お金を使える・使えない老後の違いとは? “お金の不安”から逃れるための「3つの方法」

  • 文:川畑明美

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老後の貯金が1億円あったら、何も心配はないと思う人は多いだろう。だが人の心理は貯金の多さで不安はぬぐえないらしい。以前知り合った元メガ銀行の支店長から聞いた話をご紹介しよう。


銀行に1億円の資産を保有しているが、収入は年金だけのAさん。銀行の資産は2000万円くらいだが、毎月の不動産収入や株の配当で月に25万円ほど収入があるBさん。ふたりの顧客を見ていると、資産は少ないけれど毎月の収入があるBさんは、とても行動的で、旅行やゴルフでドンドンお金を使うのだという。一方Aさんは、資産が1億円もあるのに年金の範囲内でしかお金を使わないのだそうだ。そして銀行の残高を非常に気にしていて、預金通帳を見てはため息をつくのだとか。


Aさんのように1億円というお金があっても、人は「貯金を取り崩す」ということに抵抗があるのだ。元支店長はAさんと同じような人を何人も見てきたそうだ。だが資産を運用しているBさんのような人は、「来月も収入がある」と思えるのでお金を使える。資産運用して毎月の家賃収入や配当金を使えるという安心感があるからだ。今回は、お金の不安から逃れるための「3つの方法」を考えてみた。

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方法その1
→貯金の安全性についてきちんと考える

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預金していれば100万円の額面額は減らない。だが物価上昇や為替の影響で昨年100万円で買えた腕時計は、今年100万円で買えない可能性もある。oatawa-istock

貯金がダメで資産運用が必ずしも良いということではない。安全資産とリスク資産の両方をバランスよく保有することが大切だ。両方保有することこそ、安心してお金を使い、充実した人生を送れる秘訣なのだ。貯金は安全というが、その安全性について考えたことはあるだろうか。「安全性」とは、言い換えると「お金が減らない」ということだ。


この「お金が減らない」ということは、元のお金の「額面が減らない」という意味だ。例えば預金は、金融機関が破綻した場合でも1人につき1000万円までの元本と利息は保護されている。100万円の預貯金が98万円になってしまうことなど、あり得ない。お金の価値から考えて、「貯金」が安全なのかどうかまで考えて欲しい。お金の実質価値を考えるということだ。


例えば100万円の普通預金をしている間に物価の上昇が進んだ場合、100万円の実質価値は下がる。1年前に100万円で購入できた腕時計が、物価上昇や円安で円の価値が下がってしまったら、当然ながら100万円では買えない。資産が貯金だけでは、物価の上昇や為替の影響で実質価値が目減りしてしまうのだ。日本の銀行の普通預金の金利は、0.001%。普通預金に100万円を1年間預けておくと10円の利息が付く。だが、物価が0.2%上がってしまったら100万円のモノは、2000円値上がりしているということになる。物価が上がらないという日本でも貯金しているだけでは目減りしていってしまう。

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方法その2
→お金に働いてもらうためのリスクを理解する

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預金だけではリスクをとらない“リスク”が存在する。正しくリスクを理解してリスクをコントロールすることが大切だ。baona-istock

資産のほとんどが普通預金や定期預金になっている場合、一見リスクがないように見える。だが「リスクを取らないリスク」が発生していることに気付いていただけただろうか。さらに、物価だけでなく社会保障費や消費税も上がっているため給与があがっても、増えたという実感が感じにくい。手取収入が増えないのなら、お金にも働いてもらう必要がある。


筆者も元支店長の話を伺って、ますます運用を教えることが大事と感じた。自身も会社を辞め独立起業するのに、それまで運用していた金融商品をドンドン利益確定して使った。だが預貯金だったら同じように使えていたかわからない。「お金を増やすことができる」。この経験があるので、起業しても事業にお金を使えたし法人を作ることもできた。お金を増やすことは難しいことではない。大事なのは、リスクを知りリスクをコントロールできるようになることだ。


リスクをコントロールできないと、「1億円あっても早期リタイアできない」のだ。1億円あっても、その内訳がほとんど株の場合は、景気によって資産が左右されてしまう。株で1億円あったとしても、20%くらい減らすことなんてザラにある。預金のように買って持っているだけではダメで、株価が上がった時に売却しなければならない。これがとても難しい。「買いは技術、売りは芸術」なんて格言もあるくらいだ。株式の利益は確定しないと「本当の意味」での資産にならないからである。

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方法その3 
→資産を分散する

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預金に1億円あるのなら、それを3つの資産に振り分けてはいかがだろうか。預金・株・不動産に分けることでリターンを得ながらリスクも回避できる。Galeanu Mihai-istock

「財産3分法」をご存じだろうか。財産3分法とは、預金・株・不動産に資産を分けることで、リターンを得ながらリスクも回避する方法のことだ。この考え方はリスクの3つの基準をもとに考えられている。3つの基準とは「安全性、流動性、収益性」だ。安全性は、株価や債券などの価格が変動する価格変動リスクや為替変動リスク、債券や株式を発行している企業の経営破綻で株や債券が紙くずになってしまう信用リスクが小さいことをいう。流動性とは、現金化が容易な金融商品のことだ。株は、購入時よりも株価が下がっていれば現金化できない。不動産などは、現金化するのに最も時間がかかる。この安全性と、流動性をみながら収益性であるリターンを得る組み合わせを考えることが大事なのだ。

具体的な金融商品で見てみよう。預貯金は、価格変動も為替の影響も受けない。信用リスクも預金保険制度で1000万円まで保護されている。安全だが収益性はないので資産が増えない。株や投資信託は、購入時よりも価格が上がっていれば割と早く現金化できる。株の場合は、土日を挟まなければ、売却した日を含めて3日後に現金化できる。投資信託の場合は、国内・海外の資産で違いはあるが長くて5営業日だ。流動性は、まあまあだが価格変動リスクや為替リスク信用リスクは高い。不動産は、価格変動リスクが少なく国内の不動産だったら為替変動リスクもないし、信用リスクもほとんどない。ただし、現金化するのに非常に時間がかかる。だから1億円は貯金だけでなく、株や不動産にも分配することだ。そうしたら家賃収入や株式の売却益の収入が手に入るから、使えば減るだけの預金とは心理的に大きく違う。

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お金が使えない症候群で人生を損していないか?

資産運用している人と、していない人では消費行動が違う。総務省統計局の調査でも明らかになっている。資産運用していない高齢者は、消費をセーブしていて資産運用している高齢者は消費を楽しんでいるという結果なのだ。老後資産は、株や投資信託で運用するよりもリスクを取らずに、現金化しておくと良いというが、筆者は、60代でも70代でも資産運用は続けるべきと思う。なぜなら、老後は長いからだ。65歳の男性の4人に1人、女性の2人に1人は、90歳まで長生きする。70歳であっても、その後20年もあるのだ。健康であれば高齢になってもレジャーを楽しまずにいるのは、なんとも寂しいとだ。


年金生活になった頃に貯金で1億円ということは、人生を終える段階で人生最大の貯蓄額に到達し、その貯蓄を十分に使いきれずに生涯を終えるということにもなりかねない。違う世界を見ること、知らなかった体験をすること、幸福を味わうこと、人と一緒に楽しむこと、新たな人に出会うこと……。お金を使うことで、さまざまなものが手に入るのも事実だ。お金に働いてもらって、うまく使うことも大切だ。人生全体を楽しんでいくために、お金を運用することと、使うことのバランスを取れるように、じっくり考えてみて欲しい。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに、家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/

お金を使える・使えない老後の違いとは? “お金の不安”から逃れるための「3つの方法」

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