ランボルギーニ・ウラカンSTOに見る、”勝つデザイン”の秘密とは

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Lamborghini Japan

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なんともスタイリッシュなカラリングのランボルギーニが、勢揃いした。カラースキームを決めたデザイナーに拍手を送りたいほど、個性的で、かつ「ランボルギーニ・ウラカンSTO」のデザインを上手に際立たせるものだ。

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カラリングでクルマがぐっと引き立つのは、じっさいに興味ぶかいことだ。今回、プレス向け試乗会が行われた富士スピードウェイに並べられたウラカンSTOは、用意したモデルすべてカラリングが異なるという凝りかた。見ているだけで、ぞくぞくわくわくしてしまう。

ウラカンSTOとは、ひとことでいって、かぎりなくレースカーに近いスーパースポーツカー。むしろ公道を走れるレースカー、という表現をランボルギーニは好んでいる。

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じっさい、レースで好成績をおさめているウラカンGT3 EVO(エボ)からインスパイアされて開発したモデル、とされている。GT3 EVOは、米国の「デイトナ24時間レース」において、2018年、19年、そして20年と3年連続でクラス優勝(GTDクラス)しているほどの実力ぶり。

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エンジンは640馬力(470kW)を発生する5.2リッターV型10気筒。後車軸前に搭載したいわゆるミドシップレイアウトで、全輪駆動モデルが多いランボルギーニのラインナップにあって、稀少な後輪駆動。レースカーとしては、こちらのほうが軽量かつ操縦性がいい、とされている。

デザインをみても、機能美の極致とでもいうべき仕上げ。見かけないパーツがボディ各所に装着されている。どれも機能的な意味があるのだ。代表的なものが「コファンゴ」。イタリア語の辞書にも載っていないこの単語は、じつはランボルギーニの造語だ。「コファノ」(ボンネットの意)と「パラファンゴ」(フェンダー)を組み合わせたものだそう。

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通常別べつのパーツとなるボンネットとフェンダーとフロントバンパーが、ウラカンSTOでは、一体成型のパーツとなっている。けっこう複雑な造型に加えて、部分的に塗り分けされているので、ワンピースで出来ているとは思えないのが、デザインの妙だ。

「コファンゴは気流をフロントフェンダーの上に押し上げるような形状になっています。フロントフェンダーにはルーバーがあり、ホイールハウスから抜ける気流を最大化して内側の圧力を低減すると同時に、フロントのダウンフォースを増大します」(ランボルギーニジャパンのプレスリリースより)

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クルマが高速で走るとき、空気が車体の下に入って車体を上に押しあげる傾向がある。そうなると空気抵抗が大きくなるし、操縦性が悪くなる。空気はなるべく車体の上を流れていくようにして、空気の力を利用して車体を下に押しつけるのがダウンフォース。これを効果的に作り出す、いわゆる空力処理が大事なのだ。

ボディのカラリングをみると、フロントのスポインラーから車体側面を回って後輪と続く流れのようなものが強調されている。じっさいに、ここでは前輪のまわりで空気が乱流を起こさないよう、うまく後方へと流すとともに、後輪のホイールハウスへブレーキの冷却気を効果的に導き入れる流れが作られる。そこに車体とはべつの色を使うことで、スピードと性能の表現が出来ているのだ。

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もうひとつ、コファンゴのメリットがある。レースでクラッシュ(衝突)したときだ。ひとつのパーツなので、短時間で部品交換できる。1秒を争うレースでは、部品の交換性も、勝利を左右する重要な機能である。これも、ウラカンSTOのホンモノ感につながるのだ。

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はたして、速い。とにかく速い。そして操縦安定性が高い。富士スピードウェイは、コース幅が広いので、どんなラインをとって走るかで1周にかかる時間がだいぶ変わってくる。そこがなかなかむずかしい。かつ、車両の速度をうまく調整して走らないといけないカーブが連続するのも、コースをむずかしくしている。

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一般的にいって、ここを走るときは、速度が上がりすぎないように、あるいは、逆に下がりすぎないようにエンジン回転をつねにチェックしながら走る必要がある。ちょっとでもステアリングホイールを切り込むタイミングが遅れると、車体の軌跡が外側にふくらんで、やっぱり速度が遅くなってしまうことも。

ウラカンSTOは、本気でタイムアタック(1周を何分何秒で回れるか)をしないかぎり、すぼらに走っても速い。暴言を承知であえて言ってしまえば、富士スピードウェイの難しさをあまり感じさせないほどだ。

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ものすごい加速感であるものの、ブレーキの効きはすさまじい。それも、速さの大事な条件だ。ブレーキペダルを踏むと、後ろから大きな手でつかまれたように車両が減速する。しかも左足の力の入れ加減に対してじつに微妙な減速が可能。

なのでコーナーのぎりぎり手前まで加速していって、バンッとブレーキペダルを踏むとほぼ同時に、手動でギアを落としていけばよい。ボンッボンッとギアボックスがエンジン回転を自動で合わせてくれる快音が耳に響く。

そこからキツい小さなコーナーだろうと、上りコーナーだろうと、ムリせずに回っていける。エンジンが発生する最大トルクは565Nmで、車重が1339キロしかないウラカンSTOには充分。

アクセルペダルを踏む力の加減で、力をゆるめれば前輪がぐっと路面をつかんで、コーナーをくるっと回り、途中からぽんと踏み込めば、コーナーの出口へ向かって猛ダッシュ、というぐあい。

「レーシングカーのエンジニアリング技術によって真のレースの走りを体感」。ランボルギーニジャパンの謳い文句はこれ。しかも「日常的な走りの中でもレースドライバーさながらのエモーションを体感でき」るという言葉は、まさに真実だ、と思った。

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ウラカンSTOの魅力の核にあるのは、5.2リッターと大きな排気量を持つV型10気筒エンジンだ。ここから力が生み出され、駆動系やサスペンションや、それにブリヂストンと共同開発されたタイヤといったものが、アスリートのような、すばらしい運動性能を生み出してくれる。

そんなランボルギーニもいま、あたらしい時代へ向かって舵を大きく切りつつある。2025年までにすべてのプロダクトをハイブリッドあるいはピュアEVにするという方針はすでに発表ずみ。量産化されるのはこれからだ。

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フェラーリやマクラーレンといったライバルが、ハイブリッドモデルを発売しているなかで、ランボルギーニは出遅れているのか。と、思いきや、まずSUVの「ウルス」がハイブリッド化され、その先に、V型12気筒にハイブリッドシステムを組み合わせた「シアンFKP37」なるモデルの計画が伝えられる。

クーペボディとスパイダー(オープン)ボディを持つ「シアン」の後には、V12気筒にプラグインハイブリッドという、(おそらく)とてつもない高性能のスーパースポーツを発表するという噂も出てきた。

CO2排出量に応じての罰金制度や、欧州の市街地でエンジン走行が禁止される可能性が強くなるなど、ウラカンSTOがどんなにみごとな出来でも、このまま続けられないのかもしれない。

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量ゼロ)を目指して、ハイブリッドを含めて電動化は、避けられない流れなのだろう。逆に、3750万円を払ってでも、いまウラカンSTOを楽しみたいと思うスポーツカーファンがいるのは、よくわかる。じっさいにその価値がある凝りに凝ったモデルだから。そこが悩ましい。それが、富士スピードウェイを後にするときの、私の思いだった。

Lamborghini Huracan STO
●ディメンション(全長×全幅×全高):4547×1945×1220mm
●エンジン形式:V型10気筒
●排気量:5204cc
●最高出力:470kW(640ps)@8000rpm
●最大トルク:565Nm@6500rpm
●駆動方式:後輪駆動
●車両価格:¥37,500,000

ランボルギーニ・ウラカンSTOに見る、”勝つデザイン”の秘密とは

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