プロが教える、自宅でワインを楽しむために知っておきたい「3つのポイント」

  • 文:原 深雪

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ワインを自宅で最大限に楽しむにはどうしたらよいのか。Amazonソムリエがお金をかけないワインの楽しみ方を指南する『Amazonソムリエが教える 美味しいワインのえらび方』(原 深雪 著/CCCメディアハウス刊)より一部抜粋。自宅でワインを楽しむために知っておきたい「3つのポイント」をお届けする。

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自宅でワインを楽しむポイント その1
美味しく飲むための温度は何度?

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ワインが飲みたくなったら、温度にも気をつけてみましょう。スパークリングワインや甘めのものは、温度が低めのほうが美味しいと感じられます。スパークリングワインを常温のまま開栓するとガスが一度に大量に抜けてしまいます。ガスを多く含んだものほど温度を低くするのがセオリーですが、上質なシャンパンは、温度が低すぎると味わいが舌で感じにくくなってしまうので注意しましょう。スパークリングや甘めでなくても、手頃な辛口ワインは辛口のキリッとした味わいを楽しむためにも強めに冷やして大丈夫です。

具体的な適正温度は、スパークリングや甘口のワインなら6〜8℃です。白ワインの辛口が6〜12℃で、ロゼワインは8〜10℃。赤ワインは、軽い飲み口のものが12〜14℃。ちょっと重めのものになると、16〜20℃が飲み頃です。

よく「赤ワインは室温で飲む」という話が出てきますが、これはワインを部屋の温度と同じにするという意味ではないんですね。ワインを保管してあった地下セラーなどの冷えた場所から持ってきて、室温になじませつつ飲んだ、ヨーロッパの歴史的な背景から来た表現です。

シャンパンスタンダードクラスで6〜8℃ですが、さらによいプレステージクラスは8〜12℃。上質なものはベースのワインの旨味がしっかりと含まれているため、冷やしすぎないほうが美味しく味わえます。

意外とよくやってしまいがちなのが、アイスクーラーに入れて冷やしておいたワイン。急いで冷やそうと氷水に入れるまではいいのですが、そのまま開けて注ぐ。そうすると、上が温かくて下が冷たいんですね。ボトルの肩くらいから上が外に出たままで、ワイン全体が冷えていないんです。シェイクしてはいけませんが、ボトルは栓をしたままゆっくりゆっくり、上下逆さまにして元に戻してください。スパークリングはボトルが厚く冷えにくいので困りますよね。そんなときは、ボトルが首までつかる容器に氷水を用意して漬けたほうが速く冷えます。開栓前なら100円ショップなどにあるCD収納ケースなどを使ってクーラーにして、ボトル全体を入れて冷やしましょう。

ちなみに8〜9℃は、冷蔵庫のドアポケットでビールを冷やしたくらいの温度。そして、グラスに注ぐと温度が上がります。「ちょっと冷たすぎたかな」というくらい冷えていたら、グラスを手のひらで包んで温めたり……ということもします。

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自宅でワインを楽しむポイント その2
グラスはできれば3種類

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MediaProduction-istock ※写真はイメージです。記事の内容と完全に一致しませんので、ご注意ください。

グラスは白ワイン用と赤ワイン用、スパークリング用の3種類は用意したいところ。白ワインは果汁だけを醗酵させて造るので、味わいの組み立てが赤ワインに比べてシンプルです。チューリップのつぼみのような形のリースリング型がおすすめ。

一方、赤ワインは種や皮を漬け込んでそのエキスが入るため、白ワインに比べて味わいの要素が複雑になります。香りや味わいの複雑さを感じやすくするために広めのボウル(ワインを注ぐ器の部分)が必要になってきます。ボウルの膨らみが大きいもので楽しんでください。

白ワインですが、シャルドネは例外で、赤ワイン用のグラスでも大丈夫です。シャルドネは醸造のスタイルにより、木の樽を使ったりすると香りにボリュームが出ます。複雑みのある香りを立たせるために、ボウルが広めのグラスを使いましょう。

赤ワインのグラスでもうひとつ、ボルドー型とブルゴーニュ型があることもお伝えします。ボルドー型は、渋味と果実味を主体とするシラーやカベルネ、メルロ系向きです。いずれもブレンドにも向いたブドウで、果実の風味や醸造による味わいがしっかりと醸し出されます。その持ち味をボウルの中でこもらせることになります。白ワイン用のグラスを縦に大きく膨らませたような形です。ピノ・ノワールは単一品種で造るのが基本のワインなので、品種の繊細な風味を豊かに広がらせるためにボウルが横に広いブルゴーニュ型となります。

赤ワイン用のグラスとして両方あるとよいですが、好みの味がわかっていれば、そのブドウ品種に合ったグラスを用意すればOKです。また、好みがまだわからない場合は赤ワイン用はボルドー型を用意しておけば問題ありません。

もうひとつ、スパークリングワインは縦長のフルート型と呼ばれるグラスをご紹介します。スパークリングワインを普通のワイングラスに注ぐと、溶け込んでいる泡が早く抜けてしまいます。口が広いグラスは液面が広く、ガスの抜ける範囲が大きいので、なるべく口が狭くて泡立ちをゆっくりと見て楽しめるようなグラスがいいでしょう。

白ワイン用のリースリング型、赤ワイン用のボルドー型、スパークリング用のフルート型。この3種類を持っていれば、大体網羅できますよ。Amazonでもグラスは幅広い品揃えで取り扱っていますので、ぜひチェックしてみてください。

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自宅でワインを楽しむポイント その3
美味しいワインの注ぎ方

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飲みどきのワインがあって、グラスも揃えたら、いよいよ開栓。「注ぎ方」にも美味しいワインをさらに美味しく味わうコツがあるんです。

まずスパークリングワインの場合は、泡がグラスに当たって盛り上がってきます。そのまま注ぐとあふれてしまうので注意しましょう。1回少なく注いで泡立ちが収まった後、ゆっくりと注ぎ足していきます。この「二度注ぎ」が基本です。これなら、あふれ出て飲める量が少なくなった……とはなりませんね。

白ワインや赤ワインは二度注ぎは必要ありませんが、ゆっくり注いだほうが香りが立ちます。恐る恐るというほどではありませんが、ドリンク類をペットボトルから注ぐよりはもう少しゆっくりと注ぎましょう。

次に注ぐ量にもポイントがあります。グラスのフォルムを見るとおわかりいただけると思うのですが、ボウルの膨らんだ部分が大事なのです。この、表面積がもっとも広くなるところを目安にワインを注ぎましょう。その上に空気がたまる空間を作ることで、ワインの持つ香りを鼻で確かめることができるようになります。グラスがいくら小さくても、ボウルの半分以上は注がないのが鉄則なんですね。ボウル部分の高さの1/3くらいでよいでしょう。

香りも充分に感じられるようになりますし、グラスを回してもこぼれません。なぜグラスを回すのかというと、より香りを立たせるためです。空気に触れて、香りの要素が室温になじみ広がりやすくなります。ある意味エイジングしたような感じになりますね。ワインの香りの要素を確認しつつ味わうことで、そのワイン本来の味が楽しめるのです。

ワイングラスを回す回数は3〜5回程度で十分です。レストランなどでたまに回すのがクセになった方、回しすぎてしまっている方も見かけますが、あまり回しすぎると酸化してしまいます。あくまでグラスを回す目的は香りの要素を立たせるためです。溶け込んだ香りの要素をみて、ワインの素性を確認するという意味なんですね。きちんとしたレストランだったら、ソムリエさんがチェックしてくれますから必死になって自分がテイスティングする必要はないんです。よいかどうか確認するのに、回すのは数回にとどめておきましょう。

もちろん、家で実験して楽しむ分には構いません。回していくとだんだん味が変わっていきますよ。

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『Amazonソムリエが教える 美味しいワインのえらび方』原 深雪 著 CCCメディアハウス ¥1,650(税込)

【執筆者】原 深雪
2016 年、Amazon ソムリエサービスリーダーに就任。「ワインを気軽に楽しんで、美味しく飲んでいただきたい」をモットーに、これまで多くのお客様にワインをアドバイスしてきた。1990 年ワインアドバイザー資格取得(№ 747)、1997 年シニアワインアドバイザー資格取得(№ 158)(2017 年、ソムリエ協会の規定にてシニアソムリエへ呼称統合)。キッコーマン「女性のためのワインスクール」 講師担当、東急本店和洋酒売り場 仕入販売担当、クィーンズシェフ新宿店 お酒売り場 スーパーバイザー、フレンチレストラン「タストヴァン青山」 シェフソムリエ、リアル・ワイン・ガイド誌 テイスティングコメンテーターなどを経験し、現在は複数のメディアにも出演している。