【着る/知る】Vol.117 ミリタリー調カーキバッグ、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス対決!

  • 構成・文:高橋一史 
  • 写真:青木和也

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48cm幅の大型ボックストート。 ¥90,200(税込)/リュニフォーム(リュニフォーム トウキョウ TEL:03-6812-2930)、コットンのペインターパンツ。¥45,100(税込)/アクネ ストゥディオズ(アクネ ストゥディオズ アオヤマ TEL:03-6418-9923)

世のファッション傾向が男女の差がないジェンダーレスに傾いても、タフな男の象徴である軍人の装備品はファッション好きの心を掴んで離さない。野山に溶け込むカーキの色にはある種のストイックさがある。アウトドアスポーツのカラフルな服装とは似て非なるものだ。アウトドアフィールドと都市生活がシームレスにつながってきたニューノーマル時代のいま、自然界と一体になるミリタリーテイストが脚光を浴びている。

そこで今回の「着る/知る」は、ヨーロッパ各都市の実力派バッグブランドから登場したオリーブグリーンのミリタリー調バッグにフォーカス。この色はカーキの名でも知られるが、土埃を意味するカーキは通常、軍の野戦用ユニフォーム全般の色を指す言葉である。砂漠用のベージュも含まれるので、本文内では森林用のオリーブグリーンと呼ぶ。

全4点のバッグは素材にも共通点があり、本体がすべてコットンやウールの天然素材だ。対する石油由来のナイロン素材は軽量で扱いやすく安価な反面、服との組み合わせに気をつけないとチープな印象になりがちな難点がある。貫禄のある大人が持つとアンバランスなケースが少なくないのだ。天然素材なら服を選ばず、傷や汚れも見栄えするから使える範囲が広い。

記事の後半では各バッグのショップ写真も掲載している。併せてご覧になれば、個性的なブランドの世界観がよりクリアに感じられるだろう。

フランス:レトロモダンなリュニフォーム

まず最初に紹介するのは、記事冒頭写真中央の洗練されたミニマリズムの逸品。両サイドとセンターのスナップを取り外すと、奥行き21cmの幅広なボックストートに姿を変える。スナップ留めして底部を畳むと平らになり収納スペースを取らない機能的な設計だ。本体素材は撥水加工されたコットンキャンバスで、エッジのパイピングとハンドルはレザー。さりげなく高級感を漂わせる上質な素材使いである。

ここではバッグの品位を引き立てるべく、白のワークパンツを組み合わせた。リュニフォームは2014年にフランスで設立された、キャンバス素材に特化したバッグブランド。マリンリゾートを感じさせるレトロモダンなデザインには、トラッド調のクリーンな服がよく似合う。

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イタリア:高品位なウール素材のザネラート

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取り外し式ショルダーストラップでの斜めがけも小粋なバッグ¥97,900(税込)/ザネラート(アマン TEL:03-6427-6601)、オーバーサイズのフーディ。¥29,700(税込)/インバート(アマン TEL:03-6418-6035)

ザネラートのアイコンモデルといえば、1950年代のイタリアの郵便配達人バッグから着想された「ポスティーナ」である。ここに紹介する新作の「モンテビーゾ」は、このモデルにアレンジを加えたもの。都会的なのに親しみやすいのは、労働用バッグをルーツに持つから。ウールフェルトとレザーのコンビネーションが、絶妙な美しさと男らしさを生んでいる。フラップから覗く4本のレザーは、内側で開口部が不用意に開かないように留めるストラップ。サイドにはドリンク類が入るオープンポケットがあり、冬の小旅行は大容量のこのバッグひとつで間に合いそうだ。

組ませた服は現代的にゆったりとしたスポーティーなフーディ。海外ドラマに登場する毎日のワークアウトを欠かさない成功者のごとく、アクティブな生活にこのバッグを活用したい。

ドイツ:ドイツ軍の毛布を使ったサイルマーシャル

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取り外せるリュックストラップを装備した2WAY巾着バッグ。¥63,800(税込)/サイル マーシャル、手刷りTシャツ。¥31,900(税込)/フランク リーダー(ともにマッハ55リミテッド TEL:03-5413-5350)

ビンテージ好きが歓喜する新作が、老舗のサイル マーシャルから登場した。本体の素材はなんとドイツ軍のビンテージブランケットである。自社ファクトリーで裁断され職人が一点一点ハンドメイドで仕立てている。サドルレザーや銅製の補強リベット、バッファローホーントのドローコードリングといった細部が調和して、時を止めたかのような存在感を放つ。部屋のインテリアにもしたくなる味わい深さだ。

このバッグは意外なようだが、アーティスティックなモード服とも相性がいい。バッグ前面の文字プリントがグラフィカルな表情を生んでいるからだ。今回組ませたのは同じドイツのファッションブランド、フランク リーダーのTシャツ。色調を揃えて森林のなかをイメージしてみた。

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イギリス:デザイナーが自ら縫うチャーリー ボロウ

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背面にオープンポケットがつく、風格溢れる大型ミリタリーバッグ。¥74,800(税込)/チャーリー ボロウ、コーデュロイのトラッカージャケット。¥63,800(税込)/パーソナル エフェクツ(ともにマッハ55リミテッド TEL:03-5413-5350)

今回のトリを飾るのは、本物のミリタリーバッグと見間違う完成度の高さの薄マチトート。「パイロットバッグ」と名付けられた、ビンテージから着想されたデザインだ。本体をぐるりと覆うAラインのハンドルは、重さを支えるための工夫。本体は軍用テントに使われるコーティング加工された屈強なコットンリップストップ生地。金具は伝統的な鋳造による真鍮でずしりとした重さがある。一生モノの耐久性が目指された素材使いだ。

バッグ職人でもあるチャーリー・ボロウ自身がアトリエで縫う希少性も、長年使いたい魅力に結びつく。コーディネートする服は古着でなくパリッとした新品でコントラストを狙おう。バッグの味わいがより浮かび上がってくるはずだ。写真で組ませたトレンドカラーのグリーンのアウターのように時代感を意識すると、さらに洒落た着こなしになる。

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4ブランドのオンリーショップ

記事内に掲載した4ブランドはすべてオンリーショップがある。海外にしかないものもあるが、バッグ専門店ならではの品揃えを堪能できるのでぜひ足を運びたい。

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東京・丸の内仲通りにある「リュニフォームトウキョウ」。色の組み合わせを変えるセミオーダーにも対応する店だ。photo©L/UNIFORM

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東京・六本木エリアを代表する商業施設内に居を構える「ザネラート 東京ミッドタウン店」。レディスも充実するラインアップ。photo©ZANELLATO

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ドイツ南部の都市ラーベンスブルクにある、100年以上の歴史を誇るサイルマーシャルの直営店。バッグに加えて服や雑貨類も扱うセレクト的な品揃え。photo©SEIL MARSCHALL

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イーストロンドンのショップ兼工房「チャーリー ボロウ ワークショップ」。人物はチャーリー当人。日本ではレディメイド品が輸入販売されているが、店の運営は基本的にオーダーメイドシステム。photo©CHARLIE BORROW

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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