記憶を呼び覚ますようなうねりのある音楽。この作品を制作したのはバンドDirty Beachesで一躍注目を集め、現在はフリージャズの演奏や作曲家として活動を続ける張洪泰(アレックス・チャン)と、ロマンチック・ポップバンド、落日飛車(サンセット・ローラーコースター)のボーカリスト・ギタリストを務める會國宏(クォホーン・ツェン)。

今回「Taiwan NOW」のバーチャル劇場「三魂の途」でコラボレーションを行った二人に話を聞いた。

——本作品のコンセプトを教えてください。

會國宏 テーマはアイデンティティの探索。それは旅のようなものです。多様な心の景色や意識の深い場所に潜んでいるものを、人類が構築してきた文化的建築物や自然の景観を通じて探索しています。音楽は抽象的で明確なフレーズやリズムを持たず、潜在意識と夢が混じり合ったような世界です。この映像を旅することで、自己を呼び覚まし、自己と和解・承認するきっかけになってもらえれば嬉しい。

張洪泰 インスピレーション源は、主に錬金術や道教哲学のアイディア。特に元素の転換などです。外界と内界を繋ぐ肉体、私たち全員が受け継いできた歴史との関係をコンセプトにしています。私たちはなぜここにいるのか? それを見つけるためにここにいるのです。

——さまざまなスタイルの音楽を制作されていますが、あなたにとって音楽とはどのような存在ですか?

張洪泰 食べ物のようなものかな。聞く音楽によって気分が良くなったり悪くなったりするので、何を摂取するかが重要だ。音楽は体や感情と結びついているから、賢い選択をして色々な種類の食事(音楽)を摂るべき。

會國宏 私にとって音楽は、人生のある風景に繋がる橋のようなもの。その風景とは小さな木製の橋があればたどり着ける、密かで落ち着いた川だったり、広く堂々とした橋の彼方に限りなく広がる巨大な断崖だったりします。音楽は人々を深く繋ぐ架け橋であり、心と意識を繋ぐものだと感じています。

——台湾の音楽シーンについて教えてください。

會國宏 台湾のポップミュージックは80年代から発展し始め、2000年頃に全盛期を迎えました。初期の頃は在台米軍の影響を受けた強烈なリズムパターンが特徴でした。また日本の演歌の影響も受け、旋律と歌声も重視された。やがて音楽が産業化されると、日本のポップミュージックのシステムを学び、編曲から録音スタジオのデザインまで、日本のスタイルが主流となりました。90年代にはそれまでの音楽経験を吸収・融合させることで独自の音楽ジャンルを展開し、アジアの中心的存在となりました。

——お二人が影響を受けたアーティストを教えてください。

張洪泰 ミュージシャンではジョン・コルトレーン、マイルス・デイビス、ミルフォード・グレイブス、スチュアート・デンプスター。映画監督のウォン・カーウァイは架空の人生に夢を織り込む術を知っている。

會國宏 「アートは生活のようなもの」と言ったアンディ・ウォーホル。音楽で多大な影響を受けたのはアントニオ・カルロス・ジョビン、坂本龍一、ジャコ・パストリアス、焦安溥です。

古今東西の音楽を血肉としながら新たな地平を開いた二人の音楽世界を、バーチャル劇場でぜひ体感してほしい。

バーチャル会場へ

張洪泰(アレックス・チャン)

1980年台北生まれ。Dirty Beachesのメンバーとして注目を集めた後、フリージャズに転向し、作曲家として即興演奏に挑む。サックス、シンセサイザー、パーカッション、ピアノを動員し、カオスが溶け合ったリチュアル・ミュージックを探求。海外のアーティストとバンドを組んだり、映画音楽も手掛ける。現在フリヌール・パルマソン監督の映画『Godland』、福永壮志監督の映画『Mountain Woman』のサウンドトラックを製作中。22年にはNYでのコンサートも開催予定。

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會國宏(クォホーン・ツェン)

1987年台北生まれ。5人組シティポップ・バンド落日飛車(サンセット・ローラーコースター)のボーカリスト・ギタリストとして脚光を浴びる。一時活動を中止し、さまざまな音楽活動の場を広げたツェンは2015年、再び同バンドを再開。世界中で高い評価を受け、代表曲『My Jinji』はYou Tubeの再生回数1200万回以上を超えている。今後は日本、タイ、ロサンゼルスのミュージシャンとコラボした3枚の7インチレコードをリリース予定。

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Taiwan NOWバーチャル会場

アトリウム、コンサートホール、映画館、劇場の4つで構成されているバーチャル会場。無料ログインですべての作品をオンラインで楽しむことができる。気鋭のクリエイターたちがつくり出した、インタラクティブなバーチャル体験を通じて、台湾の文化やアートに触れてみてほしい。

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Taiwan NOW(台湾ナウ)

メイン会場:東京都千代田区丸の内2丁目7−2 KITTE
他、バーチャル会場(オンライン)/ 台湾・高雄(12月25日予定)
会期:10月30日〜11月14日
公式サイト:https://www.taiwannow.org/

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