日本美術の魅力がよくわかる「巨大映像で迫る五大絵師」が開催中

  • 文:Pen編集部

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俵屋宗達 国宝「風神雷神図屏風」 の映像。(会場イメージ)

「日本美術って何がいいのか、よくわからない」そんな感想を抱いている人こそ観てほしいこの夏必見の展覧会が開幕した。大手町三井ホールにて開催中の「巨大映像で迫る五大絵師」展だ。葛飾北斎・歌川広重・俵屋宗達・尾形光琳・伊藤若冲という、日本美術のスター絵師たちの作品が、3面ワイド45mの巨大スクリーンに音楽とともに映し出される、新感覚のアートエキシビションだ。

一般的な美術館での日本美術の鑑賞は、薄暗く混み合う会場で遠目から目を凝らして見る……そんな状況が多いのではないだろうか。作品保護のため、あまり照明も当てられずガラス越しに見ることになってしまうのは仕方がない。そもそも日本美術は比較的大画面で描かれる西洋絵画と違って、版画や屏風、絵巻物など、近くに寄って鑑賞することを想定して制作されている。だから日本美術の本当の魅力は、ディテールに宿っていると言っても過言ではない。

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葛飾北斎の冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」は、船や波が動く表現も取り入れられている。(会場イメージ)

映像では作品の「見るべきところ」をズームしながら解説を聞くことができる。まさにプロの目線で鑑賞できるのだ。しかも美術館では見ることができないレベルまで詳細に映像化されているので、作品をよく知っている人でも改めて楽しめるだろう。

今回の展覧会が実現できたのは、テレビ局が培ってきた高い映像の技術力だ。浮世絵はアルステクネが開発した独自の技術により、3Dデータとして組み上げ、20億画素の超高精細なデジタルリマスター化を実現。葛飾北斎、歌川広重が表現した微細な凹凸などの技巧はもちろん、和紙の繊維一本一本(0.05mm程度)の質感までも立体的に復元することに成功している。また、最新デジタル撮影技術と多分割データ画像処理技術によって、金屏風や金襖絵の金箔、切箔、金砂子、金泥などの素材や表現の緻密な違いまでも再現。宗達や光琳、若冲たちが細密に描写し綴られている物語が鮮やかに蘇った。

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重要文化財に指定されている伊藤若冲「仙人掌群鶏図」。(会場イメージ)映像プログラムは日替わりで変わるのでHPでチェックして二度楽しんでほしい。

監修を担当した日本美術史家の小林忠さんはこう語る。「浮世絵版画はささやかなA4判ほどの大きさです。それを横幅45メートルという大きさに拡大すると聞いた時は、一体どうなるのだろうかと懐疑的でした。 ところが実際に巨大映像を見てみると、 何度も見ている絵なのにこんなに驚きがあるものかと、専門の立場である私ですら圧倒されたのです。 一方、巨大映像で見る屏風画も、金箔や絵の具の質感、筆遣いの強弱の変化まで見ることができ、非常に感動的な体験でした 」

注目は大迫力の映像だけではない。「SMAP × SMAP」「僕らの音楽」など数々の音楽番組に演出家・プロデューサーとして長年間携わってきた板谷栄司がクリエイティブ・ディレクターとして参画。作品ではいわゆる伝統的な日本の音だけでなく現代的な音も使われている。板谷は「一番重要なことは、絵師本人が見た時に怒られるようなものにしたくない。「ほほ〜ん、私の技をこんなに大きく見せたら困るな〜」と絵師に笑ってほしいな」 とコメントしている。

数百年もの時を経て、絵師たちが観ていたディテールが鮮やかに映像で蘇った。スマートフォンで映像を見ることが当たり前になったいまこそ、改めて大画面で体感してほしい。

「巨大映像で迫る五大絵師 −北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界−」

開催期間:~9月9日(木) 
開催場所:大手町三井ホール
東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One 3F
TEL:03-5520-1914 ※10時〜17時(月曜〜金曜) 
開館時間:10時30分〜19時30分 ※入館は閉館の60分前まで
無休
料金:一般¥2,000
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://faaj.art/2021tokyo