ライトアップを一般初公開! 京都の妙心寺 桂春院で、幽玄の美に触れる体験を

  • 写真:鈴木文人 文:小長谷奈都子

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京都府指定有形文化財の書院と「侘の庭」。境内の4つの庭は、修行に入った人が悟りを開くまでを表したもの。苔がとりわけ美しいことから「苔の庭」とも呼ばれる。

この秋、京都の妙心寺 桂春院でスペシャルなイベントが開催される。1632年に創建された桂春院は、千利休の孫の千宗旦の高弟・藤村庸軒好みの茶室「既白庵」を備えるほか、狩野山雪による障壁画や、小堀遠州の弟子・玉淵坊が作庭した「清浄の庭」「侘の庭」「思惟の庭」「真如の庭」という4つの枯山水庭園で知られる名刹だ。

拝観イベント「幽玄の美に触れる夜の拝観」は、ライトアップした境内を初めて一般公開し、お茶席や邦楽演奏、京都吉兆の特製松花堂弁当を提供するというもの。「足す」のではなく「削る」という日本古来の美意識をベースに、仄かな灯りのもと、一服のお茶やひとつの雅楽器の音色で、奥深い美の世界へと誘っていく。

お茶席は、羽柴(後の豊臣)秀吉が築城した長浜城にあったものを移築した書院にて。来年生誕500年を迎える千利休にちなんだ設えで、床の間にかかる一休宗純禅師の墨跡や、千利休と千宗旦の茶杓を間近に鑑賞できる。由緒ある空間で、遥か彼方に思いを馳せる貴重な体験となるはずだ。

狩野山雪の障壁画が飾られた本堂で奏でられるのは、世界最古の合奏音楽のひとつである雅楽の笙(しょう)という管楽器。その形状が鳳凰が羽を休めている姿に似ていることから「鳳笙」とも呼ばれ、音色は天空から射し下ろす光を表すとされる。秋の澄んだ空気の中、神秘的な音色が響き渡り、異次元へと誘われるよう。

茶道や庭園、雅楽に興味がある人や、何度も訪れている京都でひと味違う体験をしたい人にもお薦めのこのイベント。秋の夜長の特別なひと時。モバイル機器はオフにして、五感を研ぎ澄まし、幽玄の世界を堪能してほしい。

本堂1©︎FUMITO SUZUKI.jpg
1631年に建立された単層入母屋造・桟瓦葺の本堂も京都府指定有形文化財。全4席のうち1席目のみ、本堂前の「真如の庭」を眺めながら、京都吉兆の特製松花堂弁当をいただける。
井原季子氏1©︎FUMITO SUZUKI.jpg
本堂には狩野山雪による障壁画が飾られ、その大半は水墨山水画だが、室中には「金碧松三日月図」が納められている。その前で、国内外で幅広い演奏活動を行う井原季子が鳳笙を奏でる。
書院(茶席)©︎FUMITO SUZUKI.jpg
お茶席が設けられる書院。かつて妙心寺では坐禅が第一で、茶道や華道は禁止されていたため、書院の一角(写真左手の奥)に造った隠れ茶室「既白庵」でお茶を楽しんでいたという。
三窪笑り子氏©︎FUMITO SUZUKI.jpg
お茶席を担当するのは茶人の三窪宗笑。千利休と同じ大阪府堺市出身の1992年生まれ。今回、伝統文化の継承と普及を図るため、茶人や笙の奏者に若手の文化継承者を起用している。

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この拝観イベントは文化庁「ウィズコロナに対応した文化資源の高付加価値化促進事業」採択事業。現在、拝観予約受付中。


妙心寺 桂春院「幽玄の美に触れる夜の拝観」

場所:妙心寺 桂春院(京都府京都市右京区花園町寺ノ中町11)
期間:2021年10月1日(金)〜12月5日(日)のうちの金土日・祝
休止日:10月31日(日)、11月20日(土)
時間:①17:00〜(食事付)、②17:15〜、③19:25〜、④19:45〜 ※受付は15分前から
料金:①のみ¥23,000(税込)、②③④は¥12,000(税込)
※原則としてHPからオンライン予約による事前クレジット決済
TEL:075-231-7015(京都春秋)
HP:https://kotonarijuku.kyotoshunju.com/experience/426.html