横須賀の古民家解体・改築で出合ったモノと対峙する――写真家山谷佑介の個展『KAIKOO』が開催

  • 文:梶原博子

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横須賀の築80年の古民家の解体・改築作業の中で出合ったモノを丹念に映し出した写真作品が展示。

『Tsugi no yoru e』『ground』『Into the Light』など、写真というメディア装置に対してさまざまな角度からアプローチするフォトグラファー・山谷佑介。現代社会と個人との隙間に横たわる感情や熱量を意識させる作品を精力的に発表し続けている。

前作『Doors』では、特殊カメラによって自身のドラム演奏を撮影すると同時にその場で印刷されるポートレート写真で空間を埋め尽くすというパフォーマンスで、新たな表現を切り拓いた。そんな山谷の最新作を発表した個展『KAIKOO』がユカ・ツルノ・ギャラリーにて2021年11月13日(土)まで開催中だ。

本展は、山谷が横須賀の築82年の三棟平屋の古民家を自宅兼アトリエに改築するプロジェクトが発端となっている。仲間たちと共に古民家の解体・改築作業を通して掘り起こす中で、土やコンクリートといったモノに直接触れ、横須賀の土地や建物がもつ歴史や、そこに暮らしていた人々の痕跡に出合う過程に、自身が考えてきた写真表現との類似性を見つけたという。「竣工から80年の間に繰り返されたリフォームで埋もれてきた歴史が顕にされ、特筆すべき歴史的価値のない、ありふれた昔のものたちにいま一度光が当たる。受け継がれてきた歴史や伝統とはほど遠い、どこにでもあるそれぞれの家の話だ」と語る山谷は、写真を通して鑑賞者の記憶を掘り起こす。気鋭のフォトグラファーが切り取る人とモノ、歴史といまを映し出した写真は、観る者に共振して、時空を超えた過去との交流を呼び覚ましてくれる。

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今回は古民家解体の作業中に撮影された写真作品のほか、土壁の立体作品も展示される。

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展示風景

山谷佑介『KAIKOO』

開催期間:2021年10月16日(土)〜11月13日(土)
開催場所:ユカ・ツルノ・ギャラリー
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
TEL:03-5781-2525
開廊時間:11時〜18時(火〜土) ※11月4〜7日の「Art Week Tokyo」期間中は10時〜18時
休廊日:月、日、祝
入場無料
http://yukatsuruno.com