レモンサワーの”サワー”とは、一体なんなのか?

  • 文:田中 開

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レモンサワーの呼び名だが、「レモンハイ」という人もいる。これは感覚的に西の人に多い気がする。ハイもサワーも、細かい定義はないだろう。なんとなくお酒を何かで割った、ぐらいにみんなが自由に使っている言葉の1つだ。これが便利で、とりあえず居酒屋はサワーとかハイのメニューで溢れている。

ハイとはハイボールのハイだ。ハイボールというカクテルがウイスキーを炭酸で割っているのだから、焼酎を炭酸で割れば、酎ハイ。転じて、レモンを入れた焼酎のソーダ割りがレモンハイというのは、なんとなく理解できる。

翻って、レモンサワーのサワーとはなんだろうか。

調べてみれば、レモンサワー発祥の地である、祐天寺「ばん」の逸話がいくつか出てきて、爽やかのサワ、サワーというカクテル用語、ということは分かる。語源を調べる時間はないが、サワーというカクテルは、欧米(雑な言い方だが)では、カクテルバーにおいては日常的に使う用語だ。お酒にレモンジュース、砂糖を加えてシェイクする、というのが一般的な意味になる。

ウイスキーサワーといえば、ウイスキーをベースに、ジンサワーならば、ジンがベース。

でも、これには炭酸は入らない。だから、タンブラーといった真っ直ぐなグラスでなく、逆三角形のカクテルグラスで飲む。このシェイクしたお酒に炭酸を入れれば、”フィズ”という呼び方になる(よく聞くのはジンフィズ)。仮にこの説だとして、引用しているのはレモンジュースを入れることで、この炭酸で飲みやすくする、みたいなことはあまり意図されていない様子だ。それかフィズという更に細かい用語はまだ伝わってなかったのかもしれない。

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勝手な解釈から、好きにモノが生まれてくる

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でも、今のサワーは、ご存知の通りにレモンを入れなくてもいいし、なんとなく炭酸で割っている意味で使われるようになっている。だから、そもそもベースのお酒はなんでもいいし、別にサワーという言葉が、なんでも好きなお酒を適当に割る、という意味ではなかった。勝手な解釈から好きにモノが生まれてくる、いい加減さは悪くないと思う。

たぶん、サワーが最初からこういう意図を持ってして生まれた言葉だとしたら、こんなにサワーを流行らなかったかもしれない(そう思えたほうが面白いから、そう思ってしまうだけなのだけど)。


ハイの方でも、ウーロンハイのように、炭酸が関係なくなり、割り材が主になってしまったものもある。ウーロンサワーとは言わない。でも、例えば、ラムネサワーならラムネハイでも違和感はない。

言葉を考えるとキリがない。そもそも”カクテル”だって、昔の本を読めば、”コクテール”なんて書かれていた。

写真はすべて弊店(日本橋bar Ao)の画像。レシピはクラシックなメニューからはかなりアレンジしてますが、見た目の参考として。

田中開

フードクリエイター

1991年生まれ。早稲田大学基幹理工学部卒。祖父は新宿ゴールデン街をこよなく愛する直木賞作家の田中小実昌。その縁もあり、ゴールデン街にレモンサワー専門店「OPEN BOOK」をオープン。渋谷「レモンライス東京」の開店も話題に。日本橋兜町のホテルK5内にbar AOも運営。

田中開

フードクリエイター

1991年生まれ。早稲田大学基幹理工学部卒。祖父は新宿ゴールデン街をこよなく愛する直木賞作家の田中小実昌。その縁もあり、ゴールデン街にレモンサワー専門店「OPEN BOOK」をオープン。渋谷「レモンライス東京」の開店も話題に。日本橋兜町のホテルK5内にbar AOも運営。