Xperia 1 III
エクスペリア ワン マークスリー
〈スマートフォン〉
「Xperia 1 III(エクスペリア ワン マークスリー)」は改良型ものづくりの模範である。モデルチェンジを重ねるごとに魅力が増している。2019年の初代「Xperia 1」はソニー・グループの静止画、動画、音の高度技術を結集させ、他の追随を許さないハイエンドAVスマホとして登場した。私はその精神が気に入り、モデルチェンジするたび、愛用してきた。20年の「Xperia 1 II」は正常進化版。イヤフォンジャックの復活が印象的だった。
3代目「Xperia 1 III」は、初代とIIの価値とコンセプトを継承し、飛躍した。刮目すべきはカメラだ。超広角/広角/望遠の3レンズシステムは当初からあるが、IIIは望遠レンズがすごい。焦点距離はIIが70㎜、IIIは可変となり70㎜/105㎜の選択を可能にした。スマホカメラは、広角系は得意だが望遠は難儀。デジタルズームに頼る製品が多い中で、この光学仕様は技術的快挙だ。
画質も立派だ。私は、Xperiaのカメラ画質は「自然な鮮鋭感」が特長と見てきた。デジタルで不自然に強調するものが多い中、さすがソニーのミラーレスα直系の画質。階調の多さと自然な質感で刮目の出来栄えだ。その美質はIIIで磨かれ、さらに望遠でのハイフォーカスが加わった。各レンズの間のズームはデジタルだが、鮮鋭感が高い。
もうひとつ私を感動させたのが、内蔵スピーカーの音。スマホの音は音楽鑑賞などには使えないのが常識だが、IIIは違う。さすがに低音は少ないが、音調は明確で、音の情報量が多く、品格も十分。不自然なデジタル処理に走らず、音を濁す物理振動を効果的に対策した成果だ。スマホの音の概念を革命的に変える本格派といえよう。
「Xperia 1 III」はカメラもオーディオも「ナチュラル」を信条に徹底的に磨き上げた、スーパークオリティ・スマホだ。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
●Xperiaサポート https://xperia.sony.jp/support