あなたも老後破産予備軍⁉ 60歳の4人に1人が「貯金100万円未満」という事実

  • 文:川畑明美

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還暦を迎える60歳は、ある程度豊かであると思いきや4人に1人が貯金100万円未満なのだ。一方で1億円以上を持っている人もいて貧富の差が激しい。kasto80-istock

豊かな老後と、お金が足りなくて病院にも行けない老後。あなたは、どちらの老後を歩むのか。実は60歳の4人に1人が、後者の老後になる可能性を秘めている。2021年に還暦を迎える1961年生まれの男女に聞いた「PGF生命の2021年の還暦人に関する調査」によると60歳の4人に1人が貯蓄額100万円未満なのだ。しかも前年の調査から100万円未満の貯蓄額と回答している人が4.2%も上昇している。逆に上昇しているのは、5000万円以上1億円未満が0.4%1億円以上が1.7%に増えている。つまり貧富の差が年々激しくなっているということだ。さらに100万円未満の人の世帯構成別に見ると、おひとり様世帯が32.9%と最も多い。次いで多いのは、就業している20代、または30歳以上の子どもと同居をしている層だった。


1960年生まれから婚姻率が急速に崩れ、なお上昇の見込みである。今後は単身世帯の60歳がもっと増えるだろう。ところでなぜ、おひとり様世帯に貯蓄額100万円未満が多いのかというと、原因として考えられるのは独身の場合、税控除が少ないことが挙げられる。扶養する家族がいないと税金は高くなる。さらには、子ども手当など支給されるお金もないということだ。他にも、単身者ほど「何とかなる」と万が一のことを考えずに楽観してしまうことも原因のひとつだ。おひとり様は、自由気ままで良い点も多いが、お金の管理まで自由気ままにしては、いけない。単身者でも生活費は、2人で暮らす費用の2分の1にはならない。単身者ほど気を引き締めて財布のヒモを引き締めるべきだ。


就業している20代、または30歳以上の子どもと同居をしている層とは、以前流行語にもなった「パラサイト・シングル」の子どもを持つ家庭だ。パラサイト・シングルとは、親元で生活し自分の収入を自由に使って贅沢な暮らしをする独身族をいう。特に女性の場合は、大金を使ってブランドものや服などをたくさん購入していると、書籍『パラサイト・シングルの時代』(筑摩書房)でも過去に語られていた。パラサイト・シングルになる原因のひとつに、非正規雇用者割合の増加も関係している。社会人であっても親元から自立できるたけの経済力がないことが原因だが、親の経済力に依存していれば、親が亡くなった後や親の介護が始まると、悲惨な状況になってしまう。子ども本人に経済力や生活力がないため、親も子どもも共倒れしてしまうのだ。そうならないためにも、一刻も早く子どもの自立を促すべきだ。

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働く60歳の3割が、「70歳以降も働きたい」と考える

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健康寿命の72~74歳まで仕事を続ければ、60歳で貯金ゼロでもなんとか逃げ切れるかもしれない。まずはゆっくり落ち着いて考えよう。stockstudioX-istock

また、前述の調査結果を見ると働く60歳の約3割が、70歳以降も働きたいと回答している。60歳から10年、15年と働くことができれば貯蓄額を増やすことも可能だ。逆に、おひとり様世帯こそ仕事を続けた方が社会と接する機会が多く、若々しくいられる。筆者の実体験でも、かつての60歳を過ぎた上司は「まだまだ若い」と感じるし、定年後に独立起業を目指しているという。長く働き、お金の管理を徹底したら、還暦でも十分資産を作ることは可能だ。


貯蓄の基本は、貯蓄用の口座をつくることだ。できれば、積立定期ができる口座だと尚更いい。毎月一定額引き落としが一番貯まりやすい。積立定期ができなくても、給料日に生活用の口座から貯金したい金額を引き出して、すぐに貯蓄用の口座に入金することだ。この習慣を付けることが肝心だ。貯金できる人は人生が好転することもある。以前、独身男性の顧客に子どもができると毎月約4万円ほど支出が増えるから、毎月4万円を貯金できるように頑張るようにアドバイスして、毎月3万円の貯金と1万円の投資を始めたところ、1年くらいして、お金が貯まった報告と、結婚が決まったことも知らせてくれた。貯金できる人は、パートナーも見つかりやすいのだ。


還暦を迎えてから、老後資金がないと焦って相談をいただくこともある。だが、60歳といってもまだまだ十分働ける。健康寿命は、男性では72.14歳、女性では74.79歳だ。健康寿命とは国連世界保健機関(WHO)が提唱した新しい寿命の指標で、平均寿命から健康に問題のある期間を差し引いた期間のこと。還暦ならば、男性で12.14年、女性は14.79年は、働ける可能性が高い。時間がないと焦る必要はない。たとえば、女性のおひとり様の平均年金額は10万2000円程度。65歳を過ぎてフルタイムではなく、時短で働いて月に10万円の収入があれば年金額を足せば、月に3万円は貯蓄可能だ。毎月3万円を7%の複利で75歳までの10年間、運用できれば500万円くらいになる。健康が続き15年続けられれば950万円にもなる。

特にお金に関する問題を焦燥感から考えるのは精神的にも宜しくない。ゆっくり落ち着いて、まず現状を調べることから始めるべきだ。最初にするのは、すべての銀行口座を記帳して現在の家計の資産を書き出すこと。ご夫婦であれば、2人の名義全ての銀行預金を書き出す。貯蓄性のある保険も調べて書き出しておくとよいだろう。今ある資産を把握することができる。そして次にすべきなのは、年間の支出を書き出すことだ。できれば、生活費や住宅費など、項目別に書き出すと良いのだが、わからなかったら給与が振り込まれる口座から引き出した金額と銀行引き落としになっている金額、預金から切り崩した支出の金額も書き出しておく。1年間に引き出したお金をすべて書き出すのだ。そして振り込まれた給与と賞与も書き出して、使ったお金を引き算するだけでも、年間いくら貰っていていくら使っているのかがわかる。

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収入がガクンと減る、「再雇用」の収入で生活できるか試算

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老後の心配はいつから始めたらいいのか? 給料の伸びしろが読める40代半ばからは老後資金のシミュレーションをしてみよう

いくら使っているのかが分かったら、再雇用の給料で足りるかどうか確認してみよう。もしも足りなかった場合は、どこの支出を削るのか考えないといけない。まず削るのは、銀行から引き落としになっている支出だ。住宅ローン、光熱費、スマホの通信費、保険料などを見直しす。電気やガスの自由化を利用したり、スマホの通信料を見直すだけでも、年間の出費と考えると10万円ほど抑えられるケースがある。ただし住宅ローンが残っている場合、退職金で繰上げ返済するのは、慎重に考えたい。住宅ローンより金利の低いローンはないからだ。将来必要になる資金を先に考えておく必要がある。持ち家の方は、少なくとも200万円くらいは、リフォーム費として準備しておくべきだ。介護費用も必要だ。厚生労働省の調べでは、介護保険受給者の1人当たり使用月額は約16万円。平均的な介護期間は、生命保険文化センターが行った調査で4年7ヶ月なので、880万円だ。これらの費用が足りなければ、住宅ローンの繰上返済は、毎月の返済額の軽減程度にしておくと良い。できればこれらの計算は、60歳になったらやるのではなく、40代半ばから毎年やっておくことだ。


では老後資金は、いつから貯めればいいのだろうか。老後は、まだまだ先だと油断していてもいけないし20代から老後の心配をしているのは、少しもったいない。20代は、自分のやりたい事を見つけるための大事な時期だから、自己投資できないのは自身の可能性を狭めてしまう。また、子育て真っ最中の20代30代ではマイホームの購入や子どもの教育費など、お金が必要になるライフイベントが待ち構えている。先に訪れるマイホームや教育費などのライフイベントのためのお金を効率的に貯め、なるべく借金を増やさずに切り抜けることだ。40~50歳前半は、子どもの教育費がピークを迎える時だ。事前に教育費をしっかり準備できていれば、老後資金作りを本格的にスタートできる。ここで注意したいのは、教育費の準備が間に合わなかった場合は、奨学金も検討することだ。くれぐれも老後資金を教育費につぎ込んではいけない。


次に、具体的に老後資金をどうやって準備したらいいのか、考察してみよう。20代から30代の人は、将来の年金額がどの程度になるのか予想しにくいので、iDeCoなどの制度で負担のない金額を積立するといい。5000円程度でも早く始めることで、複利効果が期待できるからだ。老後資金を意識して貯め始めるとよいのは、40代半ば頃だ。その頃になると老後についての想像もできるようになる。今後の収入の伸びしろもある程度把握できるので、具体的なプランを立てるのに良い時期だ。年金額や退職金も調べておくといいだろう。ただし、40代半ば頃の試算は、年金や退職金を少なく見積もっておいた方がいい。なるべく厳し目な数字を試算して、目標額を設定しておこう。65歳までの約20年程度の積立計画を立てることだ。50代半ば頃になると、もういよいよラストスパートだ。この時期は、貯蓄のメインが老後資金となる。住宅ローンは、できる限り現役を引退する前に完済できるよう計画を立てておく。もちろん預貯金だけで準備するのではなくお金の運用方法もしっかり考えておこう。金融商品によっては、運用しながら引き出すことも可能だ。運用することで物価の上昇による資産の目減りも防げる。増やすことばかりに囚われずに、安全性も考慮することが大切だ。

【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。

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  • 文:川畑明美

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