原田治展で、元祖“かわいい”の軌跡をたどる

  • 文:山下紫陽

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キュートなジャックとジルのネオンサインも展示。

1976年に生み出され、90年代にかけて爆発的人気を誇った「OSAMU GOODS」の生みの親として知られるイラストレーターの原田治。2019年に東京・世田谷文学館から始まった、彼の軌跡をたどる展覧会『原田治展「かわいい」の発見』が、現在、兵庫・神戸ファッション美術館にて開催中だ。

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壁面にぎっしりと飾られた「OSAMU GOODS」のアイテム。世代を超えて愛されるキャラクターの魅力を再確認できる。

原田は1946年東京生まれ。多摩美術大学デザイン科を卒業した後、1970年、創刊したばかりの「an・an」(マガジンハウス)でイラストレーターとしてデビューしている。1976年に「マザーグース」を題材にしたオリジナルのキャラクターグッズ「OSAMU GOODS」の制作をスタートするや、女子中高生の間で大ヒット。1984年にはミスタードーナツの景品にイラストを提供。これはシリーズ化され、一大ブームを巻き起こした。

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原田が手がけた、数々の文庫本の装丁。赤川次郎らのベストセラーも。

1950〜60年代のアメリカのコミックやテレビアニメ、ポップアートなどを愛した原田。なかでも簡潔な描線とカラフルな色彩で描かれたキャラクターの数々は、その後の日本の“かわいい”文化に大きな影響を与えた。

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当時の子どもたちや女子中高生が夢中になって集めた、ミスタードーナツの景品やパッケージも原画とともに展示。

2016年に原田が亡くなってから初の全国巡回展のひとつである本展では、広告・出版・各種グッズなど多分野にわたる作品を中心に展示。円山派の巨匠・川端玉章の孫で洋画家の川端実に師事した幼少期から、多摩美術大学を卒業した後に、川端の暮らすニューヨークで過ごした20代前半頃の初期資料、それにエッセイ集『ぼくの美術帖』(2006年)の関連資料も紹介。また、“明石町先生”名義で連載していた雑誌「ビックリハウス」(パルコ出版)の誌面や、書籍の装丁、広告や各種グッズなど、多彩な仕事の全貌を総覧できるようになっている。

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左が「平凡パンチ」、右が「an・an」。「OSAMU GOODS」とは全く違う、サイケデリックなカラーリングも新鮮だ。

また、同じくイラストレーターの安西水丸、ペーター佐藤、それにアートディレクターの新谷雅弘らとともに結成した「パレットクラブ」での活動や、その延長線上で1997年に築地に開設した、イラストレーター養成学校「パレットクラブスクール」などでの活動も紹介。原田がチャールズ&レイ・イームズアトリエの写真なども展示してあり、彼のアメリカのミッドセンチュリーデザイン好きが垣間見えたりするのも楽しい。

会場設計を手がけたのは五十嵐瑠衣、アートディレクションは服部一成が担当。館内では会期中に限り「OSAMU GOODS」も多数販売。こちらもぜひチェックしてほしい。

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『原田治展「かわいい」の発見』

開催期間:開催中〜2021年8月29日(日)
開催場所:神戸ファッション美術館
神戸市東灘区向洋町中2-9-1
TEL:078-858-0050
開館時間:10時〜18時
休館日:月曜、8月10日(火曜/ただし前日の8月9日は開館)
※臨時休止、展覧会会期や入場可能な日時の変更、入場制限などが行われる場合があります。
https://www.fashionmuseum.or.jp/