京都の鍵善良房がオープンした注目の美術館「ZENBI」で、山口晃展を開催

  • 文:小長谷奈都子

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『新京都百景 志賀街道 子安観音』2017年/『京』No.193 (日本新薬株式会社刊)掲載 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

2021年1月、京都の祇園町南側に「ZENBI−鍵善良房−KAGIZEN ART MUSEUM」がオープンした。八坂神社の門前町で、格式高い花街でもあるこの地で、300年にわたり菓子屋として営み続ける、鍵善良房が手がける小さな美術館だ。縁の深い木漆工芸家の黒田辰秋をはじめとする美術工芸や、この街で育まれた文化や美意識を発信するプラットフォームを目指す。木や土壁など自然素材を多用した館内は、光と風を感じられる心地いい空間。「京都ではお寺での展示も多く、そのイメージです。祇園町に静かで落ち着ける場所を作りたかった」と、鍵善良房の15代目当主で、館長の今西善也は語る。

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建築を手がけたのは、向かいに立つ「ZEN CAFE」をデザインした金澤富(IAT STUDIO / Architecs +)。

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2階には古いモノクロ写真を飾り、美術書を揃えたライブラリーを設置。光のさす空間で静かに読書を楽しめる。

開館特別記念展としてオープニングを飾った「黒田辰秋と鍵善良房 結ばれた美への約束」に続き、現在は『山口晃 −ちこちこ小間ごと−』を開催中。山口は、日本の伝統的絵画の様式を用いながら、時空を混在させるなど、独自の作風で知られる現代アーティスト。本展では、初公開となる京都にまつわる書籍や雑誌の挿画のほか、2008〜2014年にかけて描いた五木寛之による新聞連載小説『親鸞』の挿画の原画などを紹介する。巧緻な描写から、大胆な筆使い、ユーモラスなタッチなど、多彩な作品は見応えたっぷり。

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『山鉾巡行』2013年/『婦人画報』2013年8月号 (ハースト婦人画報社刊)掲載 ※前期(7/6-9/12)展示

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タイトルの「ちこちこ小間ごと」には、机の上でちこちこと仕上げる小ぶりな絵や、依頼で描いた挿画が中心のため、居職人の小間仕事、そしてZENBIのコンパクトな部屋をめぐる鑑賞体験といった意味合いを込めたと山口本人は語っている。「小さいながらもいろいろな技巧を凝らした絵が揃っています。山口先生がギリギリまで準備した思いのつまったインスタレーションを、意図を汲み取りながら楽しんでください」と今西館長。

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『五木寛之著 新聞連載小説 『親鸞』挿画』2008年 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery ※後期(10/19-11/7)展示

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『五木寛之著 新聞連載小説『親鸞 完結篇』挿画』2013年 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

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『五木寛之著 新聞連載小説 『親鸞 激動篇』挿画』2011年 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

隣に立つ「Zplus」は、「手のひらに乗るギフト」をテーマにした、ここにしかないお誂えを揃えるミュージアムショップ。今回、本展のきっかけとなった「お菓子とお茶のある風景」をテーマにしたポストカードセットや、山口のスケッチをもとに鍵善良房が誂えた特製和菓子を限定販売。合わせて立ち寄りたい祇園の新名所だ。

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『好きなカフエーのおじいさん』2013年 / 鍵善良房手提げ紙袋原画 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

『山口晃 −ちこちこ小間ごと−』

開催場所:ZENBI−鍵善良房−KAGIZEN ART MUSEUM
京都府京都市東山区祇園町南側570-107
TEL:075-561-2875
開館時間:10時〜18時(最終入館は17時30分)
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
入館料:一般¥1,000(税込)
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://zenbi.kagizen.com