親の価値観が原因で老後破産? 意外にある「お金のトラウマ」3選

  • 文:川畑明美

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なかなか貯金ができない。または、赤字から抜け出せない。そんなあなたはもしかしたら幼い頃、親に「無駄使いしてはダメよ!」とクチグセのようにいわれていたのではないだろうか? 脳は否定形を理解できないことをご存じだろうか。「〇〇してはダメ・いけません」と、言われると、まず〇〇の部分をイメージしてしまうのだ。「ピンクの象を想像しないでください」と、言われたらピンクの象を想像してしまうだろう。脳はすでに最初に発せられた言葉からイメージを始めて、ピンクの像を自分の脳内に出現させてしまう。そのあとに否定されたとしても、一度想像してしまったものは、そう簡単には脳内からは消えないのだ。子どもに注意する指示を与えても禁止や注意した内容が脳にイメージとして届いてしまい、「~はダメ、~しないで、~いけません」と、注意しても逆の行動をとってしまう。


子どもにメッセージを伝える時に否定形を言ってしまうと逆効果。「〇〇してはダメ・いけません」とは言わずに、伝える時は「肯定形」で伝えることだ。例えば、節約を教える場合は「お金は大事に使ってね!」が、正解だ。もしも「無駄使いしてはダメ」と言われ続けていたら、無駄使いしてしまうぞ! という自己暗示がかかっているかもしれないのだ。子どもの頃に言われた言葉をよく思い出してみよう。そして「自分はお金を大事に扱える大人だ」と自己暗示をチェンジすることだ。「老後資金が足りない」と考えているのにお金を貯めることができないのは、このような脳の性質にも関連するのだ。お金のトラウマについて意識してみよう。

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ありがちなお金のトラウマその1
→歪んだお金の価値観を引きずる

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同じ金額でも受け取る人によって価値が変わる。この価値観は幼い頃の家庭の価値観が引き継がれることが多い。kieferpix-isotck

「年収600万円あればいいな」と考える人もいれば「年収600万円では、とても生活できないよ」と、思う人もいる。お金の価値は変わらないのだが、個人のお金の価値観は様々だ。このお金に対する価値観は、いつ、どうしてできたのだろうか? 実はお金に対する価値観は、あなたが3~6歳だった頃、あなたの家庭の年収とご両親のお金に対する価値観が複製されて可能性が高いのだ。これがトラウマとなっていると考えられる。


子どもの頃のご両親に対するお金の価値観がマイナスイメージだと、あなたが大人になってからも無意識にお金を受取ることに抵抗を感じてしまうのだ。あまり記憶に残っていないかもしれないが幼い頃、ご両親や兄弟姉妹は、どんな価値観を持っていたのだろうか? 思い出して欲しい。例えば「お金は汚いから、触ったら手を洗って」と、言われていたとしよう。大人になっても「お金は汚い」という価値観があるので、「汚いお金は持っていたくない」と思ってしまうのだ。「金銭にこだわるのは卑しい」と言われた方もいるだろう。そのようなクチグセを身内の方が話していたならば、「お金のことを考えるのは後回しにしてしまおう」と考えるようになってしまう。

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ありがちなお金のトラウマその2
→気持ちよくお金儲けすることができない

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子どもの頃にひどい仕打ちを受けて育つと自分を安売しがちになってしまう。samxmeg-istock

他にも「お金持ちは、きっと汚いやり方で儲けてる」という言葉を聞いて育っていた場合も考察してみよう。汚いやり方でお金を儲けているお金持ちにはなりたくないので、いくらお金を稼いでも、すぐに浪費してしまうようになりがちだ。また、そのような思考のご両親の場合、子どもにひどい仕打ちをすることも考えられる。お手伝いをしたのに、感謝の言葉はなく、上手くできていない点ばかりを責めたりすることだ。子どもの頃に肯定的に褒められない人は、罪悪感や無力感を背負いこんでいるケースもある。自分が感謝されるに値しない人間だと思い込んでいるようなケースだ。


そうすると結果的に、自分を安売りしてしまうのだ。仕事をたくさん頑張って成果もあげたのに、低所得に甘んじている。また、ご自身で商売をしている方は、本当は価値が高いものなのに「安く提供」してしまうのだ。例えてみれば「100万円のものを10万円で売って相手に喜んでもらおう」としてしまうのだ。それではお金は増えていかない。


幼い頃に受けたネガティブな言葉を思い出してみよう。それが、お金のトラウマだと気付いたらそのイメージをかえないと、今後気持ちよくお金を受取ることができなくなってしまう。

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お金のトラウマその3
→お金を諸悪の根源と考え、防壁ができている

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あなたのお金との距離を考えてことがあるだろうか。お金との距離が遠いとお金との縁も遠くなる。istock

豊かになりたい。そう考える方は多い。豊かになりたければ、お金のそばにいなければならない。お金との距離には、感情面での距離や、お金の知識面での距離などがあるが、感情面での距離につい考察してみよう。

あなたがお金に縁がないのは、お金との距離が遠く離れた状態にあるのかもしれない。あなたの周りには、お金を寄せ付けない防壁のようなものがあるのではないだろうか。負のエネルギーをまとっているとお金に手が届かない状態になってしまう。あなたが「お金は諸悪の根源」というような反感を持っていたり、自分自身を嫌っているとお金との距離は縮まらない。自分で自分を大切に思えないのなら、他人から価値を認めてもらうことは難しい。そういう人は、次のように考えることが多い。


「こんなに頑張って働いているんだから、私のやり方は間違っていない。たまたまチャンスを逃しただけ。運が悪かったんだ。私のせいじゃない」このように勘違いの自己弁護に務めていないだろうか。ところが心の内側では、お金儲けを邪魔しようとする深層心理が働いているのだ。自分に価値があることを他の人々に訴えることができないでいるのだ。自分が愛や感謝に値する人間だとアピールでいないでいると、金との距離は縮まらない。

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自分に向けている気持ちに気が付いて欲しい

お金持ちになりたいと思っていても、心の内側では、お金儲けを邪魔しようとする深層心理が働いていることをご理解いただけただろうか。お金は汚いなどの価値観を持っていたら、それを肯定する考えにかえること。そして自分の価値を認めること。さらにそれをアピールできるようになることが、お金持ちの思考なのだ。


だが多くの人は、このように考えていないだろうか。「毎日仕事と遊びと、そこそこ充実した生活は送れてはいるはずなのですが、今幸せか、と言われるとそうでもない」。このような考え方も人間の脳の仕組みを意識して理解してみよう。例えば、「幸せになりたい」人の意識は「今の自分は幸せでない」に向いているといことなのだ。なので、「お金持ちになりたい」人の意識は、「今の自分はお金がない」に向いているのだ。


逆の逆に意識を向けて欲しい。例えばこんな感じだ。「幸せになりたい」と思っているのなら、「幸せだな、あ~、良かった!」と考える。「お金持ちになりたい」のならば「もう十分豊かでお金持ちだ」という具合だ。意識的にポジティブに考えることも必要なのだ。筆者の子ども達も、「どうせ〇〇だから、ダメに決まっている」などと、口にすることがある。そんな時は、過去にあった「ラッキーな出来事」を話すようにしている。「いつもテストの点数で勝てない〇〇ちゃんを運動会の時のリレーで抜いたよね?」などと話すのだ。「自分はツイているから大丈夫!」 そんな風にマインドを変えると、ネガティブ発想から抜け出せる。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/