英国王室御用達のSUV「ディフェンダー」は、スタイリッシュだ

  • 写真、文:小川フミオ

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英国を代表するSUVのディフェンダーに「90」とディーゼルの「110」が追加された
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タイヤをむきだしで背負うスタイルがなんともカッコいい(実際はあまり勧めませんが)

ネットフリックスで「ザ・クラウン」を観ていたかた、いらっしゃいますか。私はずっと観ていました。エリザベス女王がランドローバーを運転するシーンがよく出てくる。のちにディフェンダーと呼ばれるモデルで、いまのディフェンダーのオリジンともいえる。

大きいサイズの4ドアモデルが「ディフェンダー110(ワンテン)」、すこしコンパクトな2ドアが「ディフェンダー90(ナインティ)」と呼ばれる。これはホイールベースの長さ(インチ表示)をもとに名づけられたグレードで、最新モデルは、110インチや90インチよりもうすこし長い、余裕あるホイールベースを持つ。

ディフェンダー90は、発表は早かったものの、生産の立ち上がりの関係から、110に1年ちかく遅れて日本の路上を走り出した。同時に、これまで2リッター4気筒ガソリンのみだったところ、21年には、3リッター6気筒ディーゼルエンジン車が追加となったのだ(設定は110のみ)。

90も、ディーゼルの110も、かなりいい出来だ。2リッターガソリンエンジンはいかに300馬力といえども、全長4945ミリで車重2420キロの110にはやや力不足だったかもしれない。今回の90にはよく合っている。「P300」というモデル、じつに活発に走らせることが出来る。

110のディーゼルモデル(D300)は、トルクがたっぷりあって、重さをまったく感じさせない。しかも電気モーターが発進時などにトルクを積みますマイルドハイブリッドなので、走り出しから軽快。そしてアクセルペダルを踏んでいくと、たっぷりとしたパワーでぐんぐん加速するのだ。エンジン音も静かで、車体とパワープラント(エンジン)にはベストマッチ感が強い。---fadeinPager---

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ホイールベースが3020ミリある余裕あるサイズの「110」

オリジナルをリデザインした理由は

そもそも、あたらしいディフェンダーが登場したのは、2020年。米国のジープに匹敵するモデルが(世界各地に植民地が多かった)英国にも欲しい、と1948年に発表された。いらい、エンジンが変わったりしながら、基本的な骨格はそのままに2012年まで作られたのだから、じつに長命のプロダクトだ。その魅力は(ファンによると)ストロークが長く悪路でも走破性の高いサスペンションや、力強いエンジンにある。機能主義の権化ともいえるリベットうちっぱなしのパネルや、平面ガラスのウインドシールドも、モノ好きの心をくすぐるものだ。

程度のよいオリジナルは、いま、1000万円を超える価格で販売されているのをみても、人気ぶりがわかる。メルセデス・ベンツGクラスより硬派、と自負するオーナーもいたりするし……。こういうクルマのモデルチェンジはツラいものだ。そこでランドローバーのデザインを統括していた(いまはジャガー・ランドローバーのデザインを統括する)ジェリー・マクガバン氏の指揮の下、デザインチームは、オリジナルを現代的解釈したような、新型を作りあげたのだった。

ストンと断裁されたような垂直に近いリアのハッチゲート、リアからみるとカマボコ型のルーフに、大きく張り出してみえるリアフェンダーが組み合わされたシルエット、さらに、丸型ヘッドランプをモチーフにしたヘッドランプや、鉄板むき出しだったオリジナルをリデザインしたダッシュボード……というぐあい。

出来上がったデザインは、なんとも魅力的だ。いわゆる男のコのハートをくすぐるようなキカイ感覚は継承しつつ、デジタライゼーションされたインフォテイメントシステムや、電子制御ダンパーを組み込んだサスペンションシステム、それに作りのよいシートもある。

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鉄板むきだしだったオリジナルの内装を現代的に解釈したデザインがきわだっている

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納車が間に合わないという人気ぶり

オフロードの走破能力もセリングポイントになっている。荒れた路面を走るのに欠かせない4WDのドライブトレインのデファレンシャルギア(差動ギア)は、室内のモニターで、センターあるいはセンターとリアの組合せがすぐ選べる。エンジンの回転マナーも、ゆっくりから早い反応まで3段階で設定が可能だ。

電子制御もランドローバーは積極的で、なかでもユニークなのは、モニター画面で車両が走行中の地面が見える「ClearSightグラウンドビュー」だ。自分がどんな路面を走っているか、ドライバーは確認できるので、安心感が高い。実際は数秒前の路面をカメラで撮影してそれをコンピューターがすばやくプロセスして、あたかもリアルタイムのように見せるのである。でもそれでも助かる。

エアコンの効いた室内にいて、ゆったりとした気分で品のいい音を聴かせる、英メリディアン社の再生装置を通して、ブラッド・メルダウなどのジャズピアノでも聴きながらの巡航は気分がとてもよい。

オリジナルでスコットランドの荒れ地など走った経験を持つ私は、昔日の感をおぼえた。スタイルは私は「90」のほうが好みで、基本的に前席しか使わないなら、市街地をこれで走り回ったらスタイリッシュだと思う。でも家族がいるひとには後席への出入りがうんと楽な「110」を勧める。どちらもモデルも、後席は広々としているし、外光がたくさん入るので気分よく落ち着いていられる。

価格は「ディフェンダー90 P300」が、装備によって、551万円から797万円。「ディフェンダー110 D300」が同様に、754万円から1171万円だ。ちなみにガソリンエンジンの「ディフェンダー110 P300」は619万円からだ。問題は生産が注文に追いついていないこと。21年7月に注文をいれると、納車は22年1月だそうだ。オプションが多いので、注文に際しては、かなり迷いそう。

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この110にはオプションの「「エクステンデッドブラックエクステリアパック」装着

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20インチのタイヤがユーモラスな雰囲気すらかもしだしている
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ほぼ垂直に切り立ったようなテールゲートに橫ヒンジのドア(ちゃんと左側通行用に右ヒンジがうれしい)

ランドローバー・ディフェンダー90 HSE P300
●ディメンション(全長×全幅×全高):4510×1995×1970mm
●エンジン形式:直列4気筒
●排気量:1995cc
●最高出力:221kW(300ps)@5500rpm
●最大トルク:400Nm@2000rpm
●駆動方式:全輪駆動
●車両価格:¥7,580,000


ランドローバー・ディフェンダー110 X D300
●ディメンション(全長×全幅×全高):4945×1995×1970mm
●エンジン形式:直列6気筒ディーゼル
●排気量:2993cc
●最高出力:221kW(300ps)@4000rpm
●最大トルク:650Nm@1500〜2500rpm
●駆動方式:全輪駆動
●車両価格:¥11,710,000