パッケージに書かれた武田双雲による「毒饅頭」の書がインパクトを与え、瞬く間に静岡県熱海市の新名物となった「熱海温泉 毒饅頭」。毒といっても、解毒作用のあるドクダミの葉を乾燥させて粉末にしたものを生地に使用していることに由来する。

2018年に初代が誕生し、2019年1月に使用するドクダミの量を初代の4分の1へ減らしマイルドな味になった二代目が発売。さらに、同年8月に冷んやりシャーベット風の三代目が登場し、現在は夏季限定商品として親しまれている。この三代目をもって、毒饅頭シリーズは完結したことがすでにアナウンスされていたが、実は2021年夏にアパレルへ進出したことが発表されていた。
---fadeinPager---
雪駄で知られる奈良の老舗とコラボレート

製造販売会社である伊豆半島合同会社は、もともとは地方創生、地域活性化、地元支援の3つをテーマに発足。毒饅頭シリーズでも、兵庫県で無農薬栽培されたドクダミをはじめ、鹿児島県や宮崎県の本葛、北海道の小豆が使われている。そして、アパレルでの記念すべき初アイテムとして選ばれたテーマはなんと雪駄だという。
饅頭の次は雪駄と聞くと色物のように感じるが、熱海の温泉街を浴衣でも洋服でも合う雪駄を履きぶらりと散策してほしいという思いから誕生したものだ。気になる商品名は「毒饅頭サンダル」。和服と洋服の両方に合わせることができる二刀流のデザインが特徴で、足の裏が接する天の部分には饅頭と同様に「毒饅頭」の書がプリントされている。

製造を担当したのは、和履き製品の全国シェア90%を誇る奈良県三郷町で雪駄をつくり続けている大和工房。その製品は、国内最上級の旅館やホテルの館内履きに採用されており、確かなクオリティを誇ることはいうまでもない。
伝統的な意匠を踏襲しているとはいえ、いくつかのアレンジが加えられている。センターに配置されている鼻緒を親指側にオフセットし、さらに通常の雪駄は踵が少しはみ出すようにデザインされているのに対して、一般的な履物と同様に足が天に収まるように変更されている。
---fadeinPager---
日本の伝統文化を気兼ねなくカジュアルに楽しむ

実際に履いてみると、ミッドソールもアウトソールもラバー製のため実に歩きやすい。雪駄らしさは見た目でしか楽しめないが、浴衣だけでなくカジュアルな服装にも合わせられるというメリットは大きい。商品名に雪駄ではなく、サンダルを選んだのも親しみやすさや履き心地を考えると正解だろう。
祭りや花火大会など特別な日でない限り、雪駄などの和履き製品を履く機会がなくなった日本人のライフスタイル。しかし、京都祇園の老舗履物匠であるない藤が手掛けるJOJOをはじめ、新しいスタイルの履物が人気を集めているのも見逃せない。日本の伝統文化と意識することなく、気軽に履きこなすのにも毒饅頭サンダルはとても向いていると思う。
問い合わせ先/伊豆半島合同会社 TEL:0557-82-2588