スピーカー搭載のメガネ「ファウナ オーディオ グラス」の、驚くべき音体験!

  • 文:高橋一史

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オーストリアの「ファウナ(Fauna)」のウエアラブルデバイス「ファウナ オーディオ グラス(Fauna Audio Glasses)」(以下、ファウナ)は、近頃注目されているスピーカー内蔵メガネの最新モデル。要するにワイヤレスイヤホンとメガネをドッキングさせたアイデア製品なのだが、実際に試してみて驚いた。まったく新しい音体験を得られたからである。これはイヤホンやヘッドホンとは別モノの存在だ。

極小スピーカーがテンプルの内部に仕込まれ、その上下から流れる音楽が立体的に耳の周りを包む。周囲の音や会話はそのまま聞こえ、自分がいる場所に音楽だけが付け足される。メガネのレンズを通して見る景色全体に音楽が広がるのだ。映画のBGMとは比べるべくもないリアリティ。イヤホンやヘッドホンは耳に直接音を流し込むため、その人自身の内面的な世界に入り込ませる性質を持つ。つまり外の世界との間には大きな壁がある。その壁が消え去り、他人も同じ音楽を聴いている錯覚まで起こさせるのがこのデバイスだ。オーディオ機器を装着するのでなく、メガネを掛けるだけの日常的な行為だからこそトリップできるのだろう。

似た感覚をほかに例えるのは難しいが、ドライブミュージックが近いかもしれない。アメリカの高速道路を走る車中で夜景を眺めているとき、ラジオからマーヴィン・ゲイが流れてきたら、その場に存在するすべてがひとつになる。この体感をデイリーに味わえるのがファウナだ。なかでも面白い愉しみができるシチュエーションが屋外を歩くとき。音楽以外の環境音をスマホに入れておこう。公園の散歩時に小川のせせらぎや鳥のさえずりを聴き、古都散策で鐘や祭りの音を聴くと臨場感が高まるに違いない。

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各部位の搭載機能は以上の通り。スピーカーからの音の流れが上下に分かれているのが、立体的音場のコツのようだ。

ファウナと他社製品との違いのひとつは、メガネとしてのスマートなルックス。フレーム素材は一般的なメガネと同様のアセテートで、度付きレンズへの交換に必要な熱加工が容易だ。レンズは偏光サングラスタイプと素通しのブルーライトカットタイプの2種類で、どちらもドイツの名門カールツァイス製。レンズへのこだわりは他社を圧倒すると言っていいだろう。メガネとしての価値を高めるために、世界最小クラスとされる「MEMS」スピーカーを搭載。薄型フレームを実現させた。

音楽の最大再生時間は約4時間だが、充電ケースがバッテリー内蔵なことが優位点だ。外出時に手軽に充電できるため結果的に長時間動作できる。防水性能はIP52で、粉塵が内部に入りにくく、軽い水滴の落下に耐えうる性能。ただし水没は厳禁なのでアクティブなスポーツ時には注意しよう。通信性能は最大通信範囲10メートルほどのBluetooth5.0。対応コーデックはSBC、AACで、iPhone5以降とiOS10以降、Android6.0以降のAndroidデバイスに対応する。本体重量は同デバイスの平均的な50gで、十分に軽量といえるだろう。

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特許を取得したMEMS(マイクロエレクトロメカニカル・システム)スピーカー。

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メインとなるMEMSスピーカーは下に向けたセッティングで、耳の上から音が降りてくる。

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ヒンジ部分に充電ケースとの接合端子を搭載。

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type-CのUSB端子がついた、バッテリー内蔵充電ケース。フル充電で最大4時間連続使用でき、30分充電するだけで約2時間の再生が可能とされている。

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製品は全4型。記事冒頭のマーブルフレームと上写真の透明フレームは、ともにウエリントン型。それぞれクリアレンズと薄色サングラスレンズがセットされている。ほか2型はやや女性的なフォックス型だ。

オープンタイプのスピーカーでも周囲への音漏れはごくわずか。よほど静かな室内で隣席が近くなければ、オフィスでも使えるだろう。ワイヤレスイヤホンと同様にマイク内蔵で音声通話もできる。オンライン会議にも役立ちそうだ。

メガネのサイズ規格が、鼻が高い外国人向けなことは覚えておこう。ノーズパッドがなく、3Dシアターのように一般のメガネの上から重ねがけするのも無理がある。鼻が低い人はメガネ店でパッドをつけてもらうなどの対策が必要になる。

将来的にAR機能がつきレンズがモニタになる時代がくれば、音声案内と情報表示が連動する近未来デバイスになりそうなワクワクする製品である。まずはいますぐ、リアルな風景と音とをリンクさせる自分流の新しい空間演出を愉しむのが吉だ。

ファウナジャパン

https://fauna-japan.com/

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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