賃貸VS.持ち家、「老後破産」を回避できるのはどちら?

  • 文:川畑明美

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賃貸と持ち家どっちがいいのかよく議論に上がるが、10年ごとに住み替えするヤドカリ族も検討してみてもいい。takasuu-istock

賃貸と持ち家どっちがよいのか、よく議論になる。どちらが良いのか結論付ける前に、まずは賃貸のメリットとデメリットを考えてみよう。賃貸住宅のメリットは、なんと言っても自由度が高いということだ。転勤が多い職業だと、自由度のメリットは大きいと言えるだろう。また、近隣トラブルになってしまった場合も引っ越せば解決できる。ペットを飼いたいので持ち家がいいと言う方もいるが、最近は、設備の充実したペット専用マンションも充実してきている。生活に変化を求める性格や、飽きやすくて引っ越し好きな性格には賃貸が向いているともいえるだろう。経済面では、固定資産税、都市計画税、修繕積立金などは必要ないこともメリットだ。住宅ローンなどの多額の借金を背負う心理的な負担も少ない。


賃貸のデメリットも考えてみよう。よく、新築マンションのセールストークでは「お金を払い続けても自分のものにはならない」と、いわれる。借りているのだから、それは当然だ。賃貸の場合、家賃の他にも、契約更新時に更新料・更新事務手数料、引っ越す場合には敷金、礼金、仲介手数料、及び引越し代など、定期的にかかる費用も少なくない。ただし試算すると賃貸も持ち家もコスト的には、実はあまり変わらない。


筆者が考える経済面での賃貸の最大のデメリットは、「一家の大黒柱が亡くなってしまった場合でも家賃を払い続けなければならない」ことだ。住宅ローンを活用して持ち家を購入したのならば、団体信用生命保険の保険金で残された家族に支払い義務はなくなるからだ。つまり持ち家のメリットは、ローンの返済途中で死亡または高度障害になった場合に安心ということだ。万が一の時に、家族に家は残る。これが、賃貸にはないメリットだ。

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持ち家のデメリットとはなにか?

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住宅にも寿命があるので、老後にリフォームの負担がかかってしまう。だがヤドカリのように住み替えしていけば、家の寿命を考えなくていい。kuppa_rock-istock

一方、持ち家のデメリットは「一生住むことができない」可能性もあるということだ。特にマンションは、土地部分の資産価値はない。ほとんどが建物の価格となる。そして、築10年を過ぎたあたりから修繕費が必要になってくる。戸建の場合でも、30年~40年で建て替え、もしくはリフォームが必要になるし、マンションでも50年も経てば建て替える必要がでてくる。家を買っても、自分の寿命の前に家の寿命がくる可能性もあるのだ。


だから筆者は、10年ごとにマイホームを住み替えることを実践している。買った価格よりも価値が下がらない家を厳選して買い、10年ほど住んで購入価格よりも高く売却することを繰り返していくのだ。たとえていうと「ヤドカリが成長のたびに新しい貝殻にかえる」イメージだ。つまり、転居のたびに資産を増やしていく手法ともいえる。10年ごとに住み替えするのだから、家の寿命の悩みは無用になる。もちろん賃貸ではないので、住宅ローンを借りて団体信用保険に加入していれば、万が一のことがあっても家族に家は残るのだ。

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貸す側と借りる側で異なる返済負担率

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住宅ローンは、借りられるお金と返済できるお金は違うということを意識して、慎重に試算したほうがいい。William_Potter-istock

住宅ローンをいくら借りるかで住宅の購入予算は左右される。住宅ローンの借入額を決めるときにポイントになるのが返済負担率だ。この返済負担率は金融機関の基準と、借りる側が返済に負担がない比率との差が大きい。例えばフラット35の返済負担率は、下記が基準となっている。


・年収400万円未満で30%以下

・年収400万円以上で35%以下


どの金融機関でも一律で決まっている。ところが返済する側にとって負担の少ない返済負担率は、20~25%なのだ。銀行の融資額を目いっぱい借りてしまうとその後の生活が苦しくなる。返済負担率の計算は、次のように計算する。年間の返済額の合計÷額面年収×100。現在の返済額の合計と額面年収がわかれば簡単に計算できる。あなたの返済負担率は、20~25%に収まっているだろうか。理想を言うと返済負担率は20%くらいだと生活への支障が少なくなる。ただし一概には言えない。共働きなのか、子どもの教育費をどう考えているのかでも違ってくる。また自動車ローンなどその他のローンがある場合は、その他のローンの年間返済額も考慮する必要もある。住宅ローン以外のローンの金利は高いので、できれば住宅以外は現金で購入できる範囲で購入することをお勧めする。

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返済負担率20%くらいで買える住宅価格は?

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年収から試算して、返済負担率20%くらいで購入できる住宅価格を割り出してみよう。anyaberkut-istock

また都内23区内の新築マンションは、最近では7000万円から8000万円が当たり前となってきている。返済負担率20%と考えると年収は1,300万円ほど必要になる。借入期間30年で全期間固定金利1.5%、元利均等返済で年収別に返済負担率をシミュレーションしてみると以下のようになる。


・年収600万円の場合:借入金額3000万円で毎月10.4万円で返済負担率は20.8%

・年収700万円の場合:借入額3500万円で毎月12.1万円で返済負担率は20.74%


年収500万円だと借入金額3000万円だと返済負担率は20%にはならない。毎月の返済額10.4万円で24.96%とギリギリ25%だ。年収が低い人ほど頭金が必須となる。住宅ローンを借りる前に返済負担率20%に収まるよう試算してみよう。試算するには、住宅金融支援機構のシミュレーションツールを活用してみよう。借入希望金額から毎月の返済額を計算したら、年間の返済額の合計÷額面年収×100で返済負担率が20%くらいに収まる範囲になっているのか確認してみるといい。

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10年で買い替えする場合のシミュレーション

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毎月10万円の住宅ローン返済額で10年ごとに住み替えすると、どうなるのか?alexsl-istock

返済負担率を考慮して月10万円で返済する場合の「10年で買い替えする場合のシミュレーション」をざっくりと試算してみた。10年で住み替えするので、10年固定0.8%でシミュレーションした。ただし融資手数料などの諸経費は考慮していない。たとえば結婚してすぐに、頭金500万円を入れて、2DKくらいのマンションを3,000万円で購入する。そして10年後3,100万円で売却できたとすると、ローン残高が約1,500万円まで減っている。次に3LDKの4,800万円の家を買ったとしよう。頭金を300万円準備できれば、4,800万円-頭金300万円+売却額3,100万円=1,400万円が必要となる。前の家のローン残高が約1,500万円あるので、新たに必要な1,400万円と足して2,900万円でローンを組む。


また、さらに10年後この家を4,900万円で売却できたら、その時のローン残高が約1,900万円くらいになってる。その後立地の良い6,000万円の家を買うとしよう。6,000万円から売却額の4,900万円を差し引くと1,100万円が必要になる。前の家のローン残高は、1,900万円だから、新たに必要になる1,100万円を足すと、今度は3,000万円のローンを組むことになる。毎月のローン返済額は、ずっと10万円で試算している。そして、子ども達が巣立った10年後に6,100万円で売却できたとしよう。ローンは約2000万円残っているが、夫婦だけなので、最初と同じく2DKくらいの3,000万円の家に住めば、ローンがなくなり、1,100万円も残ると試算できる。

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ずっと同じ住宅に住んでいるケースと比較すると……

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ずっと同じマイホームに住み続けているケースと比較してみると、年金生活になってからの負担が少ない。new look casting-istock

また別に、子どもが生まれてからマイホームを購入し住み続けるパターンも試算してみた。3LDKの4,800万円の家を買ったとする。頭金1,000万円、毎月返済額10万円で1.3%の35年固定ローンを組んで買ったとしよう。同じく毎月10万円、35年間返済し続けても一度も繰上げ返済をしないと約673万円ほどローンが残ってしまうのだ。さらに修繕費やリフォームも考えると余分にお金はかかる。もちろん住み替えのシミュレーションには住宅ローンの諸経費などもその度にかかるので、単純に比較できない。だが、ずっと同じ家に住むよりも適度に住み替えするメリットも考えて欲しい。


賃貸でなく、マイホームを買い、住み替えることだけで大きく金額が変わってくるのだ。家族の人数に合わせて、住み替えることで最終的に小さな家に移り住めば住宅ローンがなくなり、10年ごとに新築に住みめる。試算した1,100万円の手残りがあるケースとローンを35年返済しても約673万円が残り、さらに売れないから住み続けるとリフォーム代もかかるケースと、どちらが良いのか? ヤドカリのようにマイホームを買換えていくメリットも是非、考えてみて欲しい。


さらに住み替えをするメリットは、まだあるのだ。住み替えして最後に夫婦で住む3,000万円の家に住んでいる間にパートナーが先だってしまった場合は、まだ売れる築年数なので、老後の介護にあてることもできる。介護状態にもよるが、月額25万円くらい入居年数5年として試算してみよう。25万円×12ヵ月なので1年間で、300万円。5年とすると1,500万円必要になる。パートナーがなくなったら、3,000万円のマイホームを売却してこの資金を捻出することも可能だ。やるのは、住み替えすることだけなのだ。もちろんこの試算は、ローンの組み方でも変わるので正確とは言い難いが、年金生活に入ってからリフォームや家の寿命を気にする必要はなくなる。

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多くの家庭のライフスタイルは、だいたい10年スパンで変化していく。新婚時は2人暮らし。子どもができたとしても、1人であれば10歳くらいまでは2人暮らしの家でも十分暮らせる。だが、10歳を過ぎたあたりから子どもの荷物がぐっと増えてくる。そこで、3LDKあたりを検討ししたらいい。そして、子どもが20歳を過ぎると家を出ていく。なので10年というタイミングで家の広さを適切に変えていくのは、合理的なのだ。


もちろん、高く売ることが前提なのだが住宅の場合、中古住宅市場は20~30年が多く10年くらいだと新しく感じるのだ。なので割と値崩れはない。実際、筆者も新婚と同時に購入した家を120万円高く売却した。地価が上昇していたので高く売れたのだ。また、住宅ローン控除も、さらに10年活用できるのも嬉しい。消費税増税分くらいの税金が戻ってくる。今の家もそろそろ10年経過するので、住み替えを考えている。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/

賃貸VS.持ち家、「老後破産」を回避できるのはどちら?

  • 文:川畑明美

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