VWアルテオン・シューティングブレークは、ただのステーションワゴンではない

  • 写真、文:小川フミオ

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フォルクスワーゲンのクルマというと、実直とか機能主義的といった言葉が、まっさきに思い浮かぶかもしれない。じっさいは、ここで紹介する「アルテオン・シューティングブレーク」のように、スタイリッシュなプレミアムセダンを手がけているのだ。

日本には2021年7月13日に導入したアルテオン・シューティングブレーク(以下シューティングブレーク)は、従来から販売され、今回、改良を受けたアルテオン・ファストバックと併売される。

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なにより、注目すべきは、デザインだ。ステーションワゴンの車型をベースに、もうすこしスタイリッシュに仕立ててある。ルーフの前後長をすこし短めにして、リアのハッチを強めに寝かし、荷室優先のステーションワゴンのイメージからあえて離れた。

どことなく、ポルシェの4ドアセダン、パナメーラに設けられている「スポーツツーリスモ」を連想させる。テールゲートを備えていて、かつ後席バックレストが折り畳めるため、いざとなったら、荷物がたっぷり積める。

3人だったらスキーを車内に入れて、スノーリゾートまで行くのにも、なんの問題もないだろう。しかも後席スペースは想像いじょうに広々としていて、リムジンのような気分で後席に落ち着いていられる。

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外寸と室内関係の関係をパッケージングという。フォルクスワーゲンは、ポロにしてもゴルフにしてもパサートにしても(ほかのSUVにしても)パッケージングが上手だ。シューティングブレークも例外ではない。

今回、アルテオンでは、インフォテイメントシステムの機能が拡充された。インフォメーション(ナビゲーションなどの情報機能)と、エンタテイメント(音楽再生など)からの造語のインフォテイメントのコントロールのため、大型液晶モニターもそなわった。

速度計などを含めたドライバー正面の計器盤もフルデジタルになり、10インチの大きめな画面のほぼすべてにナビゲーション用のマップを表示することもできる。

一部車種にはウインドシールド内に虚像を使うヘッドアップディスプレイも用意。ナビゲーションシステムの進路指示などを映せるので、目線の移動が少なくて済むメリットが謳われる。今後、アニメーションのようなディスプレイのARナビが採用されれば、ヘッドアップディスプレイの使い勝手はより高くなるはずだ。

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日本のシューティングブレークのパワープラントは、1984cc4気筒ガソリンだ。200kW(272ps)の最高出力と、350Nmの最大トルクを発揮。4MOTIONというフルタイム4WDシステムとの組み合わせとなる。

印象は、あつかいやすいエンジンだ。エンジン回転が低めのところからもしっかり力を出してくれ、1.7トンの車重の重さをあまり感じさせない。とりわけ走り出すと、ショックをていねいに吸収するサスペンションと、スムーズな動きを実現するこのエンジンのおかげで、独特のソフトな感覚が生まれている。

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英国で狩りのためにと、1960年代に、アストンマーティンやジャガーのクーペをベースに、個別注文によって荷室を付けたところから、富裕層のあいだで広まった自動車版シューティングブレーク(じつは馬車の時代からこの形式は存在した)。

いまでは、スタイリッシュなステーションワゴンの一形式として定着してきた感がある。トレンドセッターは、メルセデス・ベンツだ。2012年に先代CLSシリーズに、シューティングブレークなる4ドアのシャレたデザインのモデルを設定した。

「最初はCLSは4ドアクーペだけだったんですが、荷室を使ってのベビーカートの積み下ろしが不便、と妻からさんざん文句を言われました。そこで一ユーザーである彼女の意見を尊重して、利便性も追求すべく開発したのが先代のCLSシューティングブレークでした」

かつて、CLSの開発担当者が、ドイツでコーヒーを飲みながら教えてくれたことだ。日本の広報担当者は「本当かなあ」と笑っていたので、ひょっとしたら、私を楽しませようとエピソード仕立てにしてくれただけかもしれない。

いずれにしても、アルテオンのシューティングブレークは、荷室は奥行きもあって、容量は565リッターなので、充分に実用になるだろう。メーカーによると、ゴルフバッグは4つ搭載可能という。

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さきに触れたとおり、乗り心地は快適で、振動はうまく遮断されている。外部からの侵入音も低く抑えられているため、長距離を走っても、疲労度は少なさそうだ。ホイールベースはけっこう長めの2835ミリ。その恩恵がしっかり感じられる。

エンジンを高い回転域まで回してがんがん走るのが好きなひとにとっては、このパワートレインはすこし物足りないかもしれない。利点は、燃費が11.8キロ(WLTCモード)と、全長は4870ミリのボディを持つクルマとしては悪くないことだ。

まあ、シューティングブレークに乗ったら、欧州の海岸リゾートにいるつもりで、ちょっとオシャレをして、悠揚迫らず、おとなの落ち着きで走ることこそ、スタイリッシュといえる。

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純正インフォテイメントシステムは、モバイルオンラインサービス「We Connect」と結びつけられていて、リアルタイムで交通渋滞の情報などが入ってくることに加え、専用のアプリを使えばスマートデバイスでドアの解錠施錠なども行える。

運転支援システムとしては、同一車線内全車速(時速0キロ〜210キロ)に対応する「トラベルアシスト」が使いやすい。先行車と一定の間隔をとりながらの追従走行、および走行レーンの維持をサポートする。起動がステアリングホイールのボタンひとつであるので、操作に気をとられないのもよい。

ラインナップは、仕立てのちがいで2モデル。「アルテオン・シューティングブレークTSI 4MOTION R-Line Advance」(644.6万円)と、「同TSI 4MOTION Elegance」(644.6万円)。個人的には、明るい内装色の後者のほうが、快適志向のこのクルマのイメージに合っているように思える。

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Volkswagen Arteon TSI 4MOTION
●ディメンション(全長×全幅×全高):4870×1875×1445mm
●エンジン形式:直列4気筒
●排気量:1984c
●最高出力:200kW(272ps)@5500〜6500rpm
●最大トルク:350Nm@2000〜5400rpm
●駆動方式:全輪駆動
●車両価格:¥6,446,000

VWアルテオン・シューティングブレークは、ただのステーションワゴンではない

  • 写真、文:小川フミオ

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