“最低賃金”の50代フリーライターが立憲民主・小川淳也に問う、「税金は正しく使われているか?」

  • 文:今泉愛子

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話題の新刊『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』。の著者、和田靜香は、50代のフリーライター。生活のためにライター業と並んでさまざまなバイトをしてきたという。

「コンビニ、パン屋、スーパー、レストラン、おにぎり屋さん、飲食系ばっかりになるのは、私の『食べるものが好きそう』な見た目もあるかもしれない。ちなみに、時給はいつもその時々の最低賃金だ」(P007-008)

政治が悪い、政治家のせいだ、と言い続けてきたという著者。だけどそれではなにも変わらない。そしてコロナ禍がやってきた。

「誰も彼も大変になっているものの、こういうときはやっぱり、いちばん弱いところから痛めつけられる。今回は女性を直撃した。たとえば、非正規で雇用される人たちに解雇や雇い止めが相次いで、特に女性は男性の1.8倍近くがその憂き目に遭った。その後、女性は再び仕事につくことも難しく、新たな仕事をみつけられない女性も男性よりずっと多い」(P009)

著者も自身もおにぎり屋さんのバイトを解雇された。

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人口が減少すると、誰がどんなふうに困るのか

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「日本はこれからどうなっちゃうんだろう? 私はここで、どう生きたらいいんだろう?願いはある。ひとりもとりこぼされることなく、全員があたりまえに安心できる暮らしが保証されることを。(中略)私はそういう社会に生きたい。そうでないと生きることが難しい。絶対的死活問題だ。じゃあ、そのために、私はどうすればいいんだろう?」(P011)

そこで国会議員に聞いてみることにした、というのが本書だ。著者の質問に答えたのは、立憲民主党所属の衆議院議員、小川淳也。東京大学法学部を卒業後、1994年自治省に入省。2003年に民主党より衆議院議員選挙に立候補し落選。2005年に初当選を果たす。小川の17年間の政治活動を取り上げたドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、コロナ禍で異例のヒットを記録した。

2人の対話は、小川が著者の疑問に答えるところから始まる。人口が減少すると誰がどんなふうに困るのか。小川はこう答えた。

「具体的に言うと、人口が増えている時代は人口が増えるに従って経済は成長し、税収は毎年のように上がります。今年は何に使おうかな?と悩めばよかった時代。それが今、人口が猛スピードで減っている。すると経済が成長することを前提に政策の基本を置くことはできないし、税収も厳しくなる一方です」(P044)

「(前略)だから、(私たちは)長らく上昇曲線の中で作られた政治と社会を、下降曲線に耐えられるものに作り替える、その歴史的な使命と世代的な宿命を背負っているんです」(P045)

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税金は正しく使われているか?

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税金は本当に正しく使われているのか。

「税金の配分が正しいかと問われると、実は難しいんです。ただ一つの正解というものがないから」(P078)

小川は答える。そもそも日本は世界でも減税国家なのだ。

「日本は『減税』することで、『自ら働き、自ら助ける社会』を築いてきた。増税を拒否し、減税に喜びながら、実は自助に追い込まれてきた。なんてことだ!」(P089)

是正すべき点について小川は明確な言葉を口にする。

「まず現役世代に向けた社会保障費です。これは他の先進国に比べ、ほぼ半分と言われているんです。昔はよかった。ほとんど誰もが正社員になれて終身雇用。賃金も上がっていく。だから自己責任でライフ・プランを設計できた。ところが今、経済成長はしない。雇用は不安定化し、賃金も上がらない。その上で、自己責任でやれ!と言うのは残酷です」(P083)

それだ。自己責任という言葉へのモヤモヤがここで一気に解消する。著者自身、これからも働き続けることへの疑問はないというが、日本には労働現場での深刻な年齢差別があるという。

「日本では厚労省が2003年に高齢者雇用対策について、雇用保険の機能が失われるからと、年齢差別撤廃を認めなかった。」(P142)

自己責任のいっぽうで、高齢になると就職しづらくなる。それでどうやって生きていけというのか。

本書を読んでいると、政治の役割を痛感させられる。自分自身の1票で何かが変わるとは思えないが、それでも政治を変えるためにはその1票が必要だ。

対話を続けてきた政治家に著者は、もっと寄り添ってほしいと訴える。その言葉を聞きながら小川は泣きっぱなしだったという。政治家と市民がどうつながればいいのかを考えさせる1冊だ。

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『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』 和田靜香 著 小川淳也 協力 左右社 ¥1,870(税込)