次のヒットを知りたいなら、この4人のインフルエンサーに注目!

  • 写真:廣瀬順二
  • 文:佐野慎悟

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好きなことを突き詰め、日々発信し続けている先駆者たち。インフルエンサーと呼ばれる彼らが見出したヒットのツボとはなにか?

1.料理系YouTuber 城二郎/吉田 能

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城二郎/吉田 能●1987年生まれ。「城二郎」こと吉田能さんは、統括料理長を務めた「ドミニク・ブシェ」グループを今年の3月に退社。数々の一流フランス料理店で培ったノウハウや技術をもとに、家庭でも簡単に再現できるレシピから、プロ目線の本格的なレシピまでを、動画で幅広く提案している。

プロ目線で解説するガチ勢向けの内容は、なぜか視聴者の9割が男性(笑)

ステイホーム期間が続き突如、熱い盛り上がりを見せているのが、YouTubeの料理系ジャンル。昨年から、有名レストランのシェフたちが続々と自身のチャンネルを開設。それぞれ本格的なレシピ動画を連投し始めたことによって、これまでの主流だったお手軽時短系レシピ動画とは対極にある、ストイックにこだわりたい“ガチ勢”向けの新ジャンルが誕生した。
なかでも、昨年6月のスタート以来、この1年で急激にチャンネル登録者数を伸ばして話題となっているのが、「料理人城二郎」。元ミシュラン2つ星シェフの吉田能たかしさんが発信する、本格派料理チャンネルだ。
「なかなか外食ができない昨今は特に、もっと料理人から積極的に情報を発信していくべきだと思い、YouTubeを始めました。最初に大きな反響を感じた動画は、魚のポワレです。『プロはこうやる』という切り口で、食材の下処理や火入れの仕方を解説しているのですが、そのシリーズはどれも人気です。今後は商品開発やオンライン上での料理教室など、多角的に展開できる方法を検討しています」
クールな風貌から繰り出されるツッコミどころ満載のトークも、ハマる理由のひとつ。一流の技と、エンタメ要素と学びのマリアージュは、ヒットを生み出す最高のレシピだ。

YouTubeチャンネル「料理人城二郎」。
開設から1年でチャンネル登録者数約15万人という数字は、ニッチなガチ勢向けのジャンルとしては異例のスピード。「わかりますでしょ?」「ねえ(圧)」など、なぜか心待ちにしてしまうキラーフレーズも多数。上の動画は、一番人気の「豚肉の火入れ術」の回。

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2.ゲーム実況者/作家 鉄塔(三人称)/賽助

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鉄塔(三人称)/賽助●1979年生まれ。ゲーム実況ユニット「三人称」の一員「鉄塔」名義とは別に、「賽助」名義で作家活動も行う。デビュー作『はるなつふゆと七福神』(ディスカヴァー文庫)で第1回本のサナギ賞優秀賞を受賞。5月には文化放送の「ナニモノ!」で三人称が初のラジオパーソナリティを務めた。

ゲームの遊び方は自由だから、ヘタだって楽しいんです

YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトにおいて、最も人気の高いジャンルのひとつがゲーム実況。小学生から絶大な人気を誇るカリスマもいれば、eスポーツの最前線で活躍するトップランカー、90代の世界最高齢実況者もいる。同じゲームでも、実況者の個性によって異なる層にアピールできるのが、このジャンルの奥深さだ。
ことに、30~40代の男性3人組である「三人称」は、幼少期からゲームの進化をリアルに体験してきた同世代にとって、最も共感できる部分が多い実況者といえるだろう。メンバーのひとりで、作家としての顔ももつ鉄塔さんはこう語る。
「ゲームはそれぞれが自由に楽しめるものなので、僕らみたいにゲームがヘタなオジサンでも、誰かのプレイを観ているだけの人でも、十分に楽しめます」
そんなスタンスが最も顕著に表れているのが、建築やサバイバルを自由に楽しめるオープンワールドゲーム『マインクラフト』の実況だ。知識やスキルをもたぬまま、自由気ままに道なき道を行く3人のドタバタ劇は、爆笑に次ぐ爆笑を生む。
「何年経っても初心者レベルから一向に成長していませんが、ゲームの攻略ではなく、この3人でプレイすること自体を楽しめているから、いつまでも飽きることはありません」

YouTubeチャンネル「SANNINSHOW」。
ドンピシャ、ぺちゃんこ、鉄塔の3人が注目のゲームタイトルを実況する他、定例の雑談や実写のボードゲーム実況なども人気のチャンネル。出世作となった『マインクラフト』の実況シリーズは、7年間で約170作が公開されており、現在は待望の新シリーズを準備中。
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賽助名義で昨年10月に上梓したエッセイ最新作。YouTubeでチャンネル登録者数50万人超えの人気者なのに、なぜかいつも“ぼっち”な著者が綴る、少年期の切ない思い出、夢を追った学生時代、新しい出会い……。振り返れば、いつもそこには「ぼっちの種」があった。 『今日もぼっちです。』ホーム社 ¥1,760

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3.ファッション系YouTuber なかむ

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なかむ●1993年生まれ。ブランドの古着店でバイヤーを務めるかたわら、2017年からYouTubeでの活動を開始する。19年には、セレクトショップ「Lieu(リュウ)」を立ち上げ、オンラインショップと西麻布の実店舗を営む。ヨウジヤマモトのブランド「S’YTE(サイト)」とのコラボも話題に。

エンターテインメントを通して、ファッションの楽しさを共有したい

ファッション系のYouTubeチャンネルは数多く存在するが、そのほとんどは、ファストファッションをベースに語られる、着こなしハウツー系の内容がメインだ。幅広い視聴者に届きやすいトピックではあるが、普段からモノ選びにこだわるファッション感度の高い視聴者にとっては、情報として少し物足りないというのが本音だろう。一方で、日本と海外のデザイナーズブランドから発信される、最先端のクリエイションに向き合うチャンネルもある。2017年からYouTuberとして活動する、なかむさんはこう語る。
「もともとブランド古着店で働いていた時に、ファッションとブランドの魅力を伝えていきたいと思って始めました」
彼のチャンネルでは、高感度 なセレクトショップや古着店の 紹介といったショッピングに役 立つ情報から、コレクションブ ランドのデザイナーを招いた対談や、新作コレクションのレビ ューといった、プロ目線に近い 切り口の動画も展開している。
「今後もYouTubeチャンネルというエンターテインメントを通して、より多くの人とファッションの楽しさを共有しながら、もっとシーン全体を盛り上げていきたいと思います」
一歩踏み込んだ、見応えのある企画づくりで、コアなファンを増やし続けている。

YouTubeチャンネル「なかむ」。
ハイブランドからスポーツブランドまで、なかむさんの好きなものが詰め込まれた1週間コーディネート動画。YouTubeとは別に今年5月から会員限定のフリマやセール、コミュニティスレッドに参加できるオンラインサロン「NAKAMU_FASHION_ACADEMIA」も開設。
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「服好きが集まり、寛げる場所」というコンセプトを掲げて、なかむさんが2019年に立ち上げたセレクトショップ「Lieu」。「ファッションの楽しさを共有したい」という思いが、実際に人と人とが出会い、情報を交換できるショップという空間を生み出した。

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4.ヒューマン・ビートボクサー SHOW-GO

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SHOW-GO●1999年生まれ。現在は札幌市立大学のデザイン学部に在籍中。来年の卒業後は大好きな京都に拠点を移し、創作活動に専念したいと語る。今年4月にストリーミング配信を開始した完全自主制作アルバム『Beatbox Only “SPROUT”』を含め、これまでに3作のアルバムをリリース。

音楽は技術や勝ち負けじゃない、満足のいく作品づくりこそが大事

YouTubeで「SHOW-GO」と検索してみれば、彼が世界中でどれだけ話題を呼んでいる人物であるか、すぐにわかるだろう。SHOW-GOさんがヒューマンビートボックスに出合ったのは、中学生の頃。YouTubeで観たHIKAKINの動画に感化され、独学で技術を磨いた彼は、18歳で日本チャンピオンの座に輝き、翌年には世界大会でベスト8という日本人初の快挙を成し遂げた。ここ数年は、その独自のファッションセンスとともに確固たるスタイルを築き上げ、ますますアーティストとしての存在感を高めている。

「一度、海外の大会の後に、順位的には下位だった友人のビートボクサーが、結果、どの選手よりも注目されたということがありました。要は、音楽って勝ち負けとか技術がどうこうよりも、人の心を動かし、より深く印象に残ることの方が重要ですよね。もとから勝ち負けにこだわらないタイプですが、それ以降はさらに、他の人と比べるよりも、自分がいいと思うことを追求し、自分が本当に満足できる作品を送り出すことだけに集中するようになりました」

オリジナリティを追い求めた彼は、21歳にして、誰にも真似のできない唯一無二のスタイルを手に入れた。彼の身体から生まれるビートにいま、世界中が熱狂している。

YouTubeチャンネル「SHOW-GO」。
17歳の頃から自主制作のビートボックスビデオを投稿し始め、累計再生回数は2000万回を超える。彼にヒューマンビートボックスを始めるきっかけを与えたHIKAKINも、自身のチャンネルでその才能に触れ「世界一を取ってほしい」とエールを送った。

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※この記事はPen 2021年8月号「ヒットの秘密」特集より再編集した記事です。