「儲かります」はウソ! 投資詐欺を回避する「3つの心得」

  • 文:川畑明美

Share:

iStock-893323636.jpg
skynesher-istock

「今は仕事をしてない生活なんだ、お金に余裕があってね。すごく儲かる投資があるんだ」と、友人から聞いたら興味を抱くかもしれない。経済成長著しいアジアの金融センター・香港やシンガホールなどの日本人が知らない海外投資に魅力を感じる人も少なくない。だが、日本国内で販売されていない金融商品を、外国の金融機関で購入する場合や友人からの投資話に安易に飛びつくのはとても危険だ。


また、ファイナンシャルプランナー業をしていると、こんな誘いもある。「オフショアファンドを扱っているのですが提携しませんか? 顧客をご紹介いただければ、手数料をお支払いします」という。海外への直接投資は、禁止されていないので購入することは違法ではないが、国内で勧誘するためには、日本の金融商品取引法に基づく登録が必要になる。顧客を紹介するだけなら違法ではないと主張する向きもいるが、紹介先から紹介料を受取ってしまったら勧誘行為の一部を担っているとみなされる可能性が高い。このことを知らずに勧誘しているファイナンシャルプランナーを見かけることもある。

---fadeinPager---

投資詐欺のよくあるパターン

iStock-876037488.jpg
高配当を謳っている投資の場合、何の前触れもなくある日突然、業者が破綻するパターンもある。Atstock Productions-istock

勧誘も違法なのに商品すら違法の場合もある。よくだまされてしまうのが海外積立投資系の商品だ。例えば「100万円投資して、5%の利回りなので毎月5万円の利益がでます」といって勧誘し、最初のうちは配当が支払われるのだが、数カ月後からパタリと配当の支払いがなくなってしまうのだ。このような場合、実際には運用しておらず他の出資者からのお金の一部を配当しているだけの自転車操業だ。最初は配当があるため、だまされたと気付くのが遅くなる。配当もなくなり業者も倒産したといわれ連絡も取れなくなるパターンだ。


他にも一時期、大学生をターゲットにしたFX取引の自動売買ソフト詐欺もあった。USBにそのソフトが入っていて大学生ローンで借りられるギリギリの金額で販売されていた。仮想通貨系の投資詐欺で似たタイプも多い。海外の業者がAI(人口知能)を使って運用するタイプで「これから需要が急上昇する仮想通貨を今のうちに購入して価格が上がったタイミングで売却したら大儲けできる」という勧誘が多いようだ。海外で大儲けしても、国内にお金を持ち込めば日本で課税される。よく調べもせずに海外投資に夢を膨らますのは、注意して欲しい。投資詐欺に合わないための3つの心得を伝授しよう。

---fadeinPager---

心得1:当たり前だが契約書はよく見る

iStock-1275711422.jpg

海外の投資案件の場合、英文の他に日本人用に翻訳された契約書も付くことがある。だが英文の契約書の中身は日本語翻訳と全く違う場合もあるのだ。kazuma seki-istock

自分で投資に取り組もうとしても忙しいし、調べる時間もないし、調べてもよくわからないといった理由でお金を人に預けてしまう方がいる。「必ず儲かります」「元本は必ず保証されます」この手の勧誘は、気を付けて欲しい。そもそも「これを購入したら必ず儲かる」というこれから上場する予定の「未公開株」や実体のない会社の「社債」を売るなどは、金融商品取引業(証券会社)の登録が必要だ。だが日本証券業協会に所属する会員会社等は未公開株式について、原則として勧誘を行っていない。


また、海外の投資商品などの場合お金を預ける際には、信託銀行で名義も管理されているのかも確認すべきだ。他にも発展途上国などの不動産投資にも注意が必要だ。筆者も海外で不動産を視察したことがあるのだが、翻訳された日本語の契約書と英語の契約書を見比べると内容が違っているケースがあった。もちろん契約はしなかったが、本来戻るはずの内金は、戻ってこなかった。翻訳文だけでなく、英文も必ず読むことだ。だまされるくらいならば、お金をかけて翻訳してもらった方がいい。

---fadeinPager---

心得2:わからない投資に決して手を出さない

iStock-1265501626.jpg

投資は自己責任なのだから、自分で調べても分からないものには手を出さないことだ。自分で選べないものは自分で見直しのタイミングもわからない。guvendemir-istock

他にも、新技術などに関する知的財産権などの投資もある。ひと昔前は、太陽光発電への投資が多かった。珍しいパターンでは、コンビニで使っているPOSシステムを一般の小売店に導入する仕組みに出資して欲しいという案件もあった。POSシステムとは、日々の売上を商品の種類ごとに集計・分析して経営に活かす仕組みなのだが、あるソフトを使うと低価格で導入できるというのだ。顧客のひとりから相談されたのだが、あまりにも古い開発プログラミングを使っていたので、すぐに手を引くように説得した。


手口も巧妙になっている。最初に未公開株の勧誘がきて一度断った後別の会社から、その未公開株を高額で買い取りたいと電話が入る。複数の会社から、同じ未公開株の情報が届くので信用してしまい、お金を渡してしまうのだ。


筆者は、金融商品の調べ方を教えているのだが、おススメの銘柄を教えて欲しいと言う方は、とても多い。だが、自分で選べないということは、自分で売却もできないということだ。選んだ理由がなくなった時には、投資商品を見直すタイミングだが、自分で選んでいなければ、見直しもできない。金融の世界にタダ飯はない。無料で教えてくれているようで手数料は商品の中に含まれている。投資商品のことが、よくわからないのならば購入しない方がいいのだ。

---fadeinPager---

心得3:「お金がない」と断ってはいけない

iStock-1306935702.jpg

よく「お金がない」といって断ろうとする方もいるが、それは絶対にやめた方がいい。借金をつくられてしまうケースがあるからだ。MicroStockHub-istock

断り方も十分気を付けて欲しい。なにか誘われる度に「お金がない」と言って断っている方は要注意だ。お金がないという断り方は、実はとても危険なのだ。友人や知り合いから、海外事業や投資などの儲け話で「お金がないから」と言ってしまうと消費者金融で借金をさせられて契約されてしまうこともある。


「モノなしマルチ商法」と言って人を紹介すれば、報酬を得られると強調されることもよくある。親しくしていた人でも人生の転機に際して、怪しい側に落ちてしまう人もいる。昔親しかったので、断りにくく合ってしまい「もし興味があったら、すごい人達を紹介する。とりあえず芸能人が出入りするようなすごいカフェにその人がいるから話を聞きに行こう」など、知らない人を紹介されそうになったら何がなんでもアポを取らないことだ。途中で電話が入ったフリをして「親が入院したので、今から行く」くらいの断り方でもいいだろう。


投資の仕組みや実態が分からない契約は「お金がない」と断るのではなく「いりません」ときっぱり断わることだ。国民生活センターによると下記のような相談が寄せられている。


・ウソをついて借金するように言われ投資に関するソフトを契約した

※学生の場合は、結婚式の費用と言って借りさせるケースがあるようだ。


・お金を借りるように脅されてCO2排出権取引の契約をした


・「すぐに返済できる」と言われカード決済でオンラインカジノビジネスに参加した


・「借金してでもやったほうがいい」と言われお金稼ぎに関する情報商材の契約をした

---fadeinPager---

怪しいと思ったらすぐに専門家に相談をすること

そもそも投資は、借金をしてするものではない。投資とは、リスクを取ることでリターンを得るものだ。どんな投資でも予測通りに行かずマイナスになることはある。借金して投資をしら、マイナスななった時は返済できなくなる。投資の基本は「安く買って高く売ること」だ。つまり、安くなる=マイナスになることは、必ずあることだ。お金を借りたら、必ず一定期間一定額を返済しなければならない。利益がでなくて返済できなくなると、さらに借金を重ねることになってしまう。


できれば勧誘をされて迷ったら、契約をする前に専門家に相談をすべきだ。万が一契約をしてしまった場合などは、できる限り早く最寄りの消費生活センターなどに相談をしよう。最寄りの消費生活センターへの案内は「188(いやや)」だ。相談料は無料で受けられる。

20201029_15-59AVE09088.jpg

【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに、家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/