アフロ・ビートの帝王トニー・アレンが遺した、 ヒップホップとの意欲的コラボ作

  • 文:中安亜都子

Share:

TKS-04_TA_@Bernard-Benant-&Navire-Argo_-Credit_PhotoPress4.jpg
1940年、ナイジェリアのラゴス生まれ。ジャズに影響を受け、ドラムを演奏するようになる。60年代にキング・サニー・アデ、70年代にフェラ・クティのバンドに参加。以降はパリで活動を継続していた。2020年に死去。© Bernard Benant & Navire Argo

【Penが選んだ、今月の音楽】

アフロ・ビートのカリスマ的存在だったドラマーのトニー・アレンが亡くなって1年が経つ。1960年代、アフリカ音楽を世界に知らしめたキング・サニー・アデのバンドの一員からスタートした彼は、半世紀にわたる活動から、数多くの音楽家に影響を与えてきた。

なかでも90年代のブリット・ポップを代表するデーモン・アルバーンは、2000年以降にアレンと数多くコラボレーションし、多大なインスピレーションを受けたとして知られる。また17年にアレンは、かつて影響を受けた1950年代のジャズ・ドラマーの巨人、アート・ブレイキーの有名曲をブレイク・ビーツで演奏したトリビュート作もリリースするなど、その存在が「アフリカ音楽の」という形容詞を超えて伝わってきただけに、昨年の逝去が惜しまれる。

本作は、残されたトラックをもとにアレンの長年のプロデューサーが構成。晩年の彼が注目していたというスケプタやダニー・ブラウンをはじめ若い世代のヒップホップ・アーティストが数多く参加している。各トラックの中でも特に耳を惹くのが、アレンと同じくナイジェリア出身でブッカー賞受賞詩人のベン・オクリのポエトリー・リーディングだ。スケプタと共演したこのトラックは圧倒的な存在感がある。オクリは本作に次のコメントを寄せている。

「彼はこの作品を若い世代のエネルギーへと開放したかったのです。そして彼自身のビートで、偉大な数学者や、科学者が新たな世界への数式を発見するかのように、素晴らしいカンバスを描き上げたのです」

近年、ジャズやヒップホップから優れたドラマーが登場し、多種多様なビートが生まれていく中、アレンはシンプルな一撃で共演者や、聴き手の想像力を刺激していくドラマーだった。またルーツであるアフリカからジャズ、ヒップホップという音楽の歴史の流れを体現していた音楽家でもあった。その偉業は伝説的に語られていくだろう。

TKS-01_TA_CD_cover.jpg
『ゼア・イズ・ノー・エンド』トニー・アレン UCCQ-1137 ユニバーサル クラシックス&ジャズ ¥2,860(税込)

少年のような歌声で聴かせる、 ファンキーなエレクトロ・ポップ

『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』のトレーナー、青山テルマと仲宗根梨乃が語る練習生たちへの思い

大江千里2年ぶりのアルバム『Letter to N.Y.』が7月21日に日米同時発売